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2.たかが1cm、されど1cm

「おはよー!!朝だぞ!」


幼馴染がエプロン姿でフライパンを叩きながら私の部屋に入ってくるところから私の1日は始まる。いや性別逆ってかさすがにベタすぎるでしょ!とツッコミを入れるのを忘れてしまう程にはこのやりとりが日常と化しているあたり、私も警戒が甘いかもしれない。


「あと5分……」

「駄目だ。遅刻するぞ」


こんなやりとり、ベタすぎてライトノベルでもみない。もはや20年前のラブコメ漫画だ。やっぱり性別は逆だけど。

この幼馴染、生物学上はオスであることは間違いないが、そのような男らしさは微塵も感じられない。無論彼がそっち系の人間であるという訳ではない。しかし、10年間一度たりとも彼がそういった素振りをみせたことがないという点においてさすがライトノベル的草食男子といえる。彼は私のくるまっていた毛布を引きはがし、私の腕を掴んで無理やり叩きおこす。その瞬間彼はヒャァと素っ頓狂な声をあげて大慌てで私の部屋から出て行った。


「お、おま!ちゃんとしろよ全くもう…!」


起き上がった際パジャマの胸元がはだけいて、下着がほんの1cmほど見えたらしい。どこまで草食系なんだ。多分ドアの向こうで真っ赤な顔をしている。6歳の頃から一緒にいる私でさえこうなのだから、これが普通の女子の場合だったらどうなっているのだろう。憤死しているに違いない。


「ホラ、そこに制服出しといてあるから。ちゃんと着がえろよ!」

「はいはーい。ありがと〜」


おかげですっかり目が覚めた私はそそくさと制服に着替え、ドアを勢いよく引いた。

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