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3 ― あっというまに異世界に

  一瞬の浮遊感が無くなり、地面に立っている感覚が足に伝わる。どうやら目を瞑ってしまっていたらしく、恐る恐る目を開けてみる。


「え?」


 そこは広大な草原が広がっていた。いままでいたあの部室は面影も無くなり、嫌でも自分の知らない何処かなのだということが伝わってくる。


「楓、私のさっきの台詞、なかなかカッコ良くなかったか?」

「ええ、なかなか良かったわ。でも最近はトラックが流行りよ。」

「トラックかー。でもグロ注意とかになっちゃう」

「あら当てなきゃいいのよ、寸止めよ」


 …すごい隣から緊張感の欠片もない会話が聴こえてくる。取り敢えずどういう状況なのかがまったくわからん。


「あのー、これってー…」

「あ、咲ちゃんどうだった?主人公を説明も無しに異世界の飛ばす、なんか謎多き先輩的な感じでやったんだけど。」


 どうもなにも、ご自分でおっしゃった通りにです。


「た、確かにそういうキャラ居ますよね…」

「だよね、君はやはり分かる人だった。私の目に狂いは無かったよ」


 あ、無理やり絞り出した返答が裏目に…


「あの、ここって何処なんですが?」

「え?異世界・・・だけど。」

「…」


 そ、それはつまり

「最近流行りの?」

「そう」


「マジですか」

「マジマジ、大真面目よ」


  茜先輩はそう力強く答えた。

  少しだけ落ち着いてよく周りを見渡すと、どうやら何処かの城壁(?)の前のようだ。少し離れたところにその城壁の入り口と道が見えた。


「先ずは街の中へ向かいましょう。そこで待ち合わせしてるので」


 どうやら街の外壁だったらしい。明華先輩がそう皆に声をかける。どうやらもう誰かと待ち合わせしているそうだ。異世界で待ち合わせとかどうやって連絡を取ったのだろう。

 とりあえず全員で外壁の入り口へ向けて歩き始めた。


  外壁までいくと関所があり、衛兵さんが受付していた。


「こんにちは、証明書お願いします。」

「はい、これで」

「はい…こ、これは失礼致しました!ようこそお越し下さいました。お気をつけて。」

「ありがとうー」


  明華先輩が何処からともなく取り出したカードを見ると、衛兵さんは顔色を変えて凄い敬語になった。いったい何を見せたんだ…


「うわー…ほんとに異世界だ…」


 門が開き中に入ると目の前に飛び込んできたのは明らかに現代では見れないファンタジーな街並み。

 どうやら待ち合わせはこの街のカフェでのようだった。


 見慣れない街並みに目を輝かせながら歩いているとどうやらそのカフェに着いたようだ。


「あ、こっちよー!」


 テラスに座っている女性が此方へ手を振っている。銀髪ロングヘアーの美しい方だった。


「ハロー、めい。実際会うのは久しぶりね。」

「久しぶり。マリー」

「あ、ちょっと待ってね結界創るから皆取り敢えず座ってー」


 進められるままに席に着く。


「よし、良いわよ。あら?前より一人多くない?」

「マリーさん、おひさー。新入部員捕まえたの」

「茜ちゃん久しぶりね、皆も」


 皆、特に反応せずに気軽に挨拶をしている。が、いま何かとんでもないことを言っていたような?


「えっと宮下咲です」

「咲ちゃんね。なんか察したわ、諦めなさい。」


 …そういう反応なんですか、神様嘘やろ…


「つまり、やっとツッコミ要員が居ないことに気がついたのね?」

「そういうことだ」


 茜先輩、どういうことすか。


「咲ちゃん応援してるわ!これから先、頑張ってね。」

「あ、ありがとうございます」


 まじかー、入らないという選択肢はそもそも無いのかー





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