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空中要塞ガルザイーダ




10年前、空飛ぶ鉄の城が突如として現れた。

鉄の城は、全周約60km。

あちこちにおびただしい数の砲門が備え付けられている。

浮遊原理は全くの不明。

現代科学では解明できない未知の城。それが空中要塞ガルザイーダ。



そのガルザイーダ内部で10年も冒険を続けている男がいた。


その男、ゼーチは単独でガルザイーダの中心部を目指していた。

空中要塞内部は入り組んで迷路のようで、しかも自動で増改築を繰り返し一筋縄ではいかない。


それでも、ゼーチは中心部を目指さなくてはいかなかった。

全ては己の贖罪のため。



その日は懐かしい物を発見した。

学習机だ。

引き出しの中の教科書やノートには『岸田勢一郎』と持ち主の名前が書かれている。


「俺の机じゃねえか…」


そう、ゼーチとは勢一郎のあだ名であった。

要塞に巻き込まれ、こんな所で10年も置き去りにされていたのだろう。


「懐かしいなあ」


思いだすは昔の記憶、

まだ空中要塞ガルザイーダが無かった時代。

ゼーチが中学生だったあの日も、友人たちと一緒に他愛もない話で盛り上がっていた。


話の内容は本当にしょうもない事ばかりで、地味で目立たない女の子がメガネを外したら超絶美人だったって展開は、現実であり得るか否かで白熱していた。

そのうち、じゃあ眼鏡美人がメガネ外したらどうなんの?

って疑問が出てきた所で、悪ノリしたゼーチが眼鏡美人であるタマ先生のメガネを冗談半分で取り上げた。


メガネを外したタマ先生は空中要塞ガルザイーダになった。



「あれから10年か…」



ゼーチはタマ先生のメガネを握りしめ、次の扉を開けた。



扉の先は、空中要塞ガルザイーダの中心部だった。



「ずいぶんと長い居残り授業だったぜ」



心臓部の装置に、そっとメガネを掛け…

空中要塞ガルザイーダはタマ先生へと戻ったのだ。



「全くもう!いきなり人のメガネを取る人がいますか!反省してますか勢一郎君!?」


「せ、先生…!俺がわかるのか!?」


「当たり前です!どんなに成長してても自分の生徒くらいわかりますよ。教師ですから!」


「う…うう…ごめんなさい…ごめんなさいタマ先生…!」


「ふふ、勢一郎君が泣き虫なのは相変わらずみたいですね。

じゃあ…体罰チョップぴしー!」


ぴしっ


「これで許しちゃいます」


「先生…!」


気付けばゼーチは泣いていた。

涙は泉のように幾らでもあふれ出た。

その涙で遂にはゼーチのコンタクトレンズが流れ落ち、

彼は宇宙海賊船グランドレッサー号になった。







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