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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第3章 心重ねて
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第3章 心重ねて 5

 やがて二人が村に着いたのは、既に陽も西に沈みかけ、オレンジ色の空が闇に染まりはじめている時分のことであった。

 ここナネス村はプルーム森に隣接している村で、これといった特産物はない。

 景色もそこかしこに有り触れた物で、リーザもほとんど来ることがなかった。

 強いていえば、何の特色もないつまらない村――それがリーザの、ナネス村に対する評価であった。

 そのため、前に来たのはいつだったのかを思い出せないくらい、この村とは縁がなかった。

「こんな辺鄙な村でも、祭りはやっておるんじゃな……」

 リーザは物珍しそうに周囲を見回しながら、村の中を歩く。

 カボータと呼ばれる皮の固い、オレンジ色の大きい円形の作物を頭にした案山子が、各家の前や畑のそこかしこに立っている。

 そしてそれらの案山子には、色とりどりの花輪がかけられていた。

「うむうむ。いかにも収穫祭らしいのう」

 リーザは満足そうに頷いた。

「なんだか華やかだね」

 ルディも、少しだけ表情を綻ばせる。

 夕陽をいっぱいに浴びて、秋風に揺られる黄金色の穂が、ルディの心を打っていた。

 この風景を見られただけでも、ここに来てよかった。

 ルディは心底そう思った。

 リーザの後についていきながら、一つ一つの情景を眼の奥へと焼き付ける。

 その途中、この村の住民と思わしき女性に出会った。

 女性はリーザと同じような服装をしており、花輪を首にかけて、手に色とりどりの作物を載せた籠を持っている。

「こんにちわ」

『こんにちわ』

 女性に声をかけられたリーザとルディは声をハモらせ返事をして、軽く会釈する。

「この村の方ですか?ステキなお祭りですね」

 リーザがにこやかに微笑みながら、優しい口調で話しかける。

 それはまるで別人のような態度であり、ルディは悪寒を覚えずにはいられなかった。

「ありがとう。今日は年に一度の収穫祭なの。ちょうど今、村の中央広場で神に捧げる奉納の舞をしているところだから、もしよかったら貴方たちも見ていってね」

「はい、ありがとうございます」

 女性はにこやかに会釈をすると、そのまま去って行く。

「村の中央広場か……ちといってみるかのう、なぁルディよ……」

 リーザはそう言ってルディを見て、フッと笑った。

「なんじゃ?おんし行く気満々ではないか」

「そ、そんなことないよ」

 ルディは慌てて否定するが、表情は緩みっぱなしであった。

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