表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/29

 2

 寝る前のミーティングで、進路について少しもめた。


「01班は必ず、東寄りに進路を取る」

 ベイカーが主張した。

「いや、西だ」

 ギガンテは譲らない。

「南にはいい道がない、01班はP‐0208くらいから03班の西ルートに食い込んで来て、後からこっそり辿るんじゃないか? それで、隙をみつけたら、そのままやっつけてやろうと狙うんだ」

「ベイカー、どうして東だと?」

 サンライズが聞くと

「明日は午後からかなり暑くなりそうだから……西日を避けるだろう」

 さすがもっともらしい答えだ。

「オレは01のヤツらはまっすぐ上っていくと思うぜ、でも02班……『カナリヤ』のヤツらはこっちを狙いにくるだろう」

 ホークも自分の考えにこだわっている。

「『カナリヤ』のリーダーはアルファだから、パワーバランスを考えてこっちから潰そうとするだろう、なんせ」

 サンライズとヤルタの方をみる。

「はいはい」

 ヤルタが吐き出すように言った。

「メガネのチビが二人もいるからね」


 他にはたまたま、眼鏡をかけているリーダーはいない。

 それに上背の無さ。サンライズは単に痩せているだけと言い訳もできるが、この中の誰もが思っていた……

 04班が一番、シーソーに乗った時に舞い上がってしまうだろうと。


「だったら『野蛮人』のヤツらだってこっちを狙いそうだ。そうなると挟みうちになる」

 ベイカーは神妙な顔をしていた。

「他を潰そうというんなら、オレたちは確かに狙われる」


 彼らは、両脇のルートを行くメンバーを一人一人、思い出していた。

 かなり獰猛そうな連中が揃っていた。

 しかも、02班と03班は合宿前からチーム名がついていた。

 02班は『カナリヤ』、03班は『野蛮人(バーバリアンズ)』だった。


 カナリヤって何? と数日前、カナリヤ軍団に属したゾーさんにようやく聞くことができた。

「それは……」

 支給されたタグにデータ転送しながらあたりを気にしつつ(合宿までは、あまりおおっぴらに敵どうし仲良くすることがない)教えてくれたことには

「カナリ、ヤバい、の略」

 だとのこと。


 下馬評では、ゴールに到達できるのはカナリヤ軍団だけなのでは? と言われていた。


「こうしたらどうだろう?」

 ホークが考えながら言った。

「ヤルタか、サンライズのどちらかが、へばっていて遅れている、と無線連絡するのは?

他の連中に先に正規の宿泊ポイントに上っていてくれ、と連絡して、一人孤立したと思わせる……」


 まず02班の周波数を故意に使って、一人が偽の情報を流す。

 そして実際は三人で待ち伏せる。

 戦闘が激しくなった場合のことを考え、後の三人は先に上を目指す。

 せっかく他チームより一人は数が多いのだから、そこを利用しない手はない。


「いけるかも知れないな……」

 ベイカーが少し考えてから、そう答えた。

「それなら」

 サンライズも急に思いついた。

「その連絡を、03班にも聞かせたらどうだろうか」

「えっ?」

 ベイカーがこんなにフツウに驚くのも初めてみる。

「それで残った三人は隠れて待つ、02班と03班とが、うちのルートでぶつかるのを」

「いいねえ」

 ギガンテが、にやりと笑った。

「とにかくやってみよう」

 ベイカーが決断した。


 とりあえずその晩は、交代で見張りをしながら眠ることになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