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-第5話- 「 マイスター 」

 ラークスの話しによって、アースリアの現状が見えてきた。


 私たちから……私から? 少し距離をおいていたルシアが戻ってきた。


「ルシア~お腹が空いたよ~」


 正直……自分の腹の虫も鳴きそうであった。ラークスは、おもむろに左の内ポケットから懐中時計を取り出し時刻を確認した。


「もう、ランチの時間か? お店の予約は大丈夫か? ルシア」


「大丈夫だよ! お兄ちゃん!」



「おにい……ちゃん!?」


 私は、ハトが豆鉄砲でもくらったかの様な顔で2人を見た。


「あれ? 申していませんでしたか? 兄妹だという事を……」



「ないない! 初耳だけど」


 私は、大きく右の手をふって驚きを隠せない事をアピールした。



 そうこうしている内に予約の店に着いた。


 そこは、ツタが良い感じに巻きついた煙突と、テラスのあるおしゃれな店であった。そして、私たちは奥の部屋へと案内された。部屋の窓から入ってくる風を心地よく感じた。とてもアースリアの危機とは思えないほどに……


 ゴ~ン!ゴ~ン!


 正午を告げる鐘のが響き渡った。少しの間、先ほどの話しを頭の片隅に置いて、目の前に運ばれてきたランチを楽しむ事にした。


「兄妹って言ってたけど、ラークスは何歳なの? 隊長もやってるしさ」


 32歳か? 33歳ってところか? 予想を立ててみた。


「私か? 私は27ですが……? どうかしましたか?」


 30前か……思ったよりも若かった。エリートなんだろうか? ただの金持ちか?となると、ラークスが27歳なら……ルシアとかなり年齢としが離れているような気がする。


「へぇ~そうなんだ。ルシアは、なん……まぁ~いいか、女の子に年齢としを聞くのは」


 私は、ルシアの方を横目で一瞬見た。


「えぇ~ルシアには聞いてくれないんだ~!」


 飲もうとしていたコーヒーを危うくこぼすところだった。聞いて欲しいのか? 聞いて欲しいんだ~気を取り直して、聞いてみる事にした。まぁ~15、6ってところか……でも、そんなにをうるうるさせなくても……


「じゃ……じゃ~ルシアは何歳なの?」


 若いから特に気にする事でもないのか?


「ワタシは、19歳だよ~明日、誕生日なんだ~20歳になるんだよ~」



「19歳……明日で20歳!? …………おっ、おめでとう」


 確信していた私の予想がどこか遠くに飛んで行ってしまった!


「あとね~お姉ちゃんもいるんだよ」


「アリスお姉ちゃんは、23歳なんだよ~今、ものすごく忙しいの」



「そういえばルシアは、あの屋敷に居ないみたいだけど?」


 人それぞれ事情があるんだろうけど聞いてみた。


「今は~リサおば様の所で、立派なレディになる為の修業をしているの」


「ぷっ……」


 思わず吹いてしまった!


「あ~ひど~い!!」

「まぁ、もうちょっと御しとやかにならないと……もらい手がないぞ~」


 ラークスもなかなか言う、さすが兄妹だな。


「もう~お兄ちゃんまで~!!」


 少し機嫌を損ねたルシア……なんか可愛いかも?


「ルシアも頑張ってるんだね」


 私は、すかさずフォーローの言葉を入れた。


「立派なレディになってみせるんだから!」


「ルシア、他に何か食べたい物はあるか?」


 結構、食べたと思うが……ラークスはルシアにメニューを渡した。


「じゅあね~この……」


 まだ食べるのか? さすが女の子だな。入るところが違うのか? べつ腹ってやつかな。


「陸殿は?」


 私は、手でもう結構という合図を出した。



 楽しい会話を交えながら、ゆっくりとした時間が流れていった。


 しばらくして店を出た私たちは、場所を屋敷に移してドーキンの件を再開することにした。ラークスは、テーブルの上にアースリアの地図を広げた。そして、ドーキンのベーカリーがあるプンパ山の場所を指差した。


「ここがプンパやまで、ここが今いるセンターシティ・リド」


 結構? いや……かなり遠い所にある山だという事が分かった。



 その時! 一人の兵士が駆け込んできた!


「失礼します! 隊長! 報告します!」


 その兵士のあまりの慌て様にラークスの顔つきが変わった。


「ブレッド・マイスターのライスタ様、レネーラ様、ダリオス様の3名が……3名が!!」



「まず落ち着くんだ、3名がどうしたと言うのだ?」


 ラークスは、冷静になる様に兵士に命じた。



 兵士は、一呼吸おいて再び報告を始めた。


「失礼しました! 報告します! ブレッド・マイスターの3名が街に現れパンを配っています!」


 ラークスは、言葉を失うほど驚いていた。


 私も意味が分からなかった。なにしろ、このドーキンの件に関しては把握したばかりだしな。


「パンを配っている?」


 ラークスは、兵士に問いかけた。


「はい! 確かに配っていたのは焼きたてのパンでした」


「よし陸殿! すぐ確認しに行来ましょう!」


 まず、この混乱した頭を納得させる為に状況を確認する事にした。そんな中で私は、ふとある事に気付いた。


 パンが作れるのなら……自分は要らない?


