最終決戦
「う…!ここは…?」
ママカリ王国第一王位継承者、タイギー王子は見知らぬ場所で目を覚ました。
「ほう、やっと起きたか。深夜2時になる前に、そろそろ起こそうと思っていたところだ。これは丁度いい」
王子に話しかけた女。女性にしては170㎝近くあろうか長身で、
漆黒の衣を身に付け、脚には男であれば誰もが練乳を塗りたくりたくなるであろう、素晴らしい美脚黒パンストである。
そして、額には禍々しい角が二本…間違いない。
「北の魔王…テゴォセー…!」
「おや、さすがはタイギー王子だ。我の名を知っているとは感心だ」
魔王テゴォセー。
北の大陸にある魔人の国ヒルズェンコーゲン。その魔人達を統べるボッケー教帝は、ヒルズェンコーゲンの民すらボッケー凶帝と呼ぶ怖ろしい王だという。
そんな凶帝が召喚した規格外のバケモノこそ、この魔王テゴォセーだ。
テゴォセーは、この中央国ママカリを侵略せんと軍を率い、国境付近で小競り合いを繰り返していたはずだ。
「僕を誘拐したか。しかし、チバケル王属大敬軍が黙ってはいないぞ!」
「チバケル王属大敬軍?ああ、王族直轄の主力大隊か。
ふふ、来ないよ。軍を動かせば君の命は無いと通達している」
「何が目的だ…?」
テゴォセーは僕の問いかけが気に入ったのか、形のいい唇を舐めながら答える。
「うふふふ、ゲームよゲーム。
小競り合いも何だか飽きちゃったから娯楽をね。
『貴国の王子を預かった。助けたくば貴国で一番の戦士一人を選び、その者に試練を与える。
見事クリア出来たなら王子は無傷で帰そう。だが、そうでなければ王子には「しっぺ」「デコピン」「馬場チョップ」が待っている』ってね」
まるで劇役者のように恍惚とした表情で、高々と腕を広げるテゴォセー。
それに伴い魔王の胸が揺れた。(揉みたい)
「なるほどね。でもそれは失敗だったね。
僕の国で一番の戦士といえば近衛隊長ヤッチーモだ。
ヤッチーモならどんな試練でも簡単にこなしてしまうだろうよ」
ヤッチーモ。
若くしてタイギー王子の身辺警護を任されている才女だ。
剣の腕も魔法も学術も美貌も、国で右に出るもの無しと謳われる程で、二人きりの時など、タイギー王子はヤッチーモ姉さんと親しみを込めて呼んでいた。おねショタっていいよね…!
「ふふふふふ…確かに参加したのはヤッチーモという女だったね。
さて、試練の内容を聞いてもまだ、その自信は保てるかしら王子?」
「言ってみろ。どんな困難だろうとヤッチーモ姉さんは飄々と乗り越えてみせるだろう」
「ならば絶望するがいい…!
試練とは、制限時間内にこちらが指定した場所まで車で来ることさ!」
「な、なんだとッッ!!?そんな……ヤッチーモ姉さんは18歳の頃に免許とってからここ六年、一度も運転したことない筋金入りのペーパードライバーだぞ!?」
「あーっははははは!しかも車はミッション車」
「悪魔かお前ッ!?」
「更に更に!試練の開始場所は夜の住宅街!
カーナビも土地勘もない小娘が、どこまで頑張れるだろうなァァアー???」
「この外道がああああああああ!!!!」
怒りのあまり、思わず魔王の胸を揉…胸ぐらを掴む!
「ふっふふふ。強引な男も嫌いじゃないがね。
そろそろ制限時間だ。指定場所はこの魔王城」
魔王城。
テゴォセーが国境付近に建てた闇の城。
その禍々しさは、ボッケー凶帝すら畏怖すると言われた闇の城…。
「…の裏にあるコンビニの駐車場」
「馬鹿な!?城のスグ近くにコンビニとか利便性抜群じゃないか!!」
正直羨ましい。無事に国に戻れたら、ママカリ城の近くにコンビニ作るよう父王に進言してみようと思った。
しかして、コンビニ駐車場に着いた王子と魔王。
そこに呼びかける声ひとつ!
「王子!ご無事でしたかタイギー王子!!」
王子を抱き締める麗しい才女。
その細く白い腕も、一度剣を握れば比類なき力を発揮すると王子は知っている。
「ヤッチーモ!?良かった!やっぱりヤッチーモ姉さんは凄いや!」
「ほほう、まさかこの試練をクリアしてみせるとはの!ははは!愉快じゃのう!
