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光線銃ではなく、電子制御のできるナイフ状の武器に持ち替えている。首筋に当ててスイッチを入れると、相手を失神させることができる。今、サンライズが首に押し当てられているのはまさしく、それだった。
サンライズは、両手を挙げてゆっくりと窓際から中に戻った。
それについて、ゾディアックが窓枠を乗り越え中に入る。
現実の世界、こういう状況ならばどうする?
もちろん『シェイク』だ、それしか自分には身を守る術はない。
しかし、できるのか? 今。
相手は、ゾディアックなんだぞ。ヤツを屈服させることが、オレにできるのか?
「ベイカー、いるんだろう?」
ゾディアックが静かに問いかけた。
「コイツを殺されたくなかったら、銃を捨てろ」
廊下に隠れていたベイカーが、ゆっくりと姿を現した。銃をこちらに向けている。
「確実にオマエは死ぬぞ」
味方も含めて撃つつもりだ。サンライズは覚悟して目をつぶる。
ナイフの方が痛いか、銃の方が痛いか、何だかいつも微妙に運が悪いのでどちらも食らいそうな気がする。
急に何もかも投げ捨てたくなった。
甘ちゃんと言われようが何だろうが、オレはここで殺られてやる。
こんなゲームはもう終わりだ。
決心とは裏腹に、なぜか震えが止まらない。どうしたんだろう?
そうか、これは恐怖からじゃあない、あまりにも、哀し過ぎるからだ。
こんな憎しみのぶつけ合いにどんな意味がある?
彼はゾディアックにささやいた。
声が震えているのが自分でも分かった。
「もういい、やってくれ」
ぐっ、と息をのむ音がした。
そこに、更に一つの影が入り口に射す。
「Freeze!」
聞き慣れない鋭い声。ゾディアックの手が緩んだ。
身体は訓練の成果か勝手に反応する。
サンライズはその隙に左に飛んだ。
赤い閃光が闖入者の銃から発射され、ゾディアックの胸を射た。
ベイカーか? サンライズは机の影に転がって入り、入り口を確認しようとした、が、彼を救ったのは01の生き残り、カンサスだった。その、大きな赤毛の男は思わず叫んだ。
「やったぞ」
ゾディアックのナイフが飛んで、サンライズの目の前に落ちた。
拾い上げる時、カンサスに気づかれた。そこに、窓からもう一つの影が音もなく飛び込んだ。ジャッカルだった。銃を短く構え、サンライズの頭を薙ぎ払おうとしている。挟み撃ちされたという意識もないままとっさにナイフを掴み、窓から迫る姿の真ん中に押し当ててスイッチを入れた。
があっと痰を吐くような叫びと共に、ジャッカルが倒れた。




