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-第8話- 「 ロール・ロール 」

 再びアースリアの地を踏む事となった。しかし、そこはラークスの屋敷ではなかった。


「陸殿!」 

「リク~」


 ルシアが駆け寄って来た。


 私を待っていたのは、ラークスとアースリアから戻した3人の魔道師とアリスとルシアであった。本当にまた来てしまったんだと実感した。


「ようこそアースリアへ……そんな余裕は無いのですが魔法は成功したようですね」


 ラークスは、ここが王宮に隣接する魔法を研究する施設だという事を私に告げた。


「何があった? ラークス!」


 ルシアが横にくっ付いている状態で私は質問をした。


「まずは陛下の所へ……」 


 私たちは、施設から出て国王が待つ王宮へと向かった。この間すぐ追い出されてしまった王の間へ……パンをこよなく愛し、誰よりもパン好きな国王の所へ。


 今度は、止められる事無く王の間に入る事が出来た。


「陛下、異世界のブレッド・マイスターの陸殿をお連れしました」


 王の間には、マイスターの姿は無く……そこには、がっちりとした体格のいいの男が立っていた。


「お前が異世界のブレッド・マイスター? なんだ若ぞうじゃないか……オレの名は、ドーキンだ」



「若ぞう?」


 私は、また若い姿になっているのだと気付いた。


そして、この男がドーキン……? なんだか自分がイメージした人物像とはかなり違っていた。


「何を言っているのだ。 こう見えても陸殿はお前より年上なんだぞ!」


 ラークスが少し声を荒上げて言った。


「陸殿、あなたを再びお呼びしたのは他もありません。この男……ドーキンと勝負してもらう為です」


 ラークスが言うには……


 数日前のこと、突然ドーキンが3人のマイスターを引き連れて王宮に現れたという。そこで、ドーキンは国王に正式にブレッド・マイスターとして認めてもらうように願い出たという。たまたま、そそこに今後の警備体制の事で相談に来ていたラークスがいた。


 ラークスは、見逃す事が出来なかった。


「ドーキン! 何をバカな事言っているのだ! お前など、ブレッド・マイスターに認められる訳がないだろう!」


「オレは、あんたには用はないんだ! 国王陛下に用があって来たんだ!」


 この後、国王が勝負の話しをもち出した。


「ドーキンよそれほどマイスターの称号が欲しいか? ならばラークスよこの間の異世界のブレッド・マイスターを再びここに呼んで勝負させたらどうか? その異世界のブレッド・マイスターに勝利したら称号をやろう」


 そして今、私がまたこの世界に呼ばれる事になったのか。でも、始めからそういう話しだったと思ったけど?


「今日は、陛下からその勝負内容が発表されます」


 ラークスも内容までは、聞いていなかったようだ。


「では、話すとしよう。その内容は、ロール・ロール対決!!」


「ロール・ロールを作れるだけ作り街の者に食べてもらい評価してもらう。そして、このわしにも同じ物を用意してもらおうかな。飽きるまで……どうじゃ? いい考えだと思わんか?勝負は、15日後の早朝からスタートして正午の鐘と共に終了とする。そして、評価方法は、日没までに広場に設置する投票箱にどちらのが美味しかったのかを書いてもらう」


「開票は、国王であるわしの目の前で行う。よし決まりだな!」


 作れるだけ? 飽きるまで? やっぱり権力者のいう事は強引だ。


「逃げるなよ! ほらやるよ!」


 ドーキンが、ロール・ロールの基本的なレシピが書かれたメモを私に渡した。


「勝負は公平にやんないとな! まぁ、オレが勝つと思うがな! それは、本当に基本のレシピだからな、まずすれを作れるようになってからだな……ハハハハハ」


 アースリアの人々の記憶を消して、ブレッド・マイスターになろうとした者の口から公平という言葉がよくでるもんだと思った。


 この時、絶対にこの男には、負けられないと心底思った。


「道具や材料それにオーブンは、オレと同じものを用意しておいたからな……せいぜい頑張るんだな」


 渡されたメモを見てみた。なぜか読める……この世界の文字が読める事に気付いた。何々? この配合に対して給水が多くないか? 疑問がわいてきた。


 早速、このレシピを元にロール・ロールを作ってみた。


「うわっ……なんだ?」


 私は、少しずつ水を加えていった。粉がどんどん水を吸収してしまい生地にならない。レシピの分量まで来たとき、確かにちゃんと生地になった。


 でもこれは、基本中の基本! ここからどう作っていくか自分しだいという事か。私は、まず油脂を変えてみようと思った。そして、ルシアとアリスを連れてリドの街にでた。


「じゃ……これと、これと、これをください」


 とりあえず3種類のバターを買いロール・ロールを作ってみた。でも納得いく結果にはいたらなかった。悔しいがやはり基本のレシピで作った物が今のところ一番おいしい。このレシピも研究の成果という事なんだろう……私は、そう思った。


