雷
呆然と立ち尽くす父。
『どういうこと?』
俺は聞く。母も聞きたそうだ。
少し考えた後一言。
『すまん、わかりそうにない』
そっか、と俺。
とりあえず今は…
『長野、行くんでしょ?』
俺の代わりに母が言った。
さっきまで晴れていたはずなのに嘘みたいな雨だ。
車と一緒に揺れること3時間と半分。車内の重い空気を裂くのは雷。しかしその空気はすぐに戻る、戻される。
そういえばユイは雷が大の苦手だった。特に夜の雷は俺のベットに泣きながら入り込んできて大変だったものだ。大丈夫かなユイ…。雷に怯えてないか心配だ。
『ついた、ここだ』
見たところ博物館のようなイメージの建物。古くはない。外側だけ塗装されているだけかもしれないが。
なぜこんな山奥にこんな施設があるのだろうか。
『本当にここなの?不気味じゃない?』
母はいうが、父は間違いないと言っている。特別方向音痴というわけでもないから大丈夫だろう。
傘は持っていなかったので車からは走って施設に入った。地面は泥濘んでいて転びそうになる。そこをぐっとこらえた時、ふと視界に黒色のリムジンが見えた、様な気がした。
入り口に入ると副所長の渡辺が出迎えてくれた。
『お待ちしておりました桜井様』
渡辺の後ろの壁には時計があり、それは15時05分を指していた。