からこん!
コスメコムスメ株式会社 マーケティング調査部 次長
それが私の肩書きだ。
今日は巷で話題の『カラコン』なるモノを調査しに市街へと繰り出した。
カラコン…カラコン…?
カラコンって何だ?
しまった。私が有能すぎるため、つい、内容も理解せず会社を飛び出してしまった。
全く、我ながら有能すぎるのも考え物ね。有能だからね。仕方ないね。
カラコン、カラコン、カラコーンと一人ぶつぶつ呟けば、「呼んだかい?」と声が掛かる。
私を呼び止めたのは工事現場に立つ赤いカラーコーンだった。
ああ!成る程!カラコンとはカラーコーンの事だったのね!
「ええ、そうですそうです!良ければお話を聞かせてもらってよろしいですか?」
「へっ、俺の話がききたいなんて、変なお嬢ちゃんだ。いいぜ、カラーコーンの何が知りたい?」
「カラーコーンさんの人気の秘密です」
「へっへっへ。俺が人気ねえ。嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。
そうだな、敷いて言えば普通って事だろな」
「普通…ですか?」
「そうだ。どこに行っても似たようなカラーコーンがある。それがどういう意味かわかるかい?」
「ははは、それが分かればこうして調査なんてしませんわ」
「おっとそりゃ失礼。まあ、例えるならカレーだな。
どこの店にも大体あるし、時々無性に食べたくなる。そんなカレーとカラーコーン。似てるダロ?」
「つまりカレー イコール カラーコーンという訳ですかね?」
「待て待て、流石の俺もそんな主張をするつもりは無え。
あんたはお店でカレー食べる時、どんな感想を持つ?」
「そうですね。美味しいけど、やっぱり母ちゃんが作ってくれるカレーが一番だなあって、そう思いますね」
「だろ?手の混んだ店カレーより、素朴で普通な母ちゃんカレーの方が良いに決まっている。
普通のカレー、普通のカラーコーン。
つまり俺はカレー!それ即ちカレーコーン!!」
「は?カレーとカラーコーンとか、結びつかないでしょ?何言ってんですか?馬鹿なんですか?」
「急に素に戻るなや。やり辛いなあ。
ええい、なら論より証拠だ!おいボウズ!」
カラーコーンは交通整理の人に指示を出すと、彼は手慣れた様子で電話を掛けた。
「すぐ来るそうっス!」
「わかった。いつもわりいな」
「いえ!カラーコーン先輩の頼みなら喜んでやりますよ!!」
交通整理の人とカラーコーンの掛け合いを眺めていれば、チャリンチャリンと出前の自転車がやってきた。
「お待たせー。カラーコーンちゃん、いつものやつね!」
「応、いっちょ頼むわ!」
交通整理の人がカラーコーンを逆さに持つと、そこに出前の人がカレーを注ぎ入れた。
「これがカレーコーンだ。さあ、食ってみろ嬢ちゃん」
「いいですよ。ふん、こんなカラーコーンにカレーを注いだだけの物が美味しいはずが……パクぅー!
ハゥアァー!?うう、うんっめえええー!!!」
「うむ、このカレーを出している『おばちゃん食堂 羅刹陣』のカレーは一級品だ。
特別な事はしていない、普通のカレー。だからこそ、美味い!」
「ふう、はふはふ…!これ、ジャガイモが入ってますね!
店カレーでこんなにゴロッとジャガイモがあるのは中々見ないですよ!
ジャガイモによって辛さがマイルドになり、何よカレー全体の保温効果も抜群!出前で時間がたっても、こうして熱々で食べられる!」
「その通り!目の付け所がいいじゃねえか!」
「有能ですから」
会社に戻り、部長が私の報告書に目を通していた。
「なになに?おばちゃん食堂羅刹陣のカレーは、ジャガイモがゴロっと入っていて美味しい。マジオススメ。
★★★★☆
…ふざけてるのか?」
「いいえ、ここに羅刹陣のカレーを持ち帰りしてます。
これを食べれば部長も分かっていただけるかと」
「ふん、どれどれ…パクぅー!はうあっ!?う、、うんめえええー!!!
そ、そうかわかったぞ!
つまり、従来のカラコン人気色のブラウンやグレー。
それをもっと濃いめ、カレーのような配色にして個性をアピール!
☆や★のマークを入れることで中高生を視野に入れたマーケティングが出来る!
ジャガイモはよく分からん!
うん、イケる!これはイケるぞ!すぐに商品開発部に連絡しよう!
流石だよ君ィ!」
「え…?あ、ああ。はい!有能ですから!」
完




