表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第3章 心重ねて
19/29

第3章 心重ねて 6

 二人が中央広場へ行くと、果たしてそこでは宴が開かれていた。

 人々が踊り、歌い、そして酒や料理を幸せそうに食している。

 踊っている者の中には、リーザ達と同じように村の外から来たであろう人達の姿も見られた。

「随分と楽しそうだね」

 ルディは声を弾ませた。

 目の前には、ここ数ヵ月間実感することのなかった、「生きている喜び」を肌で感じさせてくれる光景が広がっている。

 ルディの感情が急速に昂ぶっていくのも無理はない。

 そしてそれは、隣にいたリーザにも、嫌と言うほど伝わってきた。

(まったく、仕方のない奴じゃ……)

 リーザは呆れながらため息をつくと、ルディに声をかけた。

「どれ。わらわ達も馳走になるかの」

「そうだね!」

 ルディは目を輝かせながら返答する。

(何がそんなに嬉しいのかのう……)

 リーザは再度ため息をつく。そして品定めをするように、周囲を見回す。

 ふと、顔を赤くした大柄のひげ面男と目が合ってしまった。

 男はニヤリと笑うと、ジョッキを片手におぼつかない足取りでリーザ達の元へとやってくる。

「ようネーちゃん達!何そんなところで突っ立ってんだ!こっちに来て俺達と呑もうぜ……ゲプッ!」

 そしてアルコールの臭いを充満させた口臭をリーザに向かって放つ。

「臭っ!」

 ルディは思わず顔をしかめて鼻をつまんだ。

 しかしその態度に、男は途端に表情を変える。

「あぁん!?臭いだぁ!?おいそっちのかわいいメイドのねーちゃん!誰が臭いだって!?」

 そして、毛深い腕を伸ばしてルディに掴みかかろうとする。

「本当に、世話のかかる奴じゃ……」

 リーザはため息をついて、男の腕に触れる。

 次の瞬間、大柄の男は空中で回転して、そのまま地べたに仰向けでたたきつけられていた。

「ガハッ……」

 何が起こったのかわからないと言った様子で、男は視線を宙にさまよわせる。

「あらあら。飲み過ぎは体に毒ですわよ?」

 リーザは微笑むと、ルディの手を取ってそのまま歩き出した。

「え?ちょ、ちょっと……」

 ルディは引っ張られるように歩く。

「本当に、世話のかかる奴じゃ……」

 リーザは先程と同じ言葉を呟いた。

 そして男から大分離れたところで、ルディの手を離す。

「まったく、おんしも余計なトラブルを起こすでない。わらわは目立つのが嫌いじゃというのに……」

「ご、ごめん……」

 つられて、ルディはつい頭を下げてしまう。

(まぁ、わらわにも責任があるのじゃが……)

 リーザはそう思ったが、口に出すことはなく、代わりに軽くため息をついた。

「凄いねあんた」

 そんなリーザ達に、見るからに気っ風の良さそうな中年の女性が声をかけてきた。

「見てたよ。あんな大男投げ飛ばしちまうなんて。人は見かけによらないって言うけどさ」

「さあ?私は何もしていませんが。あの方が勝手に転んだだけですわ」

 リーザは涼しい表情で惚ける。

「そうかい。勝手に転んだだけかい。ならそういうことにしておくよ」

 女性は笑いながら、陶器の器いっぱいに入った手のひらサイズの果物を、リーザに差し出した。

「あの男にはあたし達も迷惑してたんだ。今日はお祭りだからね。思う存分喰っとくれ」

「そうですか。それでは遠慮なく」

 リーザはそれを受け取ると、果物に口づけをして、一口かじる。

「甘くておいしいですね」

 そしてにっこり笑うと、陶器に入っていた果物を1つ手に取り、ルディに手渡した。

「貴方も召し上がってください。とってもおいしいですよ」

「う、うん」

 ルディはかしこまった様子でその果物を受け取ると、それを口の中へと運ぶ。

「……ホントだ。すっごく甘くておいしい」

 たちまちのうちに、ルディの表情が緩んでいく。

「だろ?この果物はこの村の名物だからね!」

 女性は豪快に笑うと、ポンと手を叩いた。

「そうだ。あんた達も、もしよければ踊っていっておくれよ。その方が神様も喜ぶだろうからねぇ」

「えっ?ぼ、ボクは……」

 突然の提案に戸惑うルディ。

 しかしリーザは

「そうですか。ではお言葉に甘えさせていただくとしましょう」

 二つ返事で快諾した。

「では、行きましょう」

 そしてルディに手を取る。

「ちょ、ちょっと待ってよ。ボク、ダンスなんて知らないよ」

 ルディは慌てた様子で、リーザを見る。

「大丈夫ですよ。私がリードしてあげますから」

 リーザはにっこり笑うと、ゆっくりと踊り出す。

 そして二人はそのまま、陽が暮れるまで村人に混じってダンスを踊り続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