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山頂に近付くにつれて、それぞれの班ごとの距離は縮まってくる、それは当然のことだった。
敵との距離が縮まるとどうなるか?
「衝突は、避けられないな」
ベイカーはどこかうれしそうだった。
ようやく、キャンプ地にたどり着いたのが19:30過ぎ。
途中で他の気配を感じて少し待機したり、やや回り道をしたりで野宿の支度が出来た頃にはもう日はとっぷりと暮れていた。
昼過ぎにメントス達の死亡宣告を聞いてから、いくつか似たような連絡があった。
01班はどこの班に対しても奇襲をかけたらしく、03班のレイジーボーンズと副リーダーのヴィオラを倒していた。
また、02班のターキーも01班の奇襲にやられたらしい。
しかしここでは01班イマサキが重傷を負って戦線から離脱した、という連絡も一緒だった。
メントスとヤルタを始末したのは03の仕業だと思っていたが実際は、どうも01リーダーのローズマリーだったらしい。
03班のレイジーボーンズは確かに04班居残り組に奇襲をかけようとしたのだが、逆にローズマリーに撃たれたようだ。
座標と戦闘報告をまとめていたホークが淡々とそう語って聞かせた。
サンライズはぞっとした。
もしあの場所に残っていたら、飲み連れにやられていたということか。
それとも、万が一ということもある。
彼が逆にローズマリーの息の根を止めていたかも知れない。
そう思いながらも、それは絶対になかっただろうな、とサンライズは心のどこかで感じてはいた。
夜に入る前にすでに戦闘可能な状態で残ったのは、01班は3人(重傷者はすでに動けないらしい)、02班は2人、03班も2人のみだった。
「オレら、案外善戦しているんだなあ」
ホークがうれしそうにビーフジャーキーをかじりながら言った。
「早く、他のヤツらが潰しあいをしてくれないかなあ」
血の気の多そうなギガンテさえ、そう言ってため息をついた。
他に見つかるといけないので、たき火すらできない。
彼らはそのまま食べられるジャーキーやカロリーメイトなどをちびちびかじりながら、イオン飲料やペットボトルのコーヒーをのどに流し込んでいた。
ベイカーが闇に沈む木陰の方を見やってから、考え考え、こう言った。
「ふた手に別れよう」
ゴールまで、歩いてあと3時間程度の所まで来ていた。
しかしそれは明るい時ならば、の話。セオリーに従うならば、ここで十分に休憩をとって夜明けとともに頂上を目指すのが普通なのだが、ベイカーはイヤな予感がする、とつぶやいた。
「少数になったグループは、夜中に移動することが多い」
自分たちも2人ずつに分かれ、別ルートで頂上を目指したらどうか? という提案だった。
「一組が2100に動く。もう一組は2200に出発で行こうか」
ホークが肩をすくめた。
「組み合わせはどうする?」
ベイカーが闇をすかすようにかなたを見たまま言った。
「オレとサンライズ、ホークとギガンテ、どうだ?」
ホークとギガンテに異論はなさそうだった。二人は顔を見合わせて、それからホークが代表して答えた。
「それでいい、オマエら先に行くんだろう?」
「ああ、サンライズはいいか?」
ベイカーがサンライズをふり向いた。
「了解」
どうせゴールに着くまでは休めないのだ。
しかし他の誰でもいいんだけどな、一番最初にゴールしてくれる役目は。
そう思いつつも、一番手でゴールテープを切ってみたいという好奇心にも勝てなかった。
荷物はすぐにまとまって、彼らは出発した。




