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ウザったいお前の愛がウザったいほどウザいよ




「ふぇぇ〜ん、ただいまマイスイートハニー!世知辛い社会の中で、今日も部長に叱られ課長に叱られ部下に叱られながらも君に会いたい一心で残業拒否ってゴーホームナウだよぅ!」


「まあアナタおかえり!お風呂にする?私にする!それとも…

神・羅・万・象・チョ・コ?」


「そうだなー…本音を言えば飯にしたい所だけれど、ここは風呂にしよっかな!

ふふふ、一緒に入るかい?」


「あらごめんなさい。私もう先に入っちゃったの。

ちなみに風呂の栓は抜いたわ。仕事に疲れた貴方に私の残り湯なんて浸からせたら主婦の名折れですもの。

つまり私は神羅万象シリーズではゼクスファクター編が一番好きなのね。

シリーズの中で異彩を放つ異色作だもの!」


「そうかい。なら風呂の湯を入れてる間にご飯にしようか」


「ええそうね。ご飯はまだ作ってないから献立は何がいいかしら?

何か食べたいものはある?

腕によりをかけて作るわ!

だって神羅万象ゼクスファクター編は、今までの世界観を一新して、学園モノとして幕をあけるの!

主人公は復讐に取り付かれた少年という、一癖あるキャラクターがいいわね!」


「やっぱりオムライスかなあ。ほら、この前君が作ってくれた『午前深夜のキッチン』(宣伝)

レシピを参考にして作ってくれた『ケチャップを使わないオムライス』、あれ、お世辞にも美味いとは言えなかったけどまた食べたいな」


「あな嬉しや!そういえば作者はあの時の調理器具や皿を、未だに洗わず流しに放置していて、台所は人外魔境と化しているそうよ。

人外と言えば、もちろん神羅万象よね!ケモナーから青肌、ロボットまでフェチ心をくすぐるカードは最高よ!白面金剛九尾イズナ、紫電のアメジスト、魔王マステリオン、魔将軍アスタロット…素晴らしいキャラクターの数々。

特にイズナやアスタロットはフィギュア化される程の人気ですもの!

だから今晩の夕食はモチロン神羅万象のウェハースで決まりネっ!」


「うん、うん。じゃあ、ちょっと今から銭湯行って、ついでに何か食って帰るよ…」


「え…?」



銭湯に行った旦那を黙って見送った妻は考えた。


一体何がいけなかったのだろうか?


もしかして…!

妻は大変な事に気づいた。

もしかして旦那は、神羅万象よりビックリマンチョコが好きな人種だったのかも知れない!?

ヘッドロココとかヤマト爆神とか魔胎伝ノアとかに心ときめくハートの持ち主なのかも知れない。

だとしたら…、先ほどの一連の言動は、さながら小学生に「セガなんてダッセェよな。やっぱ今はプレステだよな」と言われた湯川専務が如し!直接言ったわけではない。しかし!

『ビックリマンより神羅万象の方がウェハース美味しい』

『神羅万象は萌える』

『イラストでキャラ名を隠すことさえ厭わない清々しさにむしろ惚れた』

そういった普段の私の思考と嗜好を彼に暗に押し付けていたのかも知れない!


なんということだ…。ビックリマンチョコは少年の心の結晶。青春の拠り所。

それを否定された旦那が銭湯へ行ってしまったのも自明の理だ。Q.E.D.

証明終了!


かくなる上は、旦那が帰ってきて何を言われても、今日は「ヘッドロココ」と応えよう。それが、私に出来る唯一無二の贖罪なのだわさ!


そう固く心に決めた妻がいるアパートメントに、遂に旦那が帰ってきた。



「ただいまマイスイートハニー!」


「ヘッドロココ」


「ヘッドロ…えっ?なに?」


「違うの。私…ヘッドロココ。貴方のヘッドロココに気づかずに甘えて、ずっとヘッドロココ。

ばかだよね…今だってヘッドロココ。ヘッド…ヘッドロココ!!」


「んー…、よくわかんないけど、やっぱ勝手に銭湯行ったりして悪かったよ。俺も大人気なかった」


「ヘ…ヘドロコ!?

私が…私の方こそロココヘッドでヘッドロココなのに!

ヘッドロ…ロココすぎるよ…!」


「会話のキャッチボールが出来ない!?

あー、うん。まあ、お土産買ってきたから、これで機嫌直してくれよ」


「これは…神羅万象チョコ!!?やだ…貴方って最高よ!愛してるわ!!」


「やれやれ、やっといつもの君に戻ってくれたね」


「えへへ、心配かけてごめんね。

それで、結局夕食はどうしたのかしら?ウェハースを差し置いてからに、さぞかし良いもの食べて来たんでしょうね」


「もちろん。プロ野球チップスをね!」




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