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-第6話- 「 アリス 」

 3人のブレッド・マイスターから手渡されたこの世界のパン……何とかこの晴れないモヤモヤをどうにかしようと思った私は、いつのまにか食べるのに夢中になっていた。


「よっぽど美味しいのね。それじゃ~ね~異世界のブレッド・マイスターさん」


 私は、マイスター達が去って行くのにも全く気が付かなかった。ただ、その一つの違和感? 疑問? の事をひたすら考えていた。


「何だろう? 何だろう? 何かが違うんだよ!」


 もう少しで何かがつかめそうな……でもつかめない? 私は悔しいこの感情をついつい声に出してしまった。


「……リク」


 遠くの方でルシアの声がして私は我に返った。


「……リク? 大丈夫? あ~ロール・ロールだ! マイスターからもらったの?」


 ルシアは、私の持っているこのパンをロール・ロールと呼んだ。


「ロール・ロール? そういう名前なんだ……このパン」


 私は、食べかけのロール・ロールを無意識に見つめていた。


「ほら~早く中に入ろうよ~」


 ルシアに背中を押されながら屋敷の中に入った。しかし、中は驚くほど静かで、地図を広げたさっきの部屋にはラークスの姿は無かった。


「たぁぁぁぁぁぁぁぁ~! やぁぁぁぁぁぁぁぁ~!」


 中庭の方からラークスの声が聞こえてきた。私とルシアは急いで中庭へと向かった。


「おにい……ちゃん」


 ルシアが心配そうにラークスを見つめていた。



 こちらに気付いたラークスは、剣をおさめゆっくりと歩み寄って来た。


「先ほどは見苦しいところを見せてしまいました。ルシアもすまなかったな。ところで、陸殿はどう思われますか? ブレッド・マイスター達の事を……なぜ彼らだけ記憶が元に戻ったのか?」


 責任感のつよいラークスは、今日起きた出来事がやはり納得できないのだろう。


「ドーキンが関わっているとしたらどうでしょう?」


 ラークスの言う通りドーキンが関わっているとしたら……もしかしてドーキンに何かあったのでは? 私は悪者を心配するわけではないのだが何かふに落ちない。


「もし、そうだとしたら何が目的なんだろう? あっ!? これ食べたら何か分かるかも?」


 私は、ロール・ロールをラークスとルシアに食べてもらった。


「懐かしい味ですよ。よく食べていたパンですね」


「うん、おいしいよ~朝よく食べてたよ」


 2人の反応を見ても特に変わった所は無いようだ。でも、さっき自分が納得できなかったのは? 世界が違うから? 当然と言えば当然のことであるが……



 私たちは屋敷の中に入る事にした。



「ラークス殿、申し訳ございません。ここで待たせて頂きました」


 見るらかに魔法でも出るかのような杖を持った3人が玄関フロアーで私たちを待っていた。もう私は戻されてしまうのか? このモヤモヤを解消する事すら出来ないまま……


「そちらの異世界の方には申し訳ありませんが、これも国王陛下のご命令ですのでご承知していただきたい」


 本当にこれまでなのか? 悔しいな……そう強く思いながら再び私たちは、中庭へと移動した。


 私の周りを3人が距離をとって囲んだ……3人は呪文らしきものを唱え始めた。すると私の足元に魔方陣のような模様が浮かび上がって来た。


 眩い光が私を包み始めた。


「ルシア~! オレは必ずこのアースリアに戻って来るか………………」


 どんどん光に飲み込まれていく私は、最後の言葉を出す事が出来なかった。 


「お兄ちゃん……ゴメン!」


 まさに時空を超えようとしているその時、ルシアが光の中に飛び込んできた!


「ルシア~!!」


 ラークスが叫んだ! でもどうにも出来ない。


「えっ!?」


 私は驚きながらもルシアの手をしっかりと握りしめた。そして二人は、光に包まれていった。



 しばらくすると光は無くなった。落ち着いて周囲を確認してみた。そこは自分の家のベランダ……間違いなく元いた自分の世界である。しかもベンチチェアには飲みかけのビールがあって、缶はまだ冷たい……まさに今さっきアースリアに飛んだ様な感じだ。


