国家機密
『それでは、私達がなぜユイさんを誘拐したのか。から説明いたします。』
一瞬何を言っているのかわからなかった。予想の斜め上を行く発言に困惑する。
『あなたがユイを誘拐した?それってどういうこと?』
『ククッ…やはりその反応。その様子だとお父様から何もお聞きにはなられていないのかな?』
さっきから何を言ってるんだこいつは。さも、父が原因を知っていたかのような口調で喋って。しかも少し笑っている。
『おぉ、怖い怖い。そんなに睨まないでくれたまえ。かっこいい顔が台無しだぞ?悪いのは私ではない。君の隣にいる父親だよ。』
少し芝居染みた口調で言う。
心の糸が軋む。そろそろ俺の堪忍袋も限界だ。
こいつ、好きに喋らせておけば。家族の事を貶されては黙ってはいられない。
一発殴ってやろうかと立ち上がろうとしたが、グイッと引っ張られ席に戻された。引っ張ったのは父親だった。表情は俯いていたので見えなかったが、雰囲気でわかる。『逆らうな』と。そして父が口を開く。
『すまん、今まで黙っていてすまん。最初から全部わかってたんだ、原因が俺だって事。で、でも言えなかった…。これを言ったら、家族が、バラバラになる。それが怖かった…。だから言えなかったんだ!許してくれ……。』
泣きそうな声で言う父。でもそれでは答えになってない。
『なんで、なんだよ。でも、それじゃあ全然説明になってないだろう父さん』
『それは私が説明しようか、今のお父様では難しいでしょう』
仕方がないので聞くことにする。藤本は少なからず楽しんでいるような口調で話し始めた。
『ここから話すことは国家機密レベルの話だ。もし、あなた達がポロッとでも口に出したら……』
手を銃の形にしてバーンと撃つ真似をする。
『なーんて、ことになるから気をつけ給え』
それは一種の宣戦布告として心に刻まれたのであった。
もっとムカつくような小説を書きたい。
次話で国の本性を説明、ハルトは悔しいでしょうね。