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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第4章 恩讐を超えて
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第4章 恩讐を超えて 7

「ほう……」

 レスナーは剣を構えながら、辺りをゆっくりと見回した。

 白い霧は視界を遮り、状況の把握を困難にさせる。

 しかしそんな状況においても、レスナーは不敵な笑みを浮かべていた。

 少しの間、静寂が辺りを包み込む。

 不意に、背後の空からリーザが現れ、レイピアの剣先をレスナーに向けた状態で急降下して、襲いかかってきた。

「ふん」

 レスナーは、まるで後ろに目がついているかのように、それをいとも容易く交わす。

 一方、攻撃をかわされたリーザは、そのまま霧の中へと飛び去っていく。

「なんだ?もう終わりか?」

 レスナーがその方角を見ながら挑発すると、また背後の空からリーザが、レイピアの剣先をレスナーに向けた状態で急降下してきた。

「同じ手は喰わん!」

 レスナーは、振り向きざまに大剣を縦に振る。

「!!」

 その剣は、リーザの眉間を割り、体を真っ二つに引き裂いた。

 しかし、その引き裂いたはずの体は、霧となって消えてしまう。

「これは……」

 レスナーは眉をひそめた。

「それは幻じゃ」

 霧の中から、リーザの声が聞こえてくる。

「どうじゃ?いつどこからともわからぬ状況で襲われる気分は?怖くて震えが止まらぬのであろう?」

「戯れ言を」

 レスナーはフッと笑う。

「その強がり、どこまで続くかのう?」

 リーザの声が霧の中へと消える。

 次の瞬間、レスナーを取り囲むかのように四方向から四人のリーザが空中に現れた。

「これは交わせまい!?」

 四人のリーザは、剣先をレスナーに向けると、一斉に襲いかかってくる。

「無駄だと言ったはずだ!」

 レスナーは、一八〇度回転するよう左に回りながら、左斜め上に向けて大剣を勢いよく振り上げる。

「ぐっ!?」

 すさまじい風圧が、二人のリーザに襲いかかり、否応なしに動きが止まる。

「ふん!」

 レスナーは剣を持ち直すと、そのままさらに一八〇度回転するよう左に回りながら、左斜め上に向けて大剣を勢いよく振り上げた。

「な、何!?」

 同じようにすさまじい風圧が右側から襲いかかる二人のリーザの動きを止める。

「そんな子供だましの攻撃が通用すると思ったか!?」

 レスナーは雪面を蹴って飛び上がった。まるで人間の跳躍力とは思えない高さまで到達すると、四人のリーザに向かって立て続けに剣を振り下ろす。

 一人目、二人目。

「この程度か!?吸血鬼よ!」

 三人目、四人目。

 体を真っ二つにされた四人のリーザは、そのまま霧散していく。

 そのまま雪面に着地したレスナーは、大剣を地面に突き刺した。

「茶番は終わりだ」

 そして、背中から弓を手に取り、矢筒から銀の矢を取り出すと、弦にセットして引き、、霧に包まれた空中に向かって狙いを定める。

「……そこか」

 そして弦を離した。

 銀の矢は勢いよく霧の中へと飛んでいく。

「ぎゃあああああああ!」

 突如上がる悲鳴。同時に霧が晴れていく。

 そこには、右肩に銀の矢が刺さったリーザがいた。

 リーザは苦悶の表情を浮かべながら、落ちるように地面へと降りていく。

 そして、ルディからほど遠くない場所に降り立つと、そのまま屈み込んだ。

「リーザ!」

 ルディは叫ぶが、リーザは激痛のためか、反応することができない。

 矢の刺さった箇所からは血が流れ出ている。

「痛いか?吸血鬼よ」

 レスナーはこれ以上ないと言うくらい残虐な笑みを浮かべる。

 ルディの全身を悪寒が駆け巡った。

(このままじゃ殺される!!)

 ルディの全身が震え出す。

「このままなぶり殺しにしてやってもいいが、あまり俺の性分ではないのでな」

 レスナーはもう一本銀の矢を矢筒から取り出し、弦にセットし、狙いをリーザに定めた。

「くっ……」

 リーザは顔を上げ、弱々しくも、憎悪の目で、レスナーを凝視する。

「今、楽にしてやる。あの世で親子共々仲良くな!」

 レスナーは目一杯引いていた弦を離した。

 放たれた銀の矢が、勢いよくリーザ目がけて飛んでいく。

(ボクは……ボクは……!)

 ルディは立ち上がった。いつの間にか震えが止まっている。

 ルディはそのままリーザの元へと駆け出した。

(リーザを、リーザを殺させはしない!!)

 その一心だけが、彼を突き動かす。

 一方、銀の矢は、確実に身動きのとれないリーザに迫っていた。

(父様!母様!)

 リーザは恐怖のあまり目を瞑る。

 グサッ!

 何かに矢が突き刺さる音。

「ぎゃああああああああ!」

 突如として起こる悲鳴。

「…………?」

 リーザは恐る恐る目を開ける。

「!!」

 そして言葉を失った。

 目の前には、自分をかばうように立っているルディの姿があった。

 そして、彼の背中には銀の矢が深くつき刺さっていた。

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