おっぱい
今作の登場人物紹介
・山井トウジ (♂)
高校二年。運動部所属
・白塗アツキ (♂)
トウジの友人。トウジと同じ運動部所属
・芦川マナ (♀)
トウジとは幼馴染。帰宅部
トウジとアツキ、二人が部活帰りに一緒に下校している所から、この物語は始まる。
「あー、今日も疲れたー…!」
疲れたと言ったトウジだが、そこそこな大声だったので、どうやら体力はまだ有り余っていそうだ。
「そうだな」
アツキは先ほどからずっとこの調子だ。
トウジが話し掛けてもどこか上の空で返事をしている。
いい加減、しびれを切らしたトウジがそこを突いてきた。
「さっきから何なん?言いたいことでもあんのか」
「……芦川さん。今日も休みだったな」
「マナか。もう一週間も休んでるし風邪が長引いてんのかな」
芦川マナの欠席を病欠と思い込んでいる。あまりに短絡。それがトウジのいい所でもあるのだが、
この時はただただ勘が悪いとしか言えない。
「本気で言ってるのか?トウジ、お前が先週芦川さんに何て言ったか憶えてるだろ?」
「うん?確か、つい『貧乳』って言っちまったけど、まさかそれで学校休む事か?」
それほどの事だ。
想いを寄せる男から、そんな言葉を言われて傷付かない女はいないだろう。
トウジとて、マナを好ましく思っている。
天然と奥手、全く見ていてもどかしいと常々アツキは思っていた。
「当たり前だろ。お前、帰りに芦川さん家に行って謝ってこい。多分それが一番いい」
「そうか?まあ、アツキがそう言うならそうなんだろうな。よし、帰りにアイツの家に寄ってみるわ」
「その必要はないわ!!」
ババァーッン!!
二人の男子校生の前に現れたのは、あの芦川マナその人だ。
「マナ!?お前一週間も休んで、心配してたんだぞ?」
「黙らっしゃい!!トウジ!私を貧乳呼ばわりしたこと、後悔させてあげるわ!」
キッ、とトウジを睨むマナ。
やはり『貧乳』を気にしていたのだ。
「芦川さん、トウジのバカも謝りたいって言ってたし、許してやってくれよ」
「許す?それは違うわアツキ君。
確かに一週間前の私は貧乳だった。それをなじったトウジに対するこれは…復讐よ!!」
はて、マナの発言には一つ腑に落ちない所があった。
「まるで今は貧乳じゃないと言いたげだな?」
しかし、どう見ても今のマナの胸はあの日のままだ。
「胸を見たままでしか判断できない。これだから男子ってサイテーなのよ!
私は手に入れた!一週間の山籠りを経て、『巨乳の心』をッ!!」
ぴょっん。
マナは小さく飛んだ。
意味のわからない行動に、トウジとアツキは困惑した。
ぴょん、ぴょん、ぴょん。
尚も飛び続けるマナ。
「おい?さっきから何してんだ?いい加減にし…」
非難の声を上げたその時、
…ピッ!
トウジの頬に切り傷が生じた!
「トウジ!?」
すかさずアツキはトウジの前に立ち盾となる!
「う…ぐぐぐ!?」
ピッ!ヒピッ!プシュッ!
無数の見えない空気の刃がアツキを襲い、みるみる生傷が増えていく。
ぴょん。
それは
ぴょん。
マナが飛ぶ度に
ぴょん。
傷が増えてゆく
「ぐぅ…、まさかこれは…『乳揺れ』!?」
「ふふふ、ご名答よアツキ君」
「馬鹿な!?乳揺れはDランク以上の持ち主のみに許された神技!貧乳のマナに扱えるわけが無い!」
「待てトウジ。事実、乳揺れは起こっている。
認めるべきだ。彼女は巨乳であると!」
そう。マナの小さき胸には、巨乳のチカラが並々と宿っていた!
それはさながら巨大な星が自らの重力で小さく小さくなったが如し。
そんなポテンシャルを感じる貧乳だった。
「……いいや認めねえ!こうなったら、揉んで本当に巨乳かどうか確かめてやる!!」
「アハハハハ!なんて堂々としたセクハラ発言かしら!
いいわ、でも、この乳揺れの中たどり着けたらの話だけどね!」
以前の彼女ならトウジの破廉恥な発言に赤面してしまっていただろう。
巨乳の心は、彼女の内面もおっきくしてしまったのだ。
「トウジ…この刃飛び交う中で彼女の元まで行くのは至難だ。
俺が盾になる!だからお前が芦川さんのちっぱいを揉むんだ!」
「だがそれじゃあお前の身体が!?」
「男が一度揉むと言ったんだろ!俺のことなんて気にしている場合か馬鹿野郎!」
「すまねぇ、恩に着る…!」
こうして一歩、また一歩とマナに近づく二人。
対するマナは余裕の表情。
そして遂にマナの前にたどり着く。アツキの影から手を伸ばし、トウジの手がマナの胸に触れるその瞬間…!
