魔法少女テトラミノコン
「うわわわっ!遅刻遅刻〜!」
わたし、佐藤トカミ。小学五年生の女の子。
「全く、昨日夜更かししたのがいけないんだろ」
この子は精霊獣マルイ。魔法少女をサポートする不思議な動物なの。
そう、つまり実はわたし…魔法少女なんです!
マルイの変身の杖で、わたしは魔法少女テトラミノコンへと変身できるの。
テトラミノコンになったわたしは、大人の出来るオンナになって魔法で悪いヤツをやっつけちゃうのよ!
「はぁーっはっはっは!」
この声は!?怠惰の悪魔王ダリース!
「さーって、今日も仕事に行きたくないサラリーマン共をそそのかし、
会社をサボらせて一日中一緒に海でも眺めてやるぜー!」
「待ちなさーい!」
「ぬぅ!貴様はトカミ…いや、魔法少女テトラミノコン!」
「ええそうよ!わたしが来たからにはもう悪いことはさせないよ!
さあマルイ。変身の杖を!」
そして今日もサクッとダリースをやっつけて、世界平和に貢献!
でもこれで遅刻確定だよ〜…
「あーあ。じゃあマルイ、変身解除するから杖貸して」
「すまないトカミ。変身の杖はもう無いんだ…」
「えっ!?どうして…まさか無くしたとか?」
「いいや違う。君が戦っている間に売ったんだ。
遊ぶ金が欲しかったんだ!」
「そんな…!?」
こうして、変身の杖が無いせいで、元の小学生の姿に戻れないまま半年が経ちました…。
ある夜の繁華街のあるホテルにて
「今日も指名ありがとうございますダリースさん…」
「…………」
「私、まだこの仕事全然馴れなくて、ダリースさんがいてくれて、その、助かります」
「別に、馴れる必要は無いだろ…!」
「あはは、でも、いつも店長に怒られてばっかりで…こんなんじゃ駄目ですね」
「テトラミノコン。君は本当はまだ小学生だ。
こんなお店で働くほうがおかしいんだよ」
「そうですよね。マルイが戸籍を捏造してくれて良かったです。
じゃないと働いて稼ぐなんて出来ませんから…」
「くっ……!それで、変身の杖を買い戻す金、少しは溜まったのかい?」
「………マルイに渡したら、いつもお酒かギャンブルで消えてしまうんです」
「君は…!君はいつまであのクズを信じているつもりだ!!?」
「だって、私が信じてあげなきゃ、マルイひとりぼっちになっちゃうもの…」
「全く理解に苦しむね!
この際だ。もう親御さんに頼るべきかもしれないよ?」
「で、でも、トカミは今、ダリースさんに誘拐されてるって事になってますし」
「ちっ、そういやそうだったな。
おかげさまで全国指名手配さ!ふん!
こうでもしなきゃ元に戻った時に困ると思ったんだが、気付けば立派な犯罪者か。俺もヤキが回ったもんだ。
いいかテトラミノコン、いや、トカミよ。
お前が助けてと言わないと、誰もお前を助けらんねえんだぞ!」
「わかっては…いるんです。
でも、でも、お金が溜まったら、私は小学生に戻らないといけない…!
ダリースさんと敵同士になってまた戦わなきゃいけない…!!」
「トカミ…君はまさか…」
「今がいいんです。抱いてもらえなくても、こうしてダリースさんとお話できるだけで、私はもう充分幸せなんです…」
「歪んでいるよ…」
『その歪み!我輩が正しく是正してくれるッ!!』
「誰!?」「誰だ出て来い!」
『捻れ歪んだ人生を、一本真っ直ぐ立て直す!
誰が呼んだかマッスグン!!』
バァーッッン!!
「はぅあ!?行き詰まった人間の前に、一筋の光明が如く現れて導くというあの…!
伝説のマッスグンさんですってー!?」
「やべぇ…なんて魔力だ…足の震えがノンストップだぜトゥナイト…!」
『我輩が来たからにはもう安心だー!うおおおおー!マッスグンパワー全開ぃぃいいいい!!!』
パアアアアアアアア!!
マッスグンは眩い光を放ちながら現金を取り出した!
『ここに五十万円ある。これで杖を買い戻すんだ!』
「で、でも子供に戻ったらダリースさんとこうして話せなくなるんです!」
『あと百万円積もう!これでその男に対する淡い想いを忘れるんだ!!』
「イエッサー!!!」
「即答?!」
『そしてダリースよ。貴様のトカミ誘拐の嘘は、
警察の偉い人に山吹色のお菓子を渡した事で解決した!』
「それは有難いが、後で請求されても払えるかどうか…」
『その点は抜かりはない!今回の費用を捻出するため、妖精獣マルイを強制地下労働施設にぶち込んだ!
奴はもう生きて太陽の光を浴びる事はないだろう!』
「ありがとう!!」
「ありがとうマッスグーン!!」
『HAHAHAHAHA!
大抵の問題はカネで何とでもなるのさ!
ではサラバだ!!』
シュバッ!!
こうしてマッスグンは去った。
歪みを許さぬ、どこまでも真っ直ぐなヒーロー、マッスグン。
この世にカネがある限り、彼は戦い続けるだろう!!
完




