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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第3章 心重ねて
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第3章 心重ねて 3

 それから数日後。

 いつものように朝早く目を覚ましたルディは、ベッドから降りると、クローゼットを開けた。

「!?」

 そして彼は、眉をひそめた。

 ハンガーにかかっているメイド服一式が新しくなっているのだ。

(……嫌な予感しかしない……)

 辺りを見回し、誰もいないことを確認してから、メイド服を手に取る。

 そして、恐る恐るそれに手を通した。

(今度は何を考えてるんだ……)

 着替え終わるや、クローゼットの鏡の前で、クルリと一回転する。

(……うん、どこも変なところはないな)

 ルディはホッとため息をつくと、クローゼットの戸を閉めて、自分の部屋を出た。

(今日も暑くならなければいいけど……)

 少し重い気分になりながら、調理場へと向かう。

 そして調理場に入るなり、本日2度目の驚きの表情を作った。

 なんとそこには、リーザが座っていたのだ。

 彼が驚くのも無理はない。

 普段はルディが朝食を作り終える頃に起きてくること、そして彼女の服装がいつものタキシードの正装姿ではなく、質素な服にロングスカート、そして頭にスカーフを巻いている事にあった。

(絶対何か企んでる!!)

 ルディの直感が、ある種の警報を鳴らし続けた。

「遅かったのうルディよ。わらわは待ちくたびれたぞ」

 そんなルディの気持ちなどお構いなしに、リーザは口元に手を当てて大きくあくびをしてみせる。

「あの、リーザ様。その格好は一体?」

「これかえ?」

 リーザは椅子から立ち上がるや、一回転してみせる。

「どうじゃ?どこから見ても、村娘じゃろ?」

「う、うん……そうだね。よく似合ってるよ」

 ルディは苦笑しながら答える。

 しかしリーザは、ますます上機嫌になった。

「そうじゃろそうじゃろ。おんしなら、そう言ってくれると、信じておったぞ」

 そして、なめ回すようにルディを見て、ウンウン頷く。

「おんしも似合ってるぞ。ルディよ。わざわざ新しい服を入手してきた甲斐があったわ。これで恥ずかしくなく、行けるの」

「行けるって、どこに?」

「決まっておろう。秋祭りじゃ」

 リーザはポケットから紙を取り出し、それを広げる。

「あっ!?」

 ルディは小さく声を上げた。それは、彼がくしゃくしゃに丸めて、籠の中に放り込んだチラシであった。

「昨日、館の中でこのようなチラシを見つけたでの。まったく、どこから迷い込んできたことやら」

 そして、ニヤニヤしながらルディを見る。

「…………」

 ルディは無言のまま、恥ずかしそうにチラシから視線を背ける。

「まぁ、わらわもたまには外に出て見聞を広めんとのう。引きこもりは体に毒じゃからな」

(だったらボクも解放してくれ!今すぐ!!)

 ルディは心の中で叫んだ。もっとも、実際に口に出したところで、その願いが叶うことはないのだが。

「というわけで、今日は久々の遠出じゃ。夕刻までには目的地につかないといけないからのう」

(これはひょっとして、逃げ出すチャンスでは!?)

 ルディの心の中に、かすかに希望の灯が点る。

「それじゃあ、ボクも着替えたいんだけど……」

 ルディは恐る恐る、リーザに申し出る。

「何を言っておるんじゃ?おんしはその姿で行くに決まっておろう」

 しかし、リーザは当然のようにその申し出を却下する。

「まぁ、おんしがどうしても着替えたいというのであれば、わらわも止めんがのう。果たしてできるかの?」

「えっ!?」

 その不吉な言葉を聞くや、ルディの体中に悪寒が駆け巡った。

 慌ててヘッドドレッサーを掴み外そうとするが、まるで意思を持っているかのごとく、外れない。

「な、なんだこれ!?とれない!?」

「そうじゃろそうじゃろ。それは呪いのアイテム『寂しがりのメイド服』じゃからな。その服は、着衣者を死ぬまで離さない事で有名じゃ」

「ええっ!?」

 見る見るルディの表情が青ざめていく。

 この先一生メイド服……それは考えたくもない状況であった。

「……というのは冗談じゃ」

 しかし、リーザはフッと笑って、自らの言葉を否定した。

「わらわが呪いを解けば、すぐにでも脱ぐことができるぞ」

(同じ事じゃないか!!)

 ルディは心の中で怒りの声を上げた。

 素直に頼んだところで、到底聞き入れてもらえるとは思えない。

 それに、リーザの元から逃げ出す行動も封じられた。

(やられた……まさかこんな事を仕掛けてくるなんて……)

 ルディの嫌な予感は的中した。

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