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ジュテームジュテームポイズンタンゴファンファーレ





  たとえば君の 柔い魂のあと半年の命として


  それでも尚 立ち止まる事は知らぬと見る


  たたぁん たたぁん


  理住軽(リズミカル)な音色が しんしんと


  ああ まるでタンゴを踊つているやうに


  たたぁん たたぁん


  さあさ 踊れ踊れ


  毒に苛まれ もがくやうに


  踊れ 踊れ たたぁん たたぁん


  祝音の笛が鳴り響く中で









老婆がひとり、横断歩道で困っているように見えました。


忙しい毎日なら放って置くのだが、僕は休日で、ちょうど気分が優れていた。

心に余裕さえあれば、手を差し伸べるのは容易い。実に容易いよ。


「もし、お婆さん。重そうな荷物でしょう。お持ちしますとも」


「あらあらまあまあ、これはこれは、なんと有難いことでしょう。かような荷物では横断歩道を渡りきれんと悩んでおった所です。

貴方のような若者がいて助かりました」


「いえいえ、困った時はお互い様でしょう。どうぞ遠慮なさらないで」


「それではお言葉に甘えます」


僕は老婆から荷をひと袋受け渡された。



ズッシィィー…!


「っ!?なにコレ超重い!!」


「ひと袋25kgありますぞよ。ぷぷぷ、やはり今時の若造には言葉通り荷が重いと見た!」


「ぜっっんぜん余裕!は?何言ってんのババアこんなん片手でも楽勝レベルだしょ!」


「あな嬉し!そんなお前さんには特別にもうひと袋ドン!」


ズシッシィーン…!!


「おぐぉおぉぉー…!くっそー!負けるかああああああ!!」


僕は気合で横断歩道を渡り切った!


「はぁ…はぁ…重たかったぁー…。一体何が入ってんだよこの袋は」


「へっへっへ、そりゃあね。ハッピーターンの粉じゃ。

これひとつまみで莫大な富をもたらすんじゃてのぅ」


ハッピーターンの粉は未だ合法といえ、僕は売人の片棒を担がされてしまったのだ。


「なんてことだ…」


「そう落ち込まれてはワシも悲しい。どれ、この毒入り団子でも食べて元気を出しんしゃい」


「へえ、これは見るからに毒々しい毒団子じゃないか。

こんな上等そうな毒入り団子を頂いていいんですか?」


「ほんのお礼じゃ。なぁにひとくち食べれば血を吐き余命が半年になる程度の毒団子じゃから、安心して食べられぃ」


「では頂戴しよう。パク!ううーんコレは見た目だけじゃなくて味まで毒で美味しいや!」


「ほっほっほ。喜んでくれて何よりじゃ」


「ああ、やはり人助けしたら良いことがあるんだな」


「そうかえ、そうかえ。

………ところで、身体の調子は如何か?」


「どういうことだ?」


「ふっくくく!あーっひゃひゃひゃ!この婆やがハッピーターンの粉の秘密を知った者を生かしておくと思うてか!?

しからば教えてしんぜよう!貴様が食べた毒入り団子、あれには毒が入っておったのだよ!!」


「へー、そうかい。あの毒入り団子に毒ねえ。

あっはっはっ。お婆さん、僕がそれに気付かないとでも?」


「なん…じゃて…?」


「はははははは!種明かしをしようか!

毒入り団子に毒が入ってるなんて、実は最初から気付いてたのさ!

だから僕は毒団子を食べるフリをして…毒団子を食べたのさ吐血グパァァアアアアアーッ!!?!」


「うおおおおーォイ!??」





不覚にも毒団子を食べた僕は、余命半年になった。


あと半年になった命。

残された時間で何が出来るだろうか?


そんなの決まっている!



船を…!


船を作る他あるまいよッッ!!!




その日から僕は船大工になった。

何から何まで初体験でわからない事だらけだ。

そもそも何で船を作りたいとか言い出した事すら我ながらわからん。


だが、男が一度覚悟を決めて船を作ると言ったんだ!もう引き返せねェんだよ!!



そして時は流れ…




「船完成ぃー!!よっしゃー何とか余命一月前に出来上がったぞー」


そこに現れたるは、いつぞやの老婆が!


「ほっほっほ。まさか本当に船を作るとはの。

どれ、この船ワシが買い取ろう」


「へっ、どうせアンタの所為であと一月の命だ。金なんて要らねえ、タダでやるよ」


「まあそう言うでない。確かにあの毒入り団子は半年で命を奪う。じゃが、助かる方法があると言ったら?」


「あるのか!?」


「無論。その解毒方法まことに難解よ。

それは地球の裏側に存在する。

地球の中心にある内部小型太陽に照らされ、遠心力によりコチラとは真逆の重力が発生する地底にありし、もうひとつの地上。

そこにあるオリジナルハッピーターンの粉を舐めれば、

あらゆる毒は解毒され、どんな夢も叶い、生きることの苦しみさえ消えるというよ遥かな世界愛の国裏地球ゼイセーッイワッズィンィイーッンディア!!!」


「そう聞いたらもう行くしかねぇ!道案内は頼むぜ!」


「ワシがオーナー、若造が船長とは悪くないのう!いざ出港じゃあ!」


「出発進行!!!」


 たたぁん たたぁん


船が海水を取り込み、電気分解を経て四台元素へと変換しエレメンタルの結晶化。

結晶が動力炉へと入り、それを燃焼させる自慢のエーテル推進エンジンが始動する!!

エーテル推進エンジン。燃料は海水、排出するは光の粒子、環境にも地球にも優しいスーパーモダンテクノロジーだ!!


 ファァアアアアアン!!


さながらファンファーレのような勇ましいエンジン音が木霊して船は今、空へと飛び立った!!



誰も見たことない冒険が、ここから始まる…!!!






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