我は気分がいい。約束通り王子は返そう」
「王子が誘拐されて国中大騒ぎだったのに、本当にただの暇潰しだったんですね…」
「ヤッチーモとか言ったな。それにしても、よくここまで来れものだ」
「ええ、あちらの親切な方がここまで案内してくれたのです!」
人に訊く…!まさにその手があったかといった次第だ。
その親切な方という男が此方にやって来る。
オールバックの髪型、夜中というにサングラス。
高級そうなスーツには金のバッチ、中シャツは派手な柄色。
手にはジャラジャラと指輪が闇夜に光る。
「ヤッチーモ、これが親切な方…?」
「えっ、我もまだこの世界に慣れてる訳ではないが、親切…?な方…?」
どうみてもカタギじゃなかった。
どうみてもカタギじゃない親切な方が口を開いた。
「おう、ネーチャン。言うことあるやろが?」
「あっ、そうですね。…魔王テゴォセー!!」
「は、はい。なんでしょうか…?」
なんで敬語になった?
「私は貴様に謝らねばならない!何故なら私は、此度の試練の車をぶつけてしまったからだ!!」
「え…、え!?」
急ぎ試練に用いられたであろう車を凝視する魔王!
あっ、これはベッコリいってますね。
「うわ…うわああああああああああ我のフェラーリがあああああああ!!?!?」
「マイカーかよ!?」
「当たり前だバッカお前バッカ!ばかぁ!これ一台で家建つんぞバカ!バカバカー!!」
「えへへ、ごめんなさい」
ペロッと舌を出して謝るヤッチーモ姉さんかわいい。
「許さん!許さんぞぉー!我の全魔力に誓って貴様に弁償させてやるぅぅうう!!!」
テゴォセーの闇のオーラが一段と濃くなり、すわ臨戦状態と思いきや、
「おう待ちぃや。その前にネーチャン、まだ言わなあかんことあるやろ?」
「ああ、そうでした!魔王テゴォセーよ!実は私はただぶつけただけではない!
実はここにいる親切な方の車にぶつけてしまったのだ!」
ヤッチーモの視線をたどれば、親切な方の車はすぐ分かった。
「うわあ…高そうなベンツがベッコリいってるぅー…」
「普段温厚なワシも流石にブチ切れてのぉ、
このネーチャンに事情聞いたら、なんでも運転に慣れちょらんネーチャンに無理やり運転させとる言うやんけ。
それはアカンでぇ!じゃけぇこの車の弁償はそこのアンタに払って貰うけぇの!!」
「っっっざけるな!!ただのニンゲン風情が我にナメた口をききよってからに!」
「ただの人間…?おんどりゃーコレ見ても同じこと言えるんか?おん?」
親切な方は凹んだベンツのトランクを無理矢理こじ開け、中からゴルフクラブを取り出した!
「ヤッチーモ姉さん…あのゴルフクラブはまさか!?」
「ええ…。間違いない。あのゴルフクラブは勇者しか扱えない伝説の聖剣 DKTTT!?」
「勇者メガス。それがワシの名前じゃボケぇ!オメーの顔もこの車みてぇにしちゃんぞオイ!!」
「上等じゃい!我が勝ったらフェラーリの修理代払って貰うからな!」
「そんならワシが勝ったらベンツの修理代払えーよオラァァアー!!」
「「うおおおおおおお!!!」」
カッッ!!!!
こうして、世界の命運とは一ミリも関係ない
勇者と魔王の最終決戦が幕を開けたのでした
「王子。今のような事にならぬよう、免許をとったら車の保険はキチンと入っておいて下さいね」
「うん、自動車保険は自分も相手も守る大切な物なんだね!
しかも、ナロー損保の自動車保険なら、自分のカーライフに合ったメニューで保険が組めるからお得!
万が一の事故でも24時間体制でオペレーターが電話応対してくれるから安心だ!
お客様満足度が五年連続ナンバーワンなのも頷けるよ!」
「例えば!ドラゴンに車を踏まれた場合、なんと全額補償!
やっぱり自動車保険はナロー損保ですねっ!」
今ならネット申し込みで7600円もお得に!
保険を決めるならナロー
!
貴方のカーライフを見つめる、貴方の自動車保険。ナロー損保を是非ご利用ください!
完