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タグにガールズラブ入れてる割には百合成分が薄い気がしたから百合を書いてみた(百合だとは言ってない)



今日は弟が少年サッカーの試合だというので、両親はついて行き朝から私一人で留守番だ。


これが思いのほか暇だったので、私はKをお招きした。

Kは高校で出来た友人で、仲良くなると案外家が近いことが判明。

それからというもの、よく互いに家に遊びに行っている。


「Rちゃんハロハロー」


メールして少ししてKは来た。ポニーテールに白いノースリーブのワンピース。

控えめな薄い化粧でほんのり紅い唇がいじらしい。

対する私はすっぴん半ズボンにTシャツという女を捨てた部屋着仕様。


「おめかしして来たところ悪いが、今日は弟いないぞ?」


「えー!Y君いないのー!

もーう、テンション下がるぅー」


ショタコンのKは、弟のYにご執心であったりする。

Kのような美人な変態オネーサンに愛されて羨ましい弟だ。

羨ましいから弟の部屋を漁ろうぜ!


「ええっ、そんなの悪いよぉー。Y君ももう小学6年生だよ?

エッチな本とかあるかも知れないし…」


「それが目当てですが?」


「うわあ、Rちゃんは悪いお姉さんだー…」


「何?Kは興味ないの?」


「否!めっちゃ興味ムラムラあるんで、Y君の部屋にレッツらゴー!です!」



弟の部屋を捜索すること15分。

残念ながらエッチぃ本の発見は出来なかった。

だがしかし、その代わりに我々はとんでもないお宝を発見したのである!!


弟のベッドの下から発掘した一冊のノート…!





『僕が考えた百合シチュ全集 完全版』




「「oh……」」


これは…まごうことなく数年後に黒歴史認定されるであろう禁忌書物。

その年で百合男子とか、お姉ちゃんお前の将来が心配だよ…。


「ど、どうしよー?……見てもいいかな?」


いや、それは流石に、なあ?いくら何でも不憫すぎる。

もし私達がこれを盗み見たことを知れば弟は絶望するだろう。

でもな…。弟の絶望が悦びとなる。姉とは、そういう哀しい生き物なんどすえ!!


「よし見よう!」

「応ッ!!」



『このノートは、僕ことYが至高の百合を目指さんとし記した物である。

男である僕だから、手が届かないからこそ、光り輝く百合の真髄に近付けるのだと確信している。

これさえ読めば、今日から貴女も立派な百合戦士になれるであろう』



「初っ端から絶好調だなコイツ…」


「あ、次のページからY君の考えた百合シチュが載ってる…」


「ぅおぅ…結構細かいなあ。引くわ」


「でもー、折角だからちょっと実践してみない?

盗み見たお詫びに、Y君が帰ってきたらここにあるシチュやって喜ばせてあげようよー」


「あっ、それいいな!面白そう!」


奇しくも百合劇場の幕開けである。




『百合1 バレンタインチョコ』


「はいっ、バレンタインチョコだよー」


「チョコって、両手突き出してるだけじゃん」


「ふふふー。どっちかの手の中にチョコがありますー。選んで選んでー」


「じゃあ…右手だ!」


「すごーい正解!ジャーン!……あっ」


「……チョコ溶けてんじゃん」


「ううー、なんで私ったら、折角手作りだったのにぃ」


「馬鹿だなあ。手のひらがチョコでベトベトじゃないか。……ペロ」


「ひゃあっ!?」


「うん、おいしい!」


「あ、ありがと…。それね、本命…だから…////」


「そ、そそそうか!じゃあ、ホワイトデーはお返ししなきゃな。

わっ、私も…本命だぞ…」


「うんん、もう、貰ったからいい…」


「えっ?」


「…………」

「…………」

「…………」


「………おいK?」


「いやごめんちょっと待ってー」


「おいおいおーい!ここはお前が私が舐めた手の平を舐めて「ウフフ甘くっておいしーい」て言うとこだろーが!」


「でもRちゃんの舐めた後とか汚いよー!」


「あんだとォ!!?こうなりゃ力づくだ!オラ舐めろ!テメエの手の平だろがァァア!!!」


「あイタタタタ!ちょっ…やめっ!ああああっむぐッ?!」


「さあどうだ?」


「うう……甘、くておいし…いです……」


「よろしい」


「もうお嫁いけないよー…」





『百合2 プール』



「せぇーんーせっい!」


「あっ、コラK…さん!後ろから抱きつかないの!」


「えー、だって溺れちゃったもーっん。

ねー、助けてせんせー」


「ここのプール足が付くぞ…ゴホン!足が付くじゃないですか。

ふざけてたら本当に溺れてしまいますよ?」


「だからー、本当に溺れてるのー。

先生という名の愛に溺れてますー」


「はいはい愛が何だって?先生は今、ちょっと耳に水が入っててよく聞こえませーん。

だから離れなさい」


「むうう!だったら耳から水を出すいい方法知ってるよー。はむっ」


「んっ!なっ、耳を甘噛みしないで下さい!?」


「うぇへへ。だったら溺れた私をプール脇までもとい台所まで送って下さいねー。はむはむ」


「くうう!行けばいいんでしょ!陸についたら覚えときなさ…ひゃう!?」


「あれ、もしかして……《Rちゃん耳弱い?》」


「ふゅああ…!やぁっ、耳元で囁かないで!?」


「ほっほーう!だったらコレならどうだー!?ぴちゃ、ぴちょぴちょ。じゅる、ちゅるちゅる」


「あっ!?ああ!耳舐めは反則…ッ!おいノートに書いてねえだろコレ!!ま…マジやめ…てぇぇ…!」


「さっきのお返しですー。はやく台所まで行かないとずっと続くよー?」


「あっああっ!?ひゃんッ!

