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プルーム森の吸血姫  作者: 杠葉 湖
第3章 心重ねて
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第3章 心重ねて 1

 暑かった夏も過ぎ去り、プルーム森に秋の季節がやってきた。

 森の木々が紅く黄色く色づき、地面に色とりどりの絨毯を出現させる。

 たわわに実った木の果実。あちらこちらの土の下から顔を覗かせる山菜

 冬眠に備えた動物たちが、我先にと森の収穫祭へと顔を覗かせる。

 ルディも、この季節がすぐに好きになった。

 もちろん第一の理由は労せずして食料が手に入るからであったが、第二の理由として、自然が描く美しい風景にあった。

「秋深く シモベ料理を 作るボク」

 ルディは気分よく、吟遊詩人っぽく詩を詠んでみたりする。

 もしこの場にリーザがいたのなら、鼻で笑われるか、理不尽な理由で罰が下されるところだろう。

「ああ、なんていい季節なんだ!苦労しないでこんなにおいしい物が手に入るなんて!街にいた頃でもこんなにおいしい物、食べられなかったよ!」

 もぎたての赤い木の実に頬ずりしたルディは、ふとはしゃぐのをやめる。

「街にいた頃、か……」

 そして、徐々に悲しい気持ちがこみ上げてくる。

 もうどれくらいだろう。

 この森に幽閉されてから、人と会っていないのは。

 例えこの森から逃げ出しても、すぐに連れ戻されるか殺される。

 死と隣合わせの生活を続けてきたことで、ルディにはそれが肌で感じ取れるようになっていた。

 一番手っ取り早いのは吸血鬼を討伐することなのだが、リーザとルディとでは、あまりにも実力差がありすぎた。

 おそらく、返り討ちに遭う未来しかないだろう。

 それは、ルディ自身がどんなに強くなろうとも埋められない、決定的な差のように思えた。

「ふぅ……」

 ルディは何気なく天を見上げた。

 青い空が、どこまでもどこまでも続いている。

 一羽の鳥が、そんな大空を優雅に横切っていった。

「ボクも自由になれたらなぁ……」

 ルディは大きくため息をつき、視線を地上へと戻す。

 ふと、茂みに隠れるように落ちている紙を発見した。

「何だろう……?」

 ルディはそれを拾い上げてみる。

 それは、村の祭りを知らせるチラシであった。

 おそらく、どこからか飛んできたのであろう。

 村の娘がにこやかに微笑みながら花を持ったイラストがかわいらしく描かれており、一緒に日時が書かれている。

「もう祭りの季節なんだな……」

 ルディは大きくため息をつくと、チラシも丸めて、背負ったかごの中にポイッと入れた。

 そしてもう一度大きくため息をつくと、力なく歩き出した。

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