パキィィ…ィ…ン!!
薄い障壁がトウジの腕を弾く!
その勢いや凄まじく、彼の腕は逆に折れ曲がった!
「ぐががががあ!!?!」
「童貞が不用意に聖域に手を伸ばすからそうなるの。
この障壁はOPフィールド。あらゆる干渉を拒絶するのよ!」
OPフィールドは下着の壁。残酷な天使のブラ。新世紀エランジェリーオン。
「大丈夫かトウジ!!?」
「右腕が千切れかけてるだけだ!問題ねぇ!それより問題はOPフィールドだ」
「OPフィールドを破るには、イケメンが片手を用いて、背後にあるという『ブラホック』を外す必要があると言うが…」
「残念ながらこの乳揺れの中で背後に周るのはまず無理だ。両手でさえ自信がないのに、利き腕の右が潰れた今、左でブラホックを外すのも厳しいな…」
「いやナチュラルに第一前提除外してっけど、イケメンの時点で俺ら無理だからね?」
「くっくっくっ、万策尽きたようね。悔しければ大人になった時に、自分の給料でしかるべきお店で腕を磨きなさい!」
「そうはいかないよ芦川さん。憶えておくといい、童貞ってのは…せっかちなんだよォォオ!!!」
「アツキ!?」
ビリビリビリーィ!?
「なっ!?そんな…OPフィールドを破り千切ったですってぇー!!」
※良い子はマネしちゃいけません。
OPフィールド破壊の反動衝撃がアツキを襲う!!
ズババボバババァァアー!!
ズブシャアアアアー!!
もはや声すら上げる暇もなく、アツキは自らの血の海に沈んだ!
「アツキィィー!!?」
「ぐぽぉっ…!ば、馬鹿野郎!…OPフィールドが無い今が…チャンスなんだ…!行け!掴むんだトウジ………ガクーッ!」
「お前の漢気、無駄にしねえ!!うおおおおおー!!!」
トウジの左手が聖域へと伸びる!
「おのれ!おのれおのれェー!!貴様は!そこまでして私を貧乳へと貶めたいのかアアアアアー!!!」
「違うね!貧乳だろうが巨乳だろうが関係ねぇ!
今の俺はただ、好きなオンナのオッパイを揉みたい!!それだけだッッ!」
「っっ!!?」
むにゅ
そして、季節は廻り。
卒業式が終わった。
桜の木の下で卒業証書を抱えたマナの姿は、誰が見てもわかる巨乳だった。
「卒業おめでとさん」
声を掛けたのはアツキだ。
「アツキ君もね」
「あれからもう一年か。早いな」
「………」
「最後に…トウジと話させてもらっていいか?」
「……うん」
アツキは手を伸ばす。
むにゅ
「よお、久しぶりだなトウジ」
(お前も相変わらずそうで安心したぜ)
むにょ 「…んっ!」
「まさか一年前、揉まれて暴走した巨乳の心がトウジを取り込むなんてな…」
(俺が吸収されたお陰でマナは巨乳になれたからな。慣れたらおっぱいライフも楽しいもんだぜ?)
もみっもみー 「ひゃ…ぁんっ!」
「男の夢だぜ全く、羨ましい限りだ。じゃあな」
(もう、行っちまうのか?)
もっにゅ もみ 「ふぁ…ら、らめ…ぇ!」
「あんまり話し込むと芦川さんが困るだろ。まあ、達者でな」
(ああ、さよならだ)
「好きだったぜ。お前のこと」
そう言い残し、アツキは去った。
桜の木の下で、マナは一人残された。
いや、一人ではない。こうして触れるだけで、この胸にはいつだって彼がいるのだ。
(へっ、まさかアツキの奴もマナが好きだったなんてな)
コリコリ 「全くトウジったら、ふぅー、ふぅ…アツキ君が好きだったのは…いえ、私が言うのは無粋よね……んくぁっ!」
桜が舞い散る。
三人の青春のように、痛みを伴い、ひらひらと、儚く、美しく。
この物語の終わりに、
場違いであると充分に自覚しているが、
それでも、作者である私が一言添えて締めさせていただく勝手を、どうか許して貰いたい。
それは
『どーでもいいからおっぱい揉みたい』
完




