表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼の独争  作者: 紅崎樹
12/26

レオン・シュノーの場合-3

12 レオン・シュノーの場合‐3

「カサルが……、カサルが逮捕されたって!」

 開口一番、カティリアはそう言った。

「……は?」

 一人で興奮しているカティリアのテンションに、僕はついていけなかった。

(逮捕ってどういうことだ?)

 その言葉と、その言葉の意味とが結びつかない。何故カサルの名前とその単語が一緒に出て来たのか。

「おい、カティリア。幾らカサルが嫌な奴だからと言って、言っていいことと悪いことがあるだろう?」

「いや、そんなんじゃないって。マジな話よ、これ。先生がそうやって言っているのを聞いたんだって!」

 必死にそう言ってくるが、そんなもの、すんなり信じられる方がどうかしている。

「どっちにしろカサルは学校へは来ないんだろうぜ。先生から直接聞けば、レオンだって信じざるを得なくなるさ」

 その言葉通り、僕はその話を信じざるを得なかった。


 その日のホームルームで、先生から話があった。直接的な原因は言わなかったが、カサルが退学することになったということを知らされた。これでカティリアの言う通りならば、今頃カサルは取り調べを受けている頃だろうか。

「ほらな」

 ホームルーム中、隣を見るとそうとでも言いたげなカティリアの顔があった。


「なんか、こんな短い間に二人もいなくなるなんて吃驚だよ」

 ホームルーム終了後、カナに話しかけられた。

「此処じゃあそこまで珍しい話ではないけどね」

 僕を挟んでカティリアがそう返す。確かにこの学校は生徒の出入りが多いことで有名だが、僕も少しばかり動揺していた。こんな短時間で二人もこのクラスから抜けた。二人とも転校と言うのならまだわかるが、うち一人が退学となれば話は別である。

(本当に学校を辞めさせられることがあるんだ……)

 退学なんて自分たちとは全く関係のない話のように思っていたが、一気に身近に感じた。幾らカサルが嫌いだったとはいえ、あいつも不運な奴だと思った。

「そうそう。ちょっと前に転入生が来たらしいぜ。一年だっつったかな……。ま、こんなだだっ広い学校じゃあ、会うこともないだろうけどさ」

 不意にカティリアが話を変えた。その話は僕もつい最近聞いたものだった。

「ああ、その話なら僕も知ってるぜ。コウザユルから来たんだってよ。タビィとは関わりの深いところだし、カナ、案外そいつの知り合いだったりしてな」

「あれ、いつの間にかお前、『カナ』って呼ぶようになったのな」

 カティリアに小突かれた。僕は、「だってギダワークだと長いだろ?」と返しておいた。


「カナちゃん、後輩君が呼んでるよー」

 昼休みに幾人かの男子で雑談をしていると、カナを呼ぶ女子の声が聞こえた。

「後輩?」

 カナには心当たりがなかったのだろう、首を傾げていた。

 教室の入り口を見ると一人の男子が立っていた。あれがカナを呼んでいる『後輩君』なのだろう。赤い縁のめがねが印象的だ。

「あ、あれって一年の転入生だろ?」

 一緒に話していたうちの一人がそう言った。

「名前は確か……バキア・ネイシム」

「げ……」

 バキア・ネイシムという少年の方を見ながらカナは声を漏らした。彼女の瞳がすっと冷たくなるのを感じた。

(あの顔……あの表情)

 その時、カナを初めて見た時に感じた感覚を再び感じた。僕の頭の中で、ある二つの人物が結びついた。

 前髪から覗く切れ長な目。すっとした鼻。肩辺りまで伸びた髪は、色素の薄い黄土に近い茶色をしている。無駄な肉がついていない華奢な身体。

(あいつだ)

 カナ・ギダワークの外見は、僕が見た殺人鬼『レイ』の特徴とあまりにも似ていた。

  (レオン・シュノーの場合――続)

ようやくレオンが真相に近づきました。予定よりもずいぶん長くなっております。


そういえば最近、今までの話を全て読み返したのですが、読点が予想以上に多くてびっくりしました。あんなにたくさんつけていたとは……。無意識のうちに付けちゃうんですかね。あと、変換ミスもいくつかあって。すみませんでした。以後気を付けます。


さて。

学校であるにもかかわらず、カナをウルフの表情へと戻させてしまった『後輩君』。彼とウルフの関係は? 彼の正体は一体……!?

と言うことで、次回はバキア・ネイシムの話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