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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第2章 忌まわしい記憶の彼方に
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第2章 忌まわしい記憶の彼方に 2

「う、うーん……」

 ルディが目を覚ますと、そこには薄暗い闇が広がっていた。

「ここは……?」

 はっきりしない意識の状態で、視線をさまよわせる。

 年季の入った机。古く冷たい石壁。壊れかかったドア。

 見間違うはずもない。それは自分の部屋であった。

「……ボクの部屋?」

 ルディはゆっくりと起き上り、頭を二度、三度振る。

「……なんでボクはここに?」

 ルディは何があったのか思い出そうと、自分の胸に手をあてた。

「!?」

 ふと感じる違和感。手触りがメイド服のものではない。

 下を向くと、着ているはずのメイド服がそこにはなく、代わりに下着一枚の状態になっていた。

(えっ?……えっ!?)

 自らの置かれた状況に、ルディは軽い錯乱状態に陥った。

(ななな、なんでボクはこんな姿なんだ!?)

 ルディは二度三度と、大きく深呼吸をした。

(落ち着け……落ち着くんだボク……)

 そして、状況をゆっくりと整理する。

(確か、すごく暑い中、山道を歩いて帰ってきて、館の扉を開けて……あれ?)

 ルディはさらに思い出そうとするが、そこから先の記憶がなくなっていた。

(ダメだ……思い出せない。一体何があったんだ?)

 ルディは頭を抱えるが、いくら思い出そうとしても記憶の糸はぷっつりと途切れていた。

 そして代わりに、リーザの憎たらしい冷血な笑みが浮かんでくる。

(はぁ……またあのヴァンパイアに怒られるよ……)

 ルディは大きくため息をつくと、ベッドから抜け出し、テーブルの上にあったランプに火をともした。

(あれ?これは……?)

 そして、テーブルの上に、折りたたまれた黒を基調としたメイド服があることに気がつく。

(ボクが畳んだのかな?)

 ルディはそのメイド服を手に取り、広げた。

「あれ?」

 そして思わず呟きを漏らす。

 そのメイド服は、ルディがいつも着ているものよりも軽く、薄い生地で作られていた。

(ひょっとして……リーザが?)

 ルディは広げたメイド服をまじまじと見つめ、ため息をつく。

「どうせなら、ちゃんとした服の方がよかったよ……なんでまたメイド服かな……」

 おそらく、あの暑さで自分は倒れてしまったのだろう。それで、気を利かせてリーザが薄着を用意してくれた、というところまではルディは理解した。

 しかし、用意された服が服だけに、ルディにはそれがリーザの悪意にしか感じられなかった。

「やっぱりこんなところ、一刻も早く逃げ出さないと……クシュン!」

 ルディはクシャミをすると、無言のままメイド服に袖を通した。

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