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-第1話- 「 ルシア 」

 この町に来て10年の歳月が過ぎようとしている。


 町を一望できる小高い丘の上に店を開いてから、もう5年になる。今では評判のいいパン屋で通っている。自分で言うと少し照れくさいがおかげさまで忙しい日々を送らせてもらっている。私は、伊沙元 陸(いさもと りく)35歳。ちなみにまだ独身である。よくパートさんが私を心配してか、お見合い写真を持ってくるのだが……


 今日も、私はパートさんにつかまっていた。


「だからねぇ~私たちパートのおばちゃんじゃなくてさ~」


「そうそう、本当のパートナーが必要なのよ! つまりお嫁さんよ~」


 いつもながらのストレートな言われようだ。まぁ、この人達の言い分は確かにごもっともである。


「そういえば……ほら今日来たあの子? どこのかしらね~?」


「そうね~見かけない娘よね~17、8ってとこね~でも、もっと若いかしら?」


 どうも私が休憩中に来店したお客さんの事らしい。


「ちょっと若いけど、ああいう娘も良いんじゃない? かわいくて……フフフッ」


「あら~あの娘は、店長には若過ぎじゃないの~」


 この二人がラストの日は、いつも祭り騒ぎのようだ。


「はいはい、今日もお疲れ様でした。また明日、よろしくお願いしますね」


 どうも、この人たちには太刀打ちできないな。



 次の日の閉店後のこと……


「今日は来なかったようね。あの娘」


「でもさ~あの娘……何か違うのよね~」


 また、あの来店した女の子(昨日のお客さん)の話しをしているようだ。さすがベテランのパートさんともなると、お客さんの事を良く見ていらしゃる。


「何か気になる事でも?」


 うかつにも、パートさんたちの会話に首を突っ込んでしまった。しかし、私もどんな娘なのか少し興味を持っていた。


「勘よ! 勘! 女のね! な~に? 気になるの? 今度来たら教えてあげるわね」


「でもほら、その、次いつ来るか分からないわよね~。それはそうと、この間の……」


 ……また、お見合い話しが始まるのか?


「はいはい、今日もご苦労様でした。明日は、定休日なのであさって、またよろしくお願いしますね」


 このままだと、大変な事になりそうなので、早々に退散して頂いた。


 店を閉めた後……


 定休日の前の日は、いつもビールを飲みながらベランダにあるベンチチェアに腰掛けて美しい満天の星空を眺めていた。今日は、ぼんやりと昔の事を思い出していた。


 先輩厳しかったな~パンの世界に足を踏み入れてからもう15年以上経つんだな。先輩どうしてるかな? まぁ、ほのぼのとした今の環境があるのも厳しかった先輩のおかげなのかもしれないな。



 …………ん!?



「何だ? ……何事!? 空に女の子!?」


私は、一瞬目を疑った!


「酔ったかな? きっと疲れてるんだな……」


 今は、酔いと疲れのせいにして流そうと思った。でも今日は、まだ、そんなに飲んではいないはずだが? 疲れてはいるけど、この疲れはいつもの事である。それは、私の1日の勲章だと思っている。


 もう一度、そ~っと視線を上に向けた……


「やっぱり浮いてるよな~もしかして……幽霊か!?」


 見上げた先には、確かに女の子の姿があった。現実では、ありえない事が目の前で起きているのだ。


「えいっ!」


 女の子は、私めがけて指をピン! と弾いた。突然、私の体に何か見えない圧力が襲いかかった!


「うわっ~……」


 一瞬にして体の自由をうばわれた。まったく動く事ができない!どのくらいの間だろう……数分間? いや数秒? すぐに体の自由は戻った。全身をくまなくチェックしたが、特に変わったところは何も無かった。


「ふむふむふむ……OK! 合格ね! それと……この間は、おいしいパンをありがとう」


 その女の子は照れくさそうに言うと、私の側にふわりと降り立った。


「何が合格? いったい何の話だ? ……おいしいパンをって店のお客さんか?」


 やはり目の前で起きている出来事が今ひとつ理解できずにいた。普通は、空から女の子が降りて来るなんて話しはありえない事だ。次の瞬間! 女の子は、私を指差してこう言った。


「簡単に言うとね、ワタシはあなたを勇者に推薦します!」


 この一言が私を更なる理解不能な世界へといざなった。


「ゆっ……勇者? はぁ? 何者だ君は?」


 私は、動揺を隠せなかった。


「ワタシは、この世界の人間ではありません」


 女の子は、自分が他の世界から来た事を私に告げた。


「この世界の人間ではなって? へぇ?」


 どこから見ても普通の女の子だけどね。でも、よ~く考えると何だか色んな事がおかしいぞ! ドッキリか!? 何とかこの状況に打ち勝とうとする自分がそこにいた。


「……どうしたの?」


 固まっている私にやさしく声をかける女の子であったが、この今の私の心情など知るよしも無いだろう。そして、女の子は、にっこり微笑ほほえんで、更にくるりと回って一歩さがると……



「ワタシは、ルシアよろしくネ!」



第2話に続く……

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