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―― 生き残れ。


 それは、彼らの合言葉でもあった。


 生き残れ、必ず生きて戻れ。



*****


 初耳だった。

「リーダー研修、ですか」


 特務課長の乃木がファイルを渡しながら、深くうなずいた。

「詳細説明があるから、必ずここの日時を空けておくようにね」


 サンライズは呆然とした目を、手元の資料に向ける。


 今週金曜十八時より。

 東日本支部技術部特務課所属全リーダーに対しての説明会、とあった。

 

「サンちゃんとこにも、来たんだ?」

 ノギが行ってしまってから、隣の島から、ローズマリー・リーダーがヒマそうに寄ってきた。

 一体この人はいつオシゴトをしているのだろう? つい首を傾げたまま、サンライズは近づいてくる彼をみる。


 このローズマリーという男、自分よりリーダーとしても先輩なのに、見かけるたびにフラフラしているイメージがある。

 見た目は若くかなりいい男ではある、そこまではいい。

 格好が会社員にしては少し派手ではあった。髪を長くしてしかも前髪を一部脱色しているし、やや光沢のあるスーツが妙に細身の身体にフィットしているし、怪しさは限りない。MIROCマイロックの人かどうかも実は疑わしい、と思う事まであった。

 それでも今は頼りがいのある先輩として「何でも訊いてごらん」的な笑みを浮かべている。


「あれ? もしかしてローズ先輩の所にもいきましたか?」

「あったぼうよ、てやんでえべらぼうめ」

 まあ、時々どこの出身の人かも分からなくなる。


「これ、支部のリーダー全部出るんですかセンパイ?」

 やだなあ、と新米に果てしなく近いリーダーのサンライズはまるで爆発物に触れるようにページをめくっていった。

「去年、こんなのなかったよねえ……」

「二年にいっぺんくらいかな?」いや、三年ごとかなあ、とローズマリー。

「だいたい二泊くらいかな? 無事に帰って来られれば」

「今まで無事に帰れなかった人っているの?」

「え?」

 急に、ローズマリー先輩は、得意の何も考えてない笑顔になった。

「いたかなあ? いないかなあ? ゾーさんは前回遭難しかかったけど」

「そんなに危険なの?」


 同じく飲み連れであるゾディアック・リーダーは、普段は大型草食獣のようにおっとりしているが、彼らよりずっとガタイもいいし、いざという時の身のこなしも闘い向きだという感じがする。


 その彼が遭難しかかった? 

 ますますヤバい。

 遭難なんてゴメンだとぷるぷる首を振り、サンライズは中を熟読し始めた。


 現在、東日本支部技術部特務課の主任、つまりリーダー登録者は全部で二十四人。

 その中の、任務中でどうしても参加できない数名を除き、ほぼ全員が一同に会し、数班に分かれて、『サバイバル合宿』を行うのだという。


「でもヘンだよな」

 急にローズマリーがそう言ったので、何で? と聞いたら

「普通さ、リーダー三年目からが合宿の対象なんだけどなあ……」

 そうつぶやいている。

 リーダー二年目になったばかりのサンライズ、

「ナンデスト?」

 と立ち上がり、あわててノギの所に向かった。


「どうした?」

 ノギが意外そうに目を上げたので、彼はローズマリーに聞いたことを伝える。

 すると

「まあ……一応そうなってるがね」

 こちらも、何を考えているのかよく分からない笑顔でこう応えた。

「支部長判断で、今回は全員参加だって。文句があるなら支部長に言って」


 サンライズはうなだれて、自分の席に戻った。


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