ghost26『ふゆりんとかわいい私⑫』
あの気の弱い人…シモンさんの特訓は、『嫌なことを全て逆転して限界以上の力を出そう』というものだった。
そして金髪なのになのじゃというキャサリンさんの特訓は、『どんどん技を増やそう』というものだった。
この人はいったいどんな…
「俺流の特訓ねえ」
「俺は特訓とかしなかったしなー」
「で、でも」
「超能力者は努力が必須だと聞きました」
「だから!それが人殺しに当たるわけよ」
「でもあれは努力だったのか…」
「まあ、好きこそ物の上手なれというし」
「…冬空お前は何になりたいんだ?」
「リリーさんに勝てるようになりたいです!」
「お前頭おかしいだろ」
「勝てるか!相手は封印能力者だよ!ボゲ!」
「だからこそです!」
「うう…」
「そう言われると反論できねえ」
「が…うーん…困ったな」
「なんていうか、封印能力者は別格なんだよ」
「ど、どういうところが…」
「そりゃあれだ、環境がある」
「才能と努力の間に何かがあるんだ」
そう、生まれ持ったものでもなく、
生まれてから積み重ねたものでもなく、
生まれた場所に偶然あったもの。
封印能力者たる所以は大体そこから生まれる。
しかしそれは人によって違う。
リリー・シエルなら叔父の栄光と親の大罪、
キャサリン・ヴァルキューレなら不老の体、
林道栄徹なら貧しい家庭環境、といった風に。
つまりは、物事が起こるには原因がある。
「薙紫のヤローなら多分こう言うぜ」
「だから悪人は被害者だ」
「加害者なんてどこにもいない…」
「じゃない話がそれた」
「まあようするに」
「封印能力ってのは周囲からの影響からできる」
「…」
「ま、諦めろとは言わないが」
「俺にはお前をそれ以上に育てる腕はないかな」
「そ、そうですか…」
「だから」
ガッ
「!?」
カーテンを開けば、そこにはジャック団が。
桜原棘を始めとする『元崇拝殺人者』達だ。
「俺だけじゃ無理だから」
「こいつらも合わせて」
「倍苦しい訓練が待ってるけど」
「それでもやる?」
「や、やります!やらせてください!」
「だってよ棘!」
「…仕方ない…では…」
「…課題は僕が決めていいか…?」
「頼むぜ」
「…なら…」
「『メスで猟奇的に殺す』…」
「!」
「…僕だけじゃない…」
「…元崇拝殺人者18人、自己完結12人ー」
「ー合わせて30人の殺しのプロが攻撃する…」
「…君は今日1日生き残ってみせろ…」
「は、はぃ…!?」
な、なんだこの臭いは⁉︎
「『密室で殺す』」
「林道さん、もういいよな?」
「あーいいぞ。殺せ!」
「‼︎」