表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼の独争  作者: 紅崎樹
1/26

レオン・シュノーの場合

 初めまして。

 今作が、初の投稿となります。感想がありましたら、一言でもいいので、是非。

 文章的に変なところがあるかもしれませんが、その辺は温かい目で見ていただけるとありがたいです。

1 レオン・シュノーの場合

「カナ・ギダワークです。どうぞ宜しく」

 そして彼女は、微かに笑みを浮かべた。

 

「彼女、滅茶苦茶美人だなあ!」

 ふと、隣の席からカティリア・エンネッシュが話しかけて来た。カティリアはかなりの面食いで、今も鼻の下を伸ばしながら転校生のカナ・ギダワークを見つめている。みっともない姿だが、なるほど彼がこうなってしまうのも無理はない。

 前髪の隙間から見え隠れする切れ長な目。すっとした鼻。腰辺りまである後ろ髪は、色素の薄い黄土に近い茶色をしている。袖やスカートの裾から覗く手足は色白で細く引き締まっており、無駄な肉がついていないように見える。体格自体は小さいのに、どこか大人っぽい雰囲気があるのだから不思議だ。

 そんなところを含めて、確かに彼女は他人の目を奪うような美しさを持っていた。

「それではカナ、後ろの空いているところへ」

 セノンユ先生がギダワークに声をかけた。後ろの空席とは僕の右隣のことだ。彼女が席に着く前、こちらに向かって軽く頭を下げて来たので僕も同様にお辞儀を返す。

 先生はギダワークが席に着いたことを確認すると、連絡等をし始めた。


「ねえ、カナちゃんって前はどこに住んでたの?」

 ホームルーム終了後、真っ先にギダワークの席へ行ったのはカサル・ゾアークだ。着くなり質問を始めるゾアーク。髪を上の方で一つに束ね、色々な装飾のついた髪飾りでくくってある。この中学は校則がかなり緩いため、彼女が化粧をしているのは当たり前。そうした女子は彼女だけでない。

 しかし、正直彼女は苦手だ。

「えっと、コウザユルの近くに。タビィっていう所なんだけど……」

「タビィ?」

 確か其処は、コウザユルに農作物を輸出しているところだったような。でも其処って、教育施設が少なくて、子供のころから農業の手伝いをさせられるような所じゃなかったか?

 それでいてこの中学に入ったってことは、よっぽど偉い方の娘なのだろうか。しかしなぜこのタイミングに?

「へえ。……わかんない事とかあったら、いつでも聞いてね。私、カサル・ゾアーク。よろしく!」

 カサルが言う。あの反応、きっとタビィと聞いてピンと来なかったのだろう。地理で習ったばかりなのに。化粧などする時間があるのなら、少しは勉強をすればよいのだ。

「よろしく、カサル」

 ギダワークはそう言ってカサルと握手を交わすと、席を立った。

「少し校内を回ってくる」


 授業開始五分前。

 校内を回ってくると言って席を立ったギダワークはまだ戻ってこない。

 僕はなんとなく教室を出た。


 特に当てもなく廊下をふらついていると、美術室にギダワークの姿を見つけた。校内を回ると言っていた割に、一向に美術室から動く様子が見えない。

 あそこは仮にも、授業以外に無断で入ってはいけないことになっているのだから(誰も守っていないが)教えてあげねばなるまい。僕はそちらへ足を向ける。

 部屋に入ると彼女もこちらに気づいたようで、僕の方を振り向いた。

「君は確か、隣の席の……」

「レオン・シュノー。以後お見知りおきを」

 僕は軽く一礼した。

「それで? こんなところで一体何をしていたんだ?」

 入ってはいけないということを教えるのは、また後ですることにしよう。

「……君は、タビィのこと、どれくらい知っている?」

「? まあ、一応、地理の教科書に載っている程度には。確か、コウザユルの東隣で農業が盛んなところだろう?」

「なるほど。まあ、そんなところか。……タビィってほとんどが農地みたいなものだから、あまり人工的な匂いになれていなくてね。教室の中、香水……の匂いだったのかな、甘い臭いで溢れかえっていたから少し気持ち悪くなっちゃって」

 確かに女子の匂いは甘ったるくて嫌いだ。しかし、気持ち悪くなるほど気になるものなのだろうか。僕は生まれも育ちもここデジウカだから、いまいちわからない。

「そういうものなのか。まあ、それにしてもそろそろ戻らないと授業に遅れるぜ? 一時限目は確か……数学。数学の担当のフェモス、時間厳守の人だからな」

 時計を見ると、授業開始まであと二分程度しかない。本当にそろそろ戻らないと、こちらまで怒られてしまう。

「なんだ、わざわざ呼びに来てくれたの? それはご丁寧にどうもありがとう。そうだね。私も、登校初日に怒られるのはちょっと」

 そう言って彼女は笑った。


 今日この学校に転校してきたカナ・ギダワーク。

 第一印象は、『大人びている』だった。しかし、話してみれば年相応の普通の女子だ。よく笑うし、冗談だっていう。

 普通。

 それが今のところの、彼女に対する僕の感想である。


 ところで。

 どこかであの顔を見たことがある気がするのは、やはり彼女がモデルでもしていそうな美人だからなのだろうか?

  (レオン・シュノーの場合――続)

 因みに、カティリアは割と主要キャラです。今後の登場を楽しみにしていてください。

 まだまだ続くので、次作も読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