 そして、またある事にも気が付いた……この展開は、元の世界に戻されて再びこの世界に戻って来るというシナリオか? そういう展開なら戻らないでおこう……そう思った。


「あっ!!」


 戻ると言うキーワードから、自分の世界のこと……店の事を思い出した。こっちに来て数日……向こうはどうなっているだろうか? 取り留めの無い不安が私を襲っていた。


「陸殿……どうした?」


 突然の声にラークスが私に声を掛けた。


「……」


 ラークスの声は、私には今届いていなかった。


「陸殿! ……陸殿?」


 再びラークスが声を掛ける。


「あ・・・あぁ~大丈夫」


 我に返った私は、ラークスと共に急いで屋敷の外に飛び出した!


「こっ……これは?」


 街の人々がパンを手にし美味しそうに口に運んでいた。


「本当にパンをくれたのは、ブレッド・マイスターでしたか?」


 ラークスは、側にいた人に事情を聞いた。


「はい、確かにライスタさんでしたよ~」


 満面の笑みで答えが返ってきた。ラークスは、3人が今どこに行ったのかをたずねた。


「3人なら、王宮の方に向かって行きましたよ」


 私たちも王宮に向かう事にした。整えられた王宮への道……しばらく行くと存在感のある建造物が現れた!ラークスのおかげで私も中に入ることが出来た。


 先ほど見たミュージアムも凄いと感じたが……比ではない。


「お待ち下さい! ラークス様!」


「そうです! 只今、大切なお客様が来客中の為、どなたも通すなとの指示を受けております」


 2人兵士が行く手をふさいだ!


「いくらラークス様でも、ここを通す訳には参りません!」


「ラークス様!!」


 ラークスは、兵士を振り払いドアを勢いよく開けた!


「失礼します! 国王陛下……」


 中にはマイスターの3人の姿があった。国王は、3人が献上したパンを美味しそうに召し上がっていた。


「おぉ~ラークスか、やはりパンは美味い最高だよ! お前もどうだ?」


 国王は、上機嫌である。


「これは、一体どういう事なのか説明して頂きたい!」


 マイスターに問うラークスの手に力が入る。


「まぁ~良いではないか」


 国王は、にこやかな笑顔でラークスをなだめた。


 そして、マイスターの1人が口を開いた。


「何も不思議な事はありませんよ。ただ記憶が戻っただけです。これからは、陛下の為にどんどんパンを焼きますよ!」


 国王は、ますます上機嫌といった様子でパンを口に運んでいる。


「ところで……そこの男は何者だ?」


 国王は、私の事に気がついた様子。


「この方は、異世界から来て頂いたブレッド・マイスターです!」


 胸を張り、私を紹介したラークスだったが……次の国王の言葉が打ちのめした。


「あぁ~もう必要ないぞ、自分の世界に戻って頂きなさい……モグモグ」


「これ! これ! この味!たまらないの~」


「? ……まだ居ったのか?もう下がってよいぞ」


 国王は、止まる事を知らないロボットの様にパンを食べ続けていた。


「しかし、陛下! これは……」


 ラークスが、最後の言葉を発する前に数名の兵士によって、私たちは王の間から退出する事となった。しかたなく屋敷に戻った私たちをルシアが待っていた。


「どうしたの? 怖い顔して?」


 ルシアは、心配そうにラークスに話しかけた。


「……うるさい!」


 ラークスは、ルシアを振り払った。


「大丈夫かい?ルシア」


 私は、よろめくルシアを受け止めた。


「本当にすまない陸殿、何と詫びていいのやら……」


 ラークスは、振り返り本当にすまない顔で私につぶやいた。


 ルシアに王宮での事を話した。


「えぇ~!? そんな~帰っちゃうの?」



「いや! まだ帰らないつもりだ! もう少しアースリアに居ようと思う」


 自分の世界も気になるが、何か納得がいかない。


 私は、やさしくルシアの頭をなでた。


「国王陛下のご命令は絶対ですよ!」


 振り向くとマイスターの3人が立っていた。いつに間に追いつかれたのか分からないが、確かに王宮に居た3人がそこに立っていた。


 そして、その中の女性が話しかけてきた。


「この人結構、私のタイプなんだな~このまま居れば? 私は、レネーラ」


「何をバカな事を言ってるんだ! ライスタの言う通り陛下のご命令は絶対だ!」


 もう一人の男……ダリオスが、レネーラの言葉を跳ねのけるかのように言った。


「冗談よ、冗談~帰る前に、どうぞ~食べてね」


 レネーラは、私にパンの入った袋を差し出した。私たちのパンをご賞味あれとでもいうかの様に……


 私は袋からパンを取り出し口にした。シンプルなバターロールのようだが……


「確かに美味しい……ん?」



 でも何か……? 何だろう?



 私の中で、素直に受け入れられない何かがあった。




第6話に続く……

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