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S_028・ユイ

『ご両親は残って頂きたい、私はこのハルト君と話がしたくなってきた。』


 そう言い放つと部屋の入り口から警察官が3人入ってきた。親の監視役だろう。腰には黒光りする拳銃が差してある。


『では行こうハルト君。ついてきたまえ。』


 所長室を出て右に進むと鉄格子が見えてきた。藤本はポケットからセキュリティカードと思われる物を取り出しセンサーに当てる。更に指紋認証の後、パスワードを入力する三段認証でロックを解除した。パスワードを盗み見ようかと目を凝らしたが何一つ見させてもらえずに終わった。 

 鉄格子の先はエレベーターとなっていた。表示している階が〔3、2、1、B1〕の4つ。今俺がいる階は1階のため一つ下が地下となる。ボタンを押すと直ぐに扉が開いた。藤本が先に入りドアを手で抑え、俺を入れてくれる。余計な気遣いだ。無言でエレベーターに乗る。

 次にエレベーターが空いた時は前の様なLEDの明るい光は無かった。白熱電球が所々にあり、足元が見える最低限の光しか発していない。床、壁天井全てが石で出来ていて、重々しい雰囲気を醸し出している。8月だと言うのに少し肌寒い。至る所に蜘蛛の巣が張っており決して清潔と言える場所とは言えない。幽霊が出ると言われてもおかしく無い不気味さもある。

 数メートル間隔で金属扉があり、一つ一つに番号が振られている。その番号はS_001からはじまっていた。その識別番号がS_028になった時藤本は足を止めた。


『ここが、君の妹さんがいる部屋だ。』


 ここの開錠方法はパスワードだけのようだ。俺は藤本にバレ無いよう0〜9のパネルを盗み見た。


【0204】


まさか、ユイの誕生日なのか。ユイの誕生日は2月4日。実は黒のリムジンのナンバーもたまたまユイの誕生日関連の数字だったため、一発で覚えることができたのだ。そのナンバーはたまたまだとしてもS_028のパスワードが誕生日だと言うのは意図的だろう。

挿絵(By みてみん)

 床はタイルが引かれている。広さは10畳程。正方形を半分に切った長方形のような形をしている。部屋の範囲側にはもう一つ扉が見える。

 そしてその部屋にいたのはユイではなく副館長の渡辺だった。


『遅れてすまなかった渡辺。準備はできているな?』


『はい、できております。いつでも始められます。』


 長方形の部屋には何やら機械のようなものが置かれている。マイクが付いているので音声系の類だろう。長方形の長い辺に当たる壁は一面真っ黒で鏡のように俺たちを映している。


『それではハルト君、お待ちかねの対面式だ!』


 渡辺がタイミング良くマイクのついた機械にあるスイッチを押すと黒の壁が透明になりその奥が映った。一面に広がっていた黒の壁は電気を流すことによって黒くなる特殊なガラスだったのだろう。 

 そしてそこにいたのは…。


『ユイっ!!』


 間違いなくユイだ。ユイがいる部屋はこちらの部屋と打って変わって様子が違った。ユイの部屋は部屋の外のような石造りで薄暗い。そして部屋の至る所に拷問で使うであろう器具が散乱している。

 部屋の奥、中央の壁、約1.8メートルの高さからから伸びている鎖に両手が拘束され、上に引っ張られ、ばんざいするような格好になっている。その体から伸びる白く細い足にはユイの身体には割に合わない大きな鉄球のついた足枷が付いていた。本人は寝ているのだろうか、冷たそうな石の上にベタッとトンビ座りをして首を垂れている。

 俺は今は透明の壁に両手を押し付けユイ!ユイ!と呼びかける。しかしユイは反応しない。防音なのだろうか。


『ふっ…ふーはっはっはっ!!その顔、たまんないねハルト君。人の怒りと恨みのこもったその顔、何度見ても飽きるものじゃ無い!よかったら写真に撮らせてくれないか?現像して送ってあげてもいい!』


 こんなことがあっていいわけが無いだろう。

 許せない、許せるはずが無い。許さない、絶対に許さない。ぶっ殺してやる!絶対、絶対に!殺す、殺す殺す殺す殺す!!!


 この時藤本だけは許さないと心に誓った。

トンビ座りとはいわゆる女の子座りのことです。

次回多少痛々しい表現を含むつもりです。

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