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クロディナル戦記




よっしゃああああー!!!

ラーメンだー!ラーメンを食うぞぉーぉう!!


何ラーメンだあああー?

何ラーメンにするんだ俺ェ?!


メニュー見てからキメればよろしゅうござんすよ!!

そうと決まればレッツラーメン屋!


入るぜー!右足から入るぜー!

と見せかけて左足から入るぜィエィエイエイエイエイェェーッイ!!


「らっっしゃせぇー!!」


応!らっしゃったぜ店長!さあメニューを寄越せ!!今すぐ寄越せハリハリハリハリィィイー!!!


「うす!メニューっす!どぞ!」


ほほうどれどれ!うーーん悩みに悩んだ結果決めたわ!殊更に決めたわ!俄然決めたったっわ!


HEY店長!お前のオススメ教えてクレヨン!!


「味噌ラーメンがお勧めっしゃーっす!」


味噌ラーメン?うるせえ黙れ!俺はメニューに乗ってない冷やし中華を所望するっちょ!



「お待たぁーしゃしゃーししゃーっ!」


ドン!冷やし中華が現れた!


俺は…食べる!俺イズ冷やしチャイナヌードルをイートする!


ズル…ズルズル…!ズズズズズ…!


食べて気付いた。ああ、この冷やし中華、冷えてねぇ……なんかもう、ぬるい。


ぬるい麺、ぬるいスープ、ぬるいトマト、ぬるいハム、ぬるいコアラのマーチ、ぬるいキュウリ、ぬるい玉子。


馬鹿な……バキャな!?

冷やし中華なんてキンキンに冷えてて然るべきものだろ!!

それは水が上から下に流れるように、太陽が東から昇るように、やまない雨はないように、美人メイドが朝フ○ラしてくれるように、冷やし中華が冷えている事は当たり前な筈だ!


あああああああああ裏切られた!!裏切られたよママン!信じてたのに!

悔しいよ!これじゃあまるで悔し中華アルよー!!


俺は泣いた。号泣した。

でも冷やし中華は全部食べた。食べ物を粗末にするなとママンに育てられたからだ。

さあ店長!オアイソだぁ!だぁ!だぁ!


「六万円です。払えないなら臓物をば撒き散らして死ねぇい」


あははははは!これは笑わせる!!ニンゲン風情がぁ〜!ようもあのような冷やし中華に六万もの値を付けよったな!?

許さんッッ!


許さん。が、食い逃げはダメぴょん とママンに育てられた俺は、カードを取り出した!!


\クレジットカード/


それは、何でも買えちゃう魔法のカード!余談だが作者のクレジットカードは悪い人の口車に乗せられた挙句に焦げ付いてしまった過去がある!!

借金ってのは本当に辛いから皆も御利用は計画的になっ!


「毎度あざざーっしたーっ!!」


ドアをガラガラピッシャァーンして俺は店を出た!

右足から?左足から?

ククク、馬鹿め両足でだ!!



「どうでしたか?」


ラーメン屋から出た俺に話しかける女がいた。


女は、美人だがその目付きの悪さが魅力を損なわせていて、黒く長い髪をポニーテールで纏め、

ノースリーブのタートルニットから覗く肩が健康的だ。

そしてその手には、身の丈ほどもあろう巨大なドリルが装備されていた!


町兼 智子…!!


それは、ギリヤ博士の生み出した改造人間。俺の幼馴染だった女だ…。









【解説】 虫上あかり


まずは本書、クロディナル戦記26巻「スマッシュマッシュルームルーム」を読んで頂けたこと、

あとがきを好まない作者の代理として、また、同じ作品のファンとしてありがとうございましたと述べさせてもらいます。


さて、私がこの、宇宙と集団的無意識をテーマに据えた叙述詩でもあるクロディナル戦記を初めて読んだのは、まだ中学生の頃でした。


その時の衝撃たるや「なんだコレ!?なんやコレ!?」と、ただただひたすらに驚きました。


伏線につぐ伏線。キャラクター同士の因縁に小気味よい会話の掛け合い。

それは巻を重ねる毎に綿密に洗練されてゆき、


今でも、塵芥川賞を受賞しいい気になってるこの虫上あかりの鼻をベッキリ折りに来ています。


今作スマッシュマッシュルームルームは特に、序盤から張り巡らされた伏線がひとつに収束していく興奮は尋常ではありません。

普通の作家なら匙を投げるほどに複雑怪奇なストーリー、

それを冷やし中華に例えることで簡潔に、わかりやすく纏めた手腕は流石の一言。


まずラーメン屋に右足か左足どちらから入るか葛藤し左足を選ぶシーン。


第3巻「トリップトラップトランシュータ」でギリヤ博士の改造手術を受けるかどうか悩んでいた場面を彷彿とさせます。

そして今作ラストでは両足、つまり第三の選択肢を提示!

前巻で戦奴グニャルキャナンが言った「我には明日などない。過去を夢見るのだ。だから明後日に賭ける!」というセリフが楔となっていて、実に上手いです。


次に、冷やし中華の六万円という値段。

これは、クロディナル戦記ファンには常識でありましょう。

そう、六万円とは惑星ユツクリツクにおける『命の値段』


その六万円で魔凶者(タナトスダーク)へと身をやつした主人公に対するラーメン屋店主の痛烈な批判です。


このラーメン屋店主、冷やし中華にコアラのマーチをいれていたので間違いなく正体は、

11巻「バインドバンドバインバイーン」の勇者ヌリアルマその人でしょう。


主人公はヌリアルマの批判を冷やし中華と共に飲み干し、それでも歩き続ける。今までの流されるままと違う、明確な意思を感じました。


そして…遂に出て来ましたね。町兼智子!


主人公と智子の愛と憎しみの螺旋。地球とクオリア。魔法とドリル。エーテルとメーテル。

これはまだまだ物語から目が離せません!



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