1 ー 囚われの私
「フリーズ」
何処かの海外警察ドラマとかで聞きそうな単語が耳に入る。目の前にはサングラスにマスクというあまりにもそれらしい格好をした少女が立っていた。
彼女の手にはアサルトライフルが黒光りし、銃口は完全に此方をロックオンしている。
…正直全然状況が理解出来ない。一先ず、勇気を振り絞り交渉を試みてみることにする。
「 …あ、あのー」
「はい黙って部屋に入る」
「は、はい…」
交渉どころか喋らせてすら貰えなかった…
怪しい少女は扉の後ろへ下がり、私を部屋の中へ入れた。
…中へ入ると、特に驚くところがないただの部室だった。せいぜい、なんか沢山物が置いてあるなー程度だった。割りと広めの部屋の中心辺り、丁度扉の直線上にある大きめのテーブルにまた別の少女が座っている。
少女紅茶のようなものを飲みながら私のほうを見てニコリと微笑み、口を開いた。
「確保!」
「へ?」
『はいっ!』
驚きのあまり変な声を出したのもつかの間、突然両側から腕を掴まれた。どうやら部屋に入る前から私が今いる場所の両脇で息を潜めていたらしく、全然気づかなかった。
「いらっしゃい!ささ、どうぞ此方へ」
「ほら、進んで進んで」
そう言うと両脇を固める二人はテーブルへと進ませられ、空いている席に座らせられる。
「ようこそ、英雄研究部へ!」
気がつくと向かいに座っている少女の隣に列のアサルト少女は移動していた。
「私は三年でこの部の部長、日向茜。あかねちゃんって呼んでね。よろしく!」
丁度向かいに座っていた少女もアサルト少女もとい部長さんに続き名乗る。
「同じく三年の山代楓よ。好きに呼んでいいわよ。よろしくね。」
日向先輩は明るく活発そうな印象な一方、山代先輩はとても大人びて見えた。
続いて私を両脇からホールドしていた二人も紹介を始める。
「二年の神楽坂明華だよ。よろしくね」
「二年の萩原優香です。よ、よろしくお願いします」
明華先輩は特に何か言うこともなく、フツーな感じ。優香先輩はどうやら人見知りなようで、私の方が後輩なのに敬語になっている。
唐突に自己紹介を始められわりと驚く中、部長のあかねちゃ…茜先輩が話を戻す。
「貴方には、英雄となる資格があるよ。私達と一緒に世界を救おうよ!」
…あ、すごく分かりにくいけど、要はこの部に入りませんかっていう勧誘?たまたま部室の前を通りかかった私を部活に入れようとしているのか。
「え、えーと、この部活はどんな活動をしているんですか?」
部の名前を聞いても全くもって全貌が掴めない。
「さっき言った部活の名前通り、基本的には漫画とかアニメとかから英雄についての研究をしてる。あとは研究を活かして英雄的活動をやってるよ。」
「英雄的活動ですか?」
「それっぽい格好をしてそれっぽいことをするんだよ。」
うーん、コスプレとかかな。
かなり癖の強い勧誘だったけど、なんか先輩方も思ってたより優しそう。私も漫画とかアニメ好きだし、他の部活よりも楽しそうかも。
「なんだか楽しそうですね。」
「楽しいよ。あ、そうだ名前聞いてなかった。何て言うの?」
「宮下咲です。」
「咲ちゃんか。これからよろしくね」
他の先輩方も同じようによろしくと声をかけてくる。
「い、いや早いですよ。まだ入るって決めたわけじゃ…」
すると日向先輩は笑みを浮かべこう言った。
「大丈夫!何がなんでも入部させるから」
「…へ?」
あ、やっぱりこれアカンやつだ…