「……ルシアはどうした!?」


 一緒に来たルシアの姿が見当たらない事に気付いた。しっかりと手はつかんでいたはずなのに……


 私は、ルシアを探した。やはり途中から魔法陣の中に入ったせいなのか? もしかして違う次元に行ってしまったのか……でも光の中では一緒だったはず。


 私は、ルシアの事を心配しながら一階のリビングに下りて来た。そして部屋の明かりをつけた。


「……ルシア!?」


 リビングのソファーの上に気を失っているルシアの姿があった。私は、他の世界に飛ばされたのではない事をひとまず安心した。


「リク殿……リク殿?」


 突然ラークスの声がした。


「ラークス!? ルシアはどうしたらいい?」


 私は、ラークスに問いかけた。


「その事ですが……ルシアをしばらくの間頼みます」


 魔法が使える世界の人間がどうして、そんな事を言うのか不思議に思った。


「頼みますって言われても……すぐ戻せないのか?」


 私は、再びラークスに問いかけた。


「ルシアは、法を破ったという事で少しの間ですがアースリアに戻す事が出来ません。この交信にも限りがあります。ルシアを……妹を頼みます」


「ちょッ……ちょっと! ラークス!?」


 交信は途絶えてしまった。


「ん!? ん~……リクゥ」


 ルシアが気が付いた。そして、ラークスとのやり取りをルシアに話した。まぁ、やり取りと言ってもかなり一方的な感じだったけど……


「ん~でもリクと一緒なら平気だよ…………アタシはこっちの方がいいかな~」


 ルシアは、私の顔をマジマジと見ながら微笑んだ。


 私は、部屋にあった鏡を覗き込んだ。そこに映ったのは……35歳の元の姿であった。でも、こっちの方がいいってルシア……まさか? 何を意識しているんだ私は……


 とりあえず明日は定休日なので、ルシアに必要な物を買いに行く事にした。



 次の日は、出かけるには持って来いのいい天気であった。私は、ルシアがリドの街を案内したように、今度は自分が住んでいる町を案内した。


 一通り買い物を終え家に帰って来た。



 ……人の気配がする!!



「……アリスお姉ちゃん!? どうして?」


 気配の正体は、ルシアの姉のアリスだった。ルシアは、今買ってきた洋服の入った袋を床に置いてアリスに駆け寄った。


「あ……あの~アリスさん? なぜこの世界に? ラークスはルシアの事は頼むと……」


 私は、アリスに事情を話した。


「何が頼まれたですか! まったく~お兄さまは無責任なのですから……ルシア! あなたをこの世界に一人にして置くわけにはいきません!私が監視役としてしっかり見てますからね」


 何かルシアとは性格が正反対のような気がする。よく考えるとアリスもこの世界に……いやいやこの家に住むという事になるのか? 


「お姉ちゃん……忙しいんじゃなかったの?」


 ルシアは、恐る恐るアリスに問いかけた。


「私は、どこかの無鉄砲さんとは違って、ちゃんと許可を頂いていますからご心配なく」


 さすがは出来る女という感じ……エリートと言った方がふさわしいのかな?


 ……ルシアは手も足も出ない感じだ。


「じゃあ……アリスさんは、魔法でいつでもアースリアに帰れるの?」


 この質問をした後、私はルシアの表情をうかがった。


「えっ! そうなの? いつでも帰れるの? お姉ちゃん~ズル~イ……」


 まぁ、当然のリアクションではあるが、もしそうだとしたら魔法と言うのは何て便利なものだと私は思った。


「この世界では、魔法を使用する事は許可されていません。ただし、アースリアに戻る為の魔法を一度だけ使用できる許可は頂きました」


 この世界じゃ魔法は使えないという事が分かった。


 ただ……


「アリスさん……その服装で町を歩くとちょっと目立ち過ぎかな? そうだ! 今買ってきた洋服に着替えればいいんだ。悪いけどルシア……頼むよ」


 ルシアは、しぶしぶ? ごそごそと洋服を選びアリスに渡した。……何か楽しそう? にも見える。


「お姉ちゃん……かわいい~よく似合ってるよ!」


 ルシアが選んできた服は、かわいい感じのばかりだから仕方ないと思うが……アリスは、鏡の中に映った姿を見て私のところに飛んできた!


「陸さん……今すぐ買い物に出かけましょう!」


 決して似合っていない訳ではないのだが、むしろルシアが言うように似合っていると思う。しかし、どうしても納得してくれな


いアリス……ルシアはそれを見てくすくすと笑っていた。


「ん~まだお店もやってるし……買いに行きますか~」


 再び、今度は3人で出かける事になった。


 アリスは、少し照れた感じで私の前をルシアと二人で歩いてる。二人を見ているとルシアはやっぱり20歳には見えないかな? もう少し落ち着いたところがあってもいいのか……でも、これがルシアらしい? などと思いながら目的の店に着いた。


 アリスは、自分の好みの服を選び! 即着替え! かわいいお姉さんから綺麗なお姉さんへ変身した。


「陸さん、今日はありがとうございます」


 素直に「ありがとう」と言われると何だか照れくさいものである。



 その日は、少し早めの夕食を外で食べた。


 二人には、店の仕事を手伝ってもらう事を頼んで今日は休む事にした。



 次の朝……



 え~と、今日のパートさんのシフトは?




第7話に続く……

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