 でも、これじゃドーキンには勝てない……


 ドーキンもこのレシピのままと言うのは考えられないし、何かがあるはず……必ずあるはず。アリスは、どうしても外せない用事とやらで出かけてしまった。


「もう一度、バターを買った店に行ってみよう」


 再び、ルシアを連れて店に向かった。


 店の人に何かもっと違う……上手く表現出来ないが何かないか聞いてみた。しかし、店員も首をかしげるばかりだった。


 すると奥から……


「では、これはどうかい?」


 奥から出て来たのは、白髪の老婆……手にしているのは少量のバターだった。


 私は、それを受け取るともう一度、ロール・ロールを作ってみた。今度は、バターの量が少ない為にロール・ロールを3個しか作る事が出来なかった。


「3個か~風味は良い」


 ルシアにも食べてもらった。


「この前に食べたのとは全然違うね!」


 でも、まだダメだ。大量のバターも手に入れなければ……あの老婆が言うには、このバターは変わった花の実から作ると言っていた。


「その花の名前は、バタルマと言ってな14日に一度どこかに咲く変わった花でな、このバターも運が良ければ沢山手に入るだろう。タルマは、2時間だけ咲いてすぐ種が出来る。そして、すぐ朽ちる。跡形も無く……不思議な花なんだよ」


 絶対にバタルマのバターを手に入れなければ……でも、どこに咲くかも分からない。どうする?


「14日に一度と言っても今日が何日目かも分からない」


 まぁ、そう簡単にはいかないと言う訳か……でも何とか手に入れてみせる。決意はさらに固まった。


「ミュージアム行ってみようよ~リク!」


 ルシアの言葉に「お~!」と心の中で叫んだ。


「よし行こう! すぐ行こう!」


 私とルシアは、少し小走りにマイスター・ミュージアムに向かった。


 息を整えて、いざ中へ!


「へぇ~いろんなマイスターがあるんだな~。この間は、他のマイスターの所は見なかったからな」


 私は、驚きながらバターに関するマイスターを探した。


「オイリスト・マイスター……おそらくこれだな。油、油脂専門! あと、アクア・マイスターって水のマイスター? これも見て行こう!」


 私は、オイリスト・マイスターに関する記事を読んでいった。するとそこには、バタルマの話しも載っていた。


「バタルマ大量収穫に成功!」


 大量収穫とは、どのぐらいの量なんだろう? ものすごい数のロール・ロールを作らなければならないからな。私は、このマイスターの事をさらに調べた。すると、リドの街を南門から出て約10kmの所に住んでる事が分かった。


「ここ行くの? リク」


 ルシアは、少し不安気な表情しながらつぶやいた。


「どうした? まぁ、リドの街を出るにも2~3日かかるって言ってたもんな」


 すでに3日が過ぎている。その事を頭に入れておかないと勝負の日に間に合わなくなし、かと言って諦める訳にもいかない。往復で、6日として残り6日……あと水の調達もあるし、バターが運良く手に入ればいいのだが……ルシアにはキツイかな?


「ワタシね、こう見えても体力には自信あるんだけどね……街の外は、数える程度しかないの、その時は、いつもお兄ちゃんと一緒でね……だって~どう猛な珍獣が出るんだよ」


「なっ? なに? どう猛な珍獣!?」


 頭の中で想像してみたが……さっぱりイメージがわかない。剣術なんて自分には特に必要なっかったし、剣道でもやってれば良かったと思った。


「すごいどう猛なの、見ると笑っちゃうけどね。ワタシは、一回しか見た事ないけど、お兄ちゃんは何回も会ってるんだって」


 異世界だからありなんだろうけど……一度見てみたいという好奇心もわいてきた。


「ラークスにも一緒に来てもらえばいいんじゃないか? あと、何か攻撃? の魔法を許可してもらうとか。あっ!転送の魔法は?」


 昔やったゲームでもこんな感じでパーティー組んでたな。懐かしく思った。


「転送魔法は、緊急の時以外は使用の許可はでませんのよ。それに、攻撃の魔法もある程度の素質がないと使えません。ルシアが使えるのは、初歩の回復魔法くらいでしょう」


 後ろから声がして、振り向くとアリスが立っていた。


「お姉ちゃん!? びっくりさせなでよ~。もう済んだの? 用事は」


「もちろん完璧よ! それといいを物見つけたの」


 アリスが出したのは、少し小さめのカバン? だった。


「見つけたの? 魔法のカバンプラス10(テン)これがあれば重いものでも運べるね。お姉ちゃんはね、魔法のカバンコレクターなんだよ」


 魔法のカバンて……さすが異世界。今更だが、ちょっとほっぺたをつねってみた。


 イタッ! やっぱり夢じゃない。


「プラス1~6ぐらいなら、たやすく一般的にも入手可能なのですけど、まぁ、10ともなりますと入手困難きわまりないのです」


 ルシアがさっき言ってたように、そうとうな重量まで入るならば材料の運搬がかなり楽になる。


「そのカバンも凄そうなんだけど、アリスの魔法の素質はどんな感じなのかな~なんて」


 アリスの眉間みけんにキュッ! とシワがよった。


「どんな感じですって! 失礼ではなですか? 陸さん……この世界には、私に使えない魔法なんて存在しません!」


 きっぱりと言い切った。


「これからラークスも誘って、4人でオイリスト・マイスターの所に出発だ!」



 本当にゲームのようになって来た。




第9話に続く……

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