八月 カブトムシとクワガタとの会話
「ひゃあ〜…樹液がうめえぜ」
「あれ、カブト先輩じゃないッすか!まーた一人で良い樹液ポイント押さえてるっすね」
「ゲェッ、ヒラタクワガタ!?
何しに来やがった帰れ帰れ」
「そりゃないっすよー。どれどれ、ジュルジュル…ぷっはあ!樹液うんめぇっスわー!」
「馴染むなよ!俺は一人静かにメシにしてえの!」
「いーえ、誰かと一緒に食ったほうが美味いですって!
はー…うまっ!あー…うまっ!」
「全く、どうせならこんな野郎同士じゃなく、可愛いメスと食事すりゃ良かったよ」
「またまた〜、まるで相手がいるかのような口振りッすねえ?カブト先輩に彼女とかありえねっすわwww」
「おうおうおう!吐いたツバ飲まんとけよコラ!
じゃあコレ見てみ、俺のケータイ画像」
「ハゥア!?色んなメスカブトムシとのツーショット写メばっかり!?
そんな…ありえない…!ブサカブト先輩がモテてるなんて?!
この娘なんてまだ幼虫じゃないっすかロリコン野郎!」
「ふっふっふ。ま、本気だしゃこんなモンよ」
「一体どんな魔法を使ったんすか…?」
「よくぞ訊いてくれた。実はな、先月、車買ったのよ車」
「えぇー、昭和じゃあるまいし今時クルマでメスが釣れますかね?」
「チッチッチ。アタマ使えよアタマ」
「ガシーン!ガシーッン!」
「それは頭じゃなくて顎な。
いいか、夜になったら車のライト点けんの。それだけでメスとか入れ食いって寸法よ!」
「うっわ、やり方が汚ねえ…。光に群がる虫の習性を利用してからに、あなたって藤木だわ あなたって卑怯だわ シュペリエルな シュペリエルな あなたはクズ野郎っすわー…」
「何とでも言うがいい。勝てば官軍なのさ!
そんで一番可愛い娘を見繕って車内に招くダロ?
集まってた他の奴らはクラクションで蹴散らすダロ?
車内に二人っきりでムーディな雰囲気になるダロ?」
「あばばばば!?!大人の階段を登るゥゥウー!!!」
「そう。それで俺たちは甘い夜を過ごし、致した後に彼女がさ…『あたい、実はカナブンなんだ』という衝撃の告白あびゃびゃびゃびゃびゃががごががが…!?!」
「先輩?先輩!?!」
「…ハッ!いかんいかん、俺としたことがトラウマのフラッシュバックにたじろいでしまった」
「ま、カブト先輩らしいエピソードですね。このカナブンファッカー」
「やめて…!」
「にしても、よく車なんて買えたっすねえ?」
「株だよ株。いい当たり株を引いてウッハウハなわけ。
調子乗って豪遊散財して、目を離した隙に株は大暴落…マジやべえなう」
「勝って兜の緒を締めよ。買って株とのおしめぇよ。お、なんか一句読めそうっすわ」
「いやほんと、マジでヤバいのよ。買った車も中古で安かったのも、来月車検あるからだしよー」
「心配してても始まんないス。もういっそ車は売るか廃車にすればいいっすよ」
「でもなー…、愛着あるしなー」
「なら車検代はクレジットカードで分割とかどうです?」
「いや、というか…、来月まで俺、生きてんのかな…?」
「あぁー……」
おしまい




