キル・マシンの恋と悲しみ
昔々、ある国の軍が、1機の兵器を作り上げた。
これが、ヒューマノイドの誕生である。
この兵器は、戦争に駆り出され、のち『殺害兵器』と呼ばれるようになった。
その兵器は、兵器隊の指揮官となり、天下無敵となった。
そんな兵器は、とある兵器に恋をした。
そう、それがこの話に出てくる2機目の32号機だ。
兵器は思考した。
―――ナゼ、32号機ガスグ側ニイルト、顔ガ熱クナルノダ?
兵器には解らないことだった。
自分に心など無い。
人間が作り、人間が思うように命令して、自分が動く。
それが兵器にとってあたりまえなことだった。
ふと兵器はゴミ処理場にいた。
兵器は、ゴミの山から、赤く美しい石を見つけ、加工し始めた。
そして出来たのは、バラのネックレス。
兵器はすぐ、32号機の所に向った。
・・・
「32号」
「はい。何でしょうか隊長」
振り向く、32号機。
ストレートの白髪がふわりとゆれる。
「コレヲ、ズット付ケテオケ」
兵器は、自分が作ったネックレスを32号機に手渡した。
しばらくの沈黙。
「隊長、ありがとうございます」
32号機は、ニコリと作り笑いをした。
―――32号モ、心ハ無イノカ・・・
32号機は、敵の国に潜り込み、そして権力者を暗殺するために作られたヒューマノイドだ。
そのためこういったら、笑い返す、泣く、怒る、というようにプログラムされているのだ。
「アァ。ソレジャ、マタナ」
兵器はくるりと背を向け、歩き出した。
・・・
兵器は隊長室にいた。
そこには、愛用の剣とマシンガンが置かれている。
「オレハ・・・ドウシタンダ?」
次々と起こる異常なエラー。
自分のプログラムを調べていると、今までに違うプログラムが、かかれていた。
プログラムの名前も記入されていない。
それに、かかれたのは、異常が起きる日と重なっていたのだ。
「イッタイダレガ・・・」
兵器は自分の手を見て、思考をしていた。
―――人間か・・・?
ドカッ!!
武装した兵士たちが、隊長室のドアを突き破った。
ドドドッ!!
そしていきなり、兵士たちがマシンガンを撃ってきた。
「オマエラ!ナゼ、オレヲ攻撃スル!!」
「へっ、そんなの決まってるだろ?お前たちは危険兵器だからだ!!」
ドドドッ!
兵士たちがマシンガンを撃ってきた。
兵器はかろうじてよけると、置いてあったマシンガンを取り、撃った。
兵士たちはすべて、ばたりと倒れ、死んだ。
兵器は剣も取り、兵器隊が集まる部屋へ向った。
―――32号、オマエダケデモ壊サレナイデクレ・・・!
・・・
部屋についた。
だが、兵器たちは、バタリ、またバタリと削除されていった。
―――32号ハ何所ダ・・・?
「殺害兵器を見つけたぞ!!」
ドドドッ!
兵器はすばやくよけ、マシンガンで兵士を殺した。
「32号!何所ダ!!」
兵器は叫ぶ。
「隊長、私はここです」
振り向くと、そこに32号がいた。
―――良カッタ・・・イタ。
兵器はほっとした。
「32号、オマエダケハ逃ゲロ」
「・・・解りました」
32号はくるりと背を向け
「武装変化、ジェット」
32号の足はだんだんと飛行機のジェットへと変化し、ふと兵器を見つめた。
「隊長、削除されないでください。私、ずっと待ってます」
「アァ。待ッテイテクレ。必ズ、オマエノモトマデ帰ッテクルカラ」
32号は確かに微笑み、逃げていった。
「サァ、邪魔者ハ居ナクナッタ。ヤルゾ!!」
兵器は戦った。
この国が滅ぶまでに。
・・・
兵器はこの戦いに勝った。
だが、多くの人を殺した。
関係の無い、多くの国民を。
32号・・・
コノ苦シミハナンダ?
誰デモ良イ、教エテクレ
コノ悲シミハナンダ?