Chapter1『達成使いは夢を見る①』
ある少年は10歳の時、こう考えた。
人は、生きているうちにどれだけの事件や事故に巻き込まれるのだろう?逆に、全くそれらに関わらずに死ぬ者など、いるのだろうか?、と。
少年は周りを見た。例えば両親は、朝起き、昼働き、夜寝ている。公園のホームレスは、一日中寝ている。
しかし、誰かの物を壊してしまったり、殺してしまったりするようなことは一切なかったのだ。
そして少年は気づいた。
自分は、『特異』だったのだ、と。
また、パトカーのサイレンが聞こえる。
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absoluteZero=crimson
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「さあ、今日はどんな活動をしましょうか!」
「そうだな…三丁目の公園のゴミ拾いは?」
「…寒そうなんですけどー」
「まあ、いいじゃないですか!」
少年は知らない男女達の声を聞く。
その中に自分がいるが、他は全員、知らない人達だ。
少年は察した。これは夢だと。そして気づく。
ということは俺はまだ寝ているということになる。まずいな。今日は入学式だ。寝ててはいけない。
そう、その少年は、今年の春から高校生になる。
そして今日は入学式。
彼は、この日を楽しみにしていた。
「…いかんいかん、夢を見ている場合じゃない」
少年は起きようと、目を瞑る。すると、それを見ていた他の人達が、話しかけてきた。
「…もう行っちゃうんだね」
「…寂しいな」
「早くないかい?」
それに少年はこう答える。
「これから入学式なんだ、邪魔しないでくれ」
すると、それを聞いた人達は妙に納得してくれたようで、そして何故か安堵の表情を浮かべる。
それと同時に、ある女の子がこう言った。
「それじゃあ、早く迎えにきてね!」
「クレナイ!」ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピドンッ!!!!
目覚まし時計は破壊される。
「…変な夢…だったな」
「迎えにって…どういうこった?」
少年、『薙紫紅』は目覚めた。
「って!こんなことしてる場合じゃなかったー!」
「入学式!やべえ!遅刻しちまうー!」
パンを咥え髪を整え紅は自転車をトバす!
さすがに入学式で遅れて行くのはまずい!
だが、入学式はもう始まっていた。
それどころか、長い校長の話も終わっていた。
紅が学校につく頃には、体育館に人はおらず。
既にHRが始まっていた…
「なんてこった…最っ悪だ…」