表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミソロギア  作者: dusk☺︎
第一章
5/27

四話目

◆四話目◆




「ほんとにどんな仕事でも受け入れるのか?」

朝早くから聞こえてくる、子供らしい声。

「そうしようよ!その方がいっぱい仕事来るよ!」

「ギルドかよ……。おい怪物退治とかの依頼来たらどうするんだ、闘えるのか?」

「それはリンの担当だよ」

「お前なぁ!」

テーブルに着き、二人で新たな仕事の話をしているようだ。

昨日の出来事ですっかり結束したリンとイオは、お互いに意見を言い合っていた。

「……ったく。解ったよ、取り敢えず依頼内容は自由にするぜ。人殺しとかそういうのだけ少し規制かけるけど、後はフリーだからな。覚悟しとけよ」

「決まりだね」

仕事の中身が決まった所で、次の問題を引っ張り出す。

「んで、本当に此処でやるのか?」

「そうしよう?場所借りたりするの面倒だと思うんだ」

「来るかな、こんなとこまで」

「町でチラシとか配れば大丈夫じゃない?」

結局リンの家でやる事になった。

チラシと看板作れば大丈夫だろうというイオの考えに、リンは少し不安を覚えつつ頷く。

やってみなければ解らない。考えるのはそれからだ。


そんなわけで、二人は看板を作る為に近くの森へ入っていった。

看板の素材となる木が必要だと判断したからだ。

まだ太陽も低く、朝の独特な涼しさが感じられる。

がさがさと雑草を掻き分けつつ進んで、不意に先を歩いていたリンが止まった。つられてイオも立ち止まる。

「この木が丁度良いかな」

目線の先には、他の木に比べ太くてがっしりした木があった。

「何するの?」

「何って、看板作るんだろ?」

どうやって?という顔のイオに、リンは待ってろ、と口にした。

そして木に近づくと、その焦げ茶色をした幹にそっと片手を押し当てた。

そして何かを感じ取るようにゆっくり目を閉じて、一言呟く。


変化(チェンジモ)


その言葉に反応するかのように、大きな木の全体が淡い緑色に光り出した。


解体(ディスメント)


瞬間、木がバラバラと紙のように表面からめくれ始めた。何千、何万もの木の欠片が、リンの前でゆっくりと渦を巻いている。


構築(コンストレクト)


最後の一言で、舞い散っていた紙のような破片たちは、地面一箇所を目指して吸い込まれるように集まった。

強い風が吹き、リンやイオの服がばたばた音を立てた。


暫くして、全てが止んだ。

ゆっくりイオが目を開けると、草の上に大きな板……看板が横たわっているのが見えた。

「……わぁ、凄い……っ!!」

テンションが高いイオを、リンは笑ながら見た。

魔力と呼ばれるものを木に流し込み、其処で変化させたーーー、何て言っても、きっとイオには欠片も理解出来ないのだろう。


「文字どうする?」

口許を綻ばせたまま、リンはそう問いかけた。

「そっか、まだ決めてなかったね」

はた、と思い出したように顔を上げる。しかしまだ興奮は収まっていない様子だった。

「単純に、″悩み解決相談所″じゃダメかな?」

「ほんとに単純だな!」

「解りやすい方が良いかと思って」

まぁ変な名前付けるよりマシか……、とリンは渋々首を縦に振った。

正直、自分に名前を考えろと言われても、変なのしか出てこない気がする。

溜め息を吐いて、すっ、としゃがんだ。


右手の人差し指と中指を立て、看板に空書する。最後の文字を書き終えると、指の先がうっすら光ったように見えた。

途端、空書した跡が今度は白く輝いて、文字が浮かび上がっていった。

木で出来た看板に、青色で″悩み解決相談所″という文字がある。

その完成度の高さに、イオはさっきにも増して興奮していた。


「やっぱりリンは凄いや!」

「いやこれ、魔術の基礎ら辺のとこなんだけどな……」


魔力を流して、物体を操る。

元素という、この世の何処にでも存在し、魔術を使うのに必要とされる”素材”が要らない、単純に己の魔力を操作する技術のようなもの。

魔術師にとっては、魔術を学ぶに於いて基礎と言われる。

確かに、それだけを極めて強くなる魔術師も居るが、大抵は其処から元素の領域に踏み込んで行くので、普通最初に基礎として習う。


本当に知らないんだな、と少し不憫に思った。もちろん口には出さなかったのだが。

更にリンは他の木を一つ選び、それを使って多めにチラシを作った。

そして移動魔術とかいうもので、家まで一瞬で運んでいった。


この森は町で管理していて、許可を取れば少量の木を使う事が許されるんだ、とリンはイオに解説したのだが、イオは「お金使わなくても良いんだね」と笑顔で返した。恐らく何か勘違いしているようだった。許可といっても少しは金を渡さなくてはならないのである。


作業が昼までに終わったので、二人は休憩をとってから午後には別行動した。

リンは家を掃除したり、来客用に少し改造したりすることにした。

イオの方は、町に行ってチラシを貼ったり配ったりしに行った。

夕方には全て終わり、オレンジ色の夕日が町を照らす頃には、二人並んで家の前に立っていた。


家の屋根辺りには、先程作った看板が掲げられている。

相談所、と書かれた矢印付きの棒が、ポストのように家の前に刺してあった。

「何か、変な感じだな」

「どうして?」

「自分の家が仕事場になるとか」

リンが自らの家を見つめながらそう言った。

「仕事、来ると良いな」

ぽつりと漏れた言葉に、

「来るよ、きっと」

またぽつりと返事が返った。

「てか疲れたな。今日は早めに寝ようぜ。明日仕事来るかもしれねぇし」

不意にリンが声を上げた。イオも、そうだね、と振り返って笑って見せる。

「リンは気が早いねぇ」

「お前だって楽しみにしてるだろうが」

「え、そう見える?」

「お前全部顔に出るんだぜ。自覚してねぇのか」

「えっ、本当⁈リンの観察力が凄いだけなんじゃ無くて⁈」


二人でたわいもない会話をしながら家に入っていく。

明日から仕事場となる、その家に。

仕事、と言っても、きっと最初はもの探しとかそんなもんだろうな、とリンは考えていた。勿論、確証は無いが。


仕事。

そしてそれは唐突に、早速やって来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