プロローグ
バケツをひっくり返した様な雨の降る山道を走る。道は舗装はされておらず、泥でぬかるみ、気を抜くと左の崖に真っ逆さまだ。何度も転びそうになるが、なんとか立て直し走り続ける。
背中からは小さな吐息が聞こえてきた。
(くそ、そろそろ限界か…。)
俺の体力はとっくに限界を超えていた。何せ、背中に女の子を背負いながら20分も走り続けている。
諦めるな!と自分に喝を入れ足を動かす。口の中に違和感を感じ、溜まったものを吐き出すと、それは真っ赤に染まった自分の体液。腹に開いた風穴に手を当て、手が血に染まったのを確認する。
(こっちもそろそろタイムリミットが近づいてるな…)
ついに俺は足を絡ませ転ぶ。背中からは「うっ…」と小さな声がした。泥が身体中に付き、俺も小さな悲鳴をあげる。
(もうだめだ、立てる気がしない。せめてこいつだけでも…)
『…ィ…に…げ…ろ…』
俺の背中に向かってありったけの声量で発した。その際にかなりの血液を口から吐き出したが、そんな事はもうどうでもいい。あまり声は出てなかったかもしれないが伝えることはできただろうか。
『イヤだよ…せっかく……。また一緒に……お兄ちゃんと遊べる…って思ったのに…』
その声もかなり弱っている。体にはいくつもの傷や痣があり立てるような身体ではない。それでも…
(ワガママ言ってんじゃねーよ。そんなことお兄ちゃん許さねえから)
しかし身体は全く動かない。次第に遠くなっていく意識に虚しさを覚える。
(俺、頑張ったかな)
(俺、かっこ悪いな)
(不幸なのかな)
(愛がいくらあったって…)
雨が体に当たり体力を奪い続ける中、俺は静かに目を閉じ終わりを待った。
プロローグとはこんなものでいいのでしょうか、初投稿で不安がたくさんです。
感想、ご指摘宜しくお願いしますm(_ _)m