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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第4章 恩讐を超えて
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第4章 恩讐を超えて 3

 空は鈍色の雲に覆われていた。

 時折、稲光が雲の中を駆け巡る。

 降りしきる大粒の雨。

 所々にできた大きな水たまり。

 そんな悪天候の中、山道の崖に二人の男が対峙していた。

 一人は大柄の大人の男。

 まったく暖かみの感じられない厳つい表情で、体格もよく、背中に大剣を納めた鞘をくくりつけている。

 もう一人は少年。

 大柄の男とは対照的に弱々しい体つきで、表情も厳しさがまったく感じられず、腰に剣を収めた鞘を携えている。

「お前にはほとほと失望した」

 男が抑揚のない声で言った。

「一族の恥さらしめ」

「そ、そんなこと言ったって、仕方ないじゃないかぁ!」

 非難の矛先を向けられた少年は、抗議の声を上げる。

「黙れ!」

 男は一喝すると、拳に力を込めて少年を殴った。

「っ!!」

 少年は地面に倒れる。

「仕方ないだと!?」

 男は少年を睨み付ける。

「我が一族の使命は、『仕方ない』で片付けられるほど、軽い物ではない!!」

「ご、ごめんなさい……」

 少年は頬を抑え、涙ぐみながら立ち上がる。

「謝る必要はない。謝るくらいなら態度で示せ」

 男はまったく悪びれる様子もなく、崖の下を指さす。

「これがお前にやる最後のチャンスだ。この崖から飛び降り、登ってきてみせよ」

「む、無理だよぉ!!」

 少年は青ざめながら、首をぶんぶんと横に振る。

「軟弱者めっ……」

 男は少年の服の襟を掴み、持ち上げた。

「な、何するの!?」

 少年は悲鳴を上げた。

 同時に近くの大木に雷鳴をとどろかせながら雷が落ち、大木が真っ二つに割れて燃え上がる。

「ひっ!!」

 少年は言葉を失う。

 男の表情は、雷よりも遙かに迫力があり、殺気を帯びているものであった。

「この期に及んで命乞いとは……恥を知れ!」

「や、やめてよ!父さん!!やめてってば!!」

 少年は懇願するが、男は少年の体を崖より先の虚空に移動させると、そのまま掴んでいた襟を離す。

「うわあああああああああああっ!!」

 少年は手を伸ばすが、男の姿がどんどんと遠ざかっていく。

(もう駄目だ!ボクはこのまま死ぬんだ!!)

 少年の瞳から涙がこぼれ落ちる。

 短かった人生。

 辛かった生活。

 いいことは、何一つとしてなかった。

 少年の意識がだんだんと遠のいていく。

 そして――

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ルディは悲鳴を上げながら身を起こした。

「……あ、あれ?」

 いつもの見慣れた風景に、意識が混乱する。

「ここは……ボクの部屋……?」

 ようやく落ち着きを取り戻したルディは、自分が今まで眠っていて、夢の影響で目を覚ましたと言うことを理解した。

(よかった……アレは夢だったんだ……)

 ルディはホッと胸をなで下ろす。同時に、大量の汗をかいていることに気がつく。

(どうしてあんな夢を……まさか、昨日食べさせられた幻覚キノコが原因……?)

 ルディはベッドから起き上がると、机の上に置いてあった水差しからコップに水をくみ、一気に飲み干す。

(あの吸血鬼のせいだ!あんな昔のことを思い出すなんて……!)

 ルディはコップを机の上に置くと、額の汗をぬぐった。

 夢の影響か、体がだるく、重い。

「……今日もあんな天候の中、食料採取に行かなくちゃいけないのか……」

 ルディはメイド服に着替えると、ランプに火を灯して部屋を出た。

 階段を上がり、1階へと出る。

 そして、窓を開けて外の天気を見た。

「……嫌な天気だな……」

 ボソッと呟き、窓を閉める。

 外は、雨や雪は降っていないものの、空一面が鈍色の雲で覆われていた。

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