んくぅぅぅうううう!!!」


「はい到着ぅ」


「も……もうお嫁に行けねぇ……」




『百合3 キス練習』



「Rも彼氏が出来てもう三ヶ月かぁ〜」


「な、なんだよいいじゃねえか彼氏くらい」


「だって羨ましいしー。彼氏がサッカー部のY君とか、すごい女子に人気あったんだよー?」


「へいストップ!何で私が弟と付き合わなきゃならんのさ!?」


「だって他に思いつかないしー。演技だから別にいいじゃん。はい続き続きー」


「へいへい了解。Yも部活で忙しくてなかなか会えないんだよな」


「でも、キ…キスってもう…した?」


「……先週、初めてした」


「そう…なんだ…」


「なんだよ?」


「んーん。私、その、キスとかした事ないから」


「べ、別に大した事じゃないだろ」


「じゃあさじゃあさ。キスってどんな感じか…教えて?」


「何言ってんだよ?!変なこと考えてんじゃねえって!」


「だって、女同士ならノーカンじゃないー?

それにほら、キスが下手だとY君に嫌われるかもよー?

ね!だからお互い練習だと思って!」


「そういう事なら…。よし、じゃあするぞ…!」


「うん………」


「…………」

「…………」


「「いややっぱ無理!」」



「あっブネ!マジで唇付きそうになってたじゃねぇか!」


「チキンレースみたいになってたねぇ。冷や汗かいたわー。百合ノート恐るべしねー」


「そうだ。間に枕でも挟んでそれでしよう!」


「あ、だったら枕はY君のが良いー」


「ショタコンの変態が」





「…で、弟の枕を挟んでチュッチュした訳だが。

お前の側、口紅と唾液でベッチョベチョやんけ」


「どうしても抑える事が……Y君の匂いで自我を……!」


「どうすんだこの枕。もう弟、お嫁に行けねえぞコレ…」





こうして百合シチュ全集の実践は続き、

弟達が帰ってきた時には既に56ヶ目のシチュに突入していた。


『百合56 殺し愛、愛死合』


「ただーい……マッ!?」


ドアを開けた母は驚愕した。

ドアの先にあった物は見慣れた玄関ではなく、どこまでも続く百合の花の草原だった。


「これは…百合空間!?」

「おいY、なんだその百合空間ってのは!?」


父の疑問にYは答える。

「極度に濃密になった百合に【世界】の自衛作用が働いて別空間を形成するんだ。

しかしこの空間の広さ。凄まじい百合ルギー(※)を感じるよ!」


(※)百合エネルギーの意



ギャイーン!カキィーン!

空中で火花散る!

見れば高速で動く二つの影よ!


「あれは…姉貴とKさん!?」



K。

目は血走り牙を剥き。

肩からは三対の腕が蠢く!

百合へと堕ちた暗黒の百合。

「YURYYYYYYYY!!!!」


R。

左腕は折れたか、ぶらりと垂れ下がるも右手に携えるは百合を切る百合の刀、百合一文字!

「もはや人の言葉も忘れたかK。今…楽にしてやる!」



ゴアアアアア…!

莫大な百合ルギーを凝縮し口から放つK!


「ぐっ…!小賢しいわァ!」

ジュギュン!

百合ビームを切り裂き、Rは必殺の間合いへと踏み込む!


  私、Kっていうの。よろしくー


  だってだってー、ずっとRちゃんと友達になりたいなーって



  Rちゃんのばか。あーあ、Rちゃんが男の子なら良かったのにー




Rの脳裏にKとの思い出が浮かんでいく。


「好きだったよK…。他の誰よりもッ!!」


ズパァーッン!


一閃!


切られたKは吐血!しかし身体は異形の部分だけ割れたように崩れ落ちた。

悪しき百合だけ切り捨てる剣技「百つ合い」

遂にここに完成を見た…!



「あ……Rちゃんだ…おかしいの…なんで泣いてるのー…?」


「K!」


「そんなに抱き締めて…痛いよRちゃん…ふふ…。

なんでかわからないけど…私いま…すごく幸せだなぁー……」



バシュン!

百合空間は消滅し、いつもの家の風景に戻った。




「ふぃー、なんか役に入りきっちまったなー」


「そうだねー。これ結構ハマるねー。あ、次の行こうよ次の!」


「どれどれ、次は『百合57 宇宙百合神に合体ロボで挑む』か。腕がなるぜ」


「なっ!なんでそのノートを!?うわあああ恥ずかしいから返し…パリィーン!ビターンビターン!ぐはぁ!?

なんという百合バリア!今の二人の間に百合を持たぬ者は近づけぬという事か!

くは!くはははは!成る程これぞ百合の真髄ぞ!さあ二人とも!僕に魅せてくれ百合の饗艶をッ!!あははははは!!!」


「行くぞK!」

「ええ、貴女となら宇宙の果てまでもー」




ボロボロな身体だというに百合劇場を始めた彼女たち。

バリアの衝撃で満身創痍になりながらも笑う弟。


それを見て母は呟く。


「…病院に連れて行くべきかしら」


「病院って…どっちの?」とは怖くて訊けない父だった。







どうやら百合につける薬は無いらしい。




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