春の便りは何処から…(1)
大変遅れて申し訳ありません。
四方八方を山に囲まれた村がある。その中心に佇む時計塔は静かに針を刻みやがて午前8時を知らせる鐘を鳴らした。
何千年も生きてきたように見える大きな山桜の花弁を風が一枚運び、ある一軒家に窓から入り込んだ。そしてゆっくりと白銀に光る雄狼の綺麗な毛波の上に舞い降りた。 それを見た少女は淹れたての珈琲が入ったカップを片手にクスリと笑った。雄狼は少女を横目に見た後、欠伸をして静かに目を閉じると寝息を立て始めた。
腰のあたりまで伸びた黒髪が風に揺れて少女の視界を塞いだ。
「きゃっ」
と言ってこけそうになる体を支えようと踏み出した所は狼の尻尾で、
「ウワッ」
と裏返った声が部屋中に響いた次の瞬間、少女は狼の上に倒れこんだ。
「うっ…。お前大丈夫かよ。」
「アハハ。ごめんね、ファゴット!」
「ごめんと言う暇があるなら、早く起き上がれ!」
少女がよたよた起き上がると、ファゴットと呼ばれた狼もおきあがり、ひとつ欠伸をした。
少しして、 扉が開いてもう一匹狼がはいってきた。ファゴットと双子の兄妹である。
「呼白、ポストに手紙が入ってたわよ。」
少女…呼白は「はーい」と返事をするとポストに向かってパタパタ駆けて行った。
「ファゴット、おはよう。相変わらずのだらけぶりね。」
「別にいいだろ。それよりアルト。あの手紙…」
雌狼アルトは真剣にな目になった。
「そうね。もう、そんなにたつのね…」
呼白が手に持っているその手紙が、これからの彼女の人生の歯車が、回り出すきっかけになることを彼女自身、知らなかった。
テストやらなんやらで大変遅れてしまいました。申し訳ございません。
大分長編になる予定です。最後までお付き合いいただくと嬉しいです。
もうちょっとしたら、登場人物をまとめたものを投稿する予定です。
今後ともよろしくお願いしますペコリ。