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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第4章 恩讐を超えて
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第4章 恩讐を超えて 2

 調理場に来たルディは、籠を降ろすと、ハァと深くため息を吐いた。

 吐出された白い息が、天へと登っていく。

 暖炉で温まった体に、容赦なく冷気が襲いかかってきた。

「寒っ!!」

 慌てて手に持っていたコートを着込み、両手に息を吹きかける。

 ここは環境的に、暖炉の部屋と、天国と地獄ほどの差があった。

「ふぅ……」

 ルディは再度ため息をつくと、先ほどの出来事を思い出していた。

『好きじゃな』

 唐突に発せられたリーザからの言葉。

 勘違いとわかっていても、胸が高鳴ってしまう。

(やっぱり、ボクはリーザのことが好きなんだ……)

 ルディは徐々に体温が高くなっていく自分のことがわかった。

(あんなに酷いことされてるのに、あんなに逃げ出したいと思っていたのに……)

 そして、チラッと調理室の入り口を見る。

(あの夜見せてくれた姿が、リーザの本当の姿……ずっと一人でいて、孤独に耐えてきたんだろうなぁ……)

 まるで昨日のことのように、リーザに抱きつかれて空を飛んだ出来事を思い出す。

 しかしすぐさま、ルディは邪念を払うかのように首をブンブンと力強く左右に振った。

(いけない!ボクは何を考えてるんだ!!)

 そして、水瓶からボウルに水をくむと、そこに手を入れる。

「冷たっ!!」

 痛覚が手のひらを通して全身に襲いかかる。

 それでもかまわず、ルディはジャブジャブと手を洗った。

(そうさ。ボクはリーザを好きになっちゃいけないんだ。だってボクは……)

 ルディはふぅっと息を吐き出すとボウルから手を出し、中に入っていた水を捨てた。

 そして水瓶から新しく水を組み直し、台の上に置く。

「食事作らないと……」

 籠からキノコを取り出し、ボウルの中に入れて洗う。

 洗い終わると水を切って木の板の上に置き、ナイフでスライスした。

「料理なんて女性がする物だと思ってたけど」

 かまどに火をつけ、鉄鍋に油を入れて、スライスしたキノコを入れて炒める。

「質素な食事だけど、仕方ないよね。かなり文句言われそうだけど……まぁ、その分は量でカバーすればいいかな」

 そんな独り言を呟きながら、炒めたキノコを皿に山盛りにする。

「完成、っと。うん、よくできた」

 ルディは料理の出来映えに自画自賛すると、かまどの火を消して、皿を持って食堂へと向かう。

 食堂ではリーザが既に座っており、暖炉にくべられた薪が煌々と燃え、ほのかな暖かさが広がっていた。

「遅かったのう」

「申し訳ございません。リーザ様、お待たせしました」

 ルディはうやうやしく一礼すると、リーザの前に料理の盛られた皿と、フォークにナイフを置いた。

 そして食堂を出て行こうとする。

「待て」

 しかしリーザが呼び止めた。

「おんしの分はどうしたのじゃ?」

「えっ!?」

 意外な言葉に、ルディは驚きの声を上げる。

「だから、おんしの分はどうしたのかと聞いておるのじゃ」

 リーザは同じ言葉を繰り返した。

「ボ、ボクの分は調理場にあるけど……」

「わらわが許す。おんしの分も持ってまいれ」

「ええっ!?」

 予期せぬ言葉に、ルディは再度驚きの声を上げた。

「どうした?はよ持ってまいれ」

「は、はい!」

 ルディは慌てて食堂を出ると、調理場へと戻り、鉄鍋に残っていたキノコを皿へと盛りつける。

 そしてそれを持つと、食堂へと戻った。

「あ、あの……」

「はよそこに置かぬか」

「は、はい」

 リーザに指示されるまま、ルディは彼女の対面に料理を盛った皿と、ナイフとフォークを置く。

「食事の時は、コートは脱ぐものじゃぞ」

「わ、わかりました」

 ルディはいそいそと着ていたコートを脱ぎ、隣の椅子の上に置く。

 そして自分も椅子に座った。

(今まで一度も、一緒に食事をしようなんてこと言ってくれたことなかったのに……ひょっとして、ボクの想いが伝わった……?)

 ルディは少し緊張しながらリーザを見る。

 リーザはこれ以上ないくらいに上機嫌で、手を合わせていた。

「それじゃあ、いただくとするかの。いただきます」

「い、いただきます」

 ルディはぎこちない動作で、ナイフとフォークを手に取る。

 そして皿に盛られたキノコを食べようとした。

「待て」

 しかし、その動作をリーザが静止する。

「おんし、それだけでは足りなかろう?これも食すとよいぞ」

 そして手に隠し持っていた食材を、ルディの皿の上に載せる。

「えっ……」

 ルディは載せられた食材を見て、高揚していた気分が一気に吹っ飛び、青ざめた。

 それは、リーザが没収したキノコをスライスしたものであった。

「おんしがわらわのために採ってきてくれた食材を、無駄にするわけにはいかぬからな。思う存分味わうがよいぞ」

「え、えっと……」

「もちろん、残すことは許さぬぞ」

 リーザは微笑む。しかし、目は笑っていない。

「はい……」

 ルディは渋々頷くと、リーザに盛られたキノコをフォークに刺し、震えながら口の中へと運んでいく。

「うむ。好き嫌いのない男は、わらわは好きじゃ」

 そんな苦しむルディの様子を、リーザは楽しげに見守った。

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