32号と殺人兵器
あれから、あの兵器は次から次ぎへと国を滅ぼした。
怒りと悲しみを和らげるためだ。
だが、悲しみだけが大きくなるだけ。
そしてこの悲しみは兵器にとって、胸を締め付ける鎖として残っていくのだった。
・・・
32号機は、国から脱出後、森の中で病弱の天才プログラマー“アンゲルマ・ゲルド”と接触し約1年間、彼と生活を共にした。
だが、国の生き残った兵士がゲルトを殺害したが、32号機が兵士を殺害。
そして、32号機は、ゲルトがプログラムした“ココロ・プログラム”を起動し、心を手に入れた。
32号機は約400年間、国から国へと旅をして、現在はとある万事屋に身を寄せている。
・・・
「えっ?アジェンさん、その人は国を滅ぼそうとしている人なんですか?」
「いや、人じゃない。機械・・・いや、厳密に言うと兵器だ」
一人はピエロ帽子を被っている少女。
もう一人は左腕に淡く光る円をつけた男性だ。
「兵器?てことはサニーと同じヒューマノイドってことですよね?」
「あぁ、しかも1号機だ」
ガシャンとトレーを落とし、パリンとティーカップを割ってしまった。
ドアを乱暴に開け、何所かへ向って行った。
「隊長・・・!」
彼女は32号機、否、今はサニーと言うべきか。
空を飛び、彼女のメモリー内では、あの言葉が駆け巡っていた。
『待ッテイテクレ。必ズ、オマエノモトマデ帰ッテクルカラ』
「良かった。生き残っていてくれて・・・」
彼女の眼には、流れるはずが無い雫があった。
・・・