Ride7 The son of armorer
「というわけで、あれはアシナガリザードというモンスターだったらしい。すまない、私としたことが」
「そんなぁ……」
私たちはどうしたものか、と頭を悩ませます。
…………。
「あのー、正直にカストロール砦から逃げてきたと言って、保護してもらえばいいんじゃないでしょうか……?」
「その手があったか! いやしかし、私はすでに村人を一人ころ……」
アウラさんは、私の提案に少し躊躇しているようでした。
「あの……どうかしたんですか?」
「あ、いや、なんでもない。……誰にも見られていないしな。うん、証拠もないはず……」
「?」
△
ヘルメットとグローブ、ブーツ、それに三角木馬さんは、林の中に隠しておくことにしました。
私たちは森の中でカラダに土をつけて汚したり、あまり痛くないように、引っかき傷をつけたりしました。そして少し走って汗をかいて……
「はぁ……はぁ……! た、助けてください……!」
ふらふらと走ってくる私たちに、見張りの男性は一瞬驚き、槍を向けます。でも、すぐにそれを収め、
「ど、どうしたんだ、一体! そ、それに、その格好は……!」
「わ、私たちは、カストロールの砦から命からがら逃げ出してきたのだ……。ど、どうか助け……ガクッ」
アウラさんはそう言って、気絶したふりをしました。……私もそうしたほうがいいのかな?
「ガクッ……」
「お、おい! しっかりしろ! だれか! だれか手を貸してくれ!!」
気絶したフリをしていると、何人かの人がやってきて、私たちを運んでいきます。
「おーい、宿屋! 宿屋はいるか!?」
どうやら、宿屋に連れて来られたようです。
「ひとまず部屋で休ませてやってくれ……。カストロールに酷い目に遭わされたらしい」
「あ、あぁ……。この村には医者もいないことだし、構わないが……部屋で死なれたりしては困るぞ?」
宿屋さんがそう答えたあと、私たちはベッドに寝かせてもらいました。なんだか、騙したようで申し訳ない気分です……。
「そういえば、防具屋の息子が回復魔法を使えたはずだが……」
「ギクっ……」
アウラさんが何か言った気がしましたが、気のせいだったのかな?
村の人たちは、防具屋の息子さんを探しに外に出て、部屋には私とアウラさん、宿屋さんの三人だけになりました。
……いつまで気絶したフリをしていればいいんだろう。
「ふ〜、しかしまいったな……」
宿屋さんはそう言って、私たちの近くを行ったり来たり……。ご迷惑をおかけしてすみません……。
……? 足音が止まりました。すると、
しゅる……
布が擦れるような音が、アウラさんのベッドのほうから聞こえました。
「どれどれ……? おほ……これはたまらんな」
そっと目を開けてみると、宿屋さんがアウラさんの毛布の中を覗き込んでいます。
アウラさんは目を瞑っていますが、顔が赤い……心なしか、呼吸も早い気がします。
あれ? 本当に体調が悪いのかな?
アウラさんを心配してか、宿屋さんが毛布の中に手を伸ばそうとしたとき
ガチャリ!
「おーい! 連れてきたぞ!」
防具屋の息子さんが、男の人に連れられてやってきました。私は慌てて目を瞑ります。
「お、おぉ、早かったな! アルフレッド……。 ん? あ、いや、ワシは彼女らに怪我がないかちょっと見とったのだよ、うん」
「そうですか。では、僕で役に立てるかわからないけど、ちょっと見てみます……」
彼はそう言ってアウラさんに近づきます。
「見たところ傷はそれほどないようですが……一応回復魔法をかけてみます。ヒーリング……!」
彼が言い終えると、アウラさんが目を開けて言います。
「ん……ここは……」
「あんた、気を失っていたんだよ。でも、もう心配しなくていい。ここは村の宿屋だ」
「そうか……。感謝する……」
村の人の言葉に、アウラさんはそう答えます。なんだか、防具屋の息子さん……アルフレッドさんのほうは見ないようにしているようでした。
「では、あちらの方も……」
アルフレッドさんは、私にも回復魔法をかけてくれました。暖かくて、気持ちいい……。よーし、私も目を開け……て……
「あ、気がつきましたね? よかった……。僕の回復魔法が役に立って……」
…………。
「? どうかしましたか?」
め、めちゃくちゃカッコいい……!
「あぅ……あ、い、いえ! ありがとうございます! おかげで、すっかりよくなりました!」
ぐぅ〜〜〜……
「!!」
お腹の音、聞かれちゃった……。昨日のお昼から何も食べてなかったから……
「くす……。お腹、空いたんですね? 元気な証拠です。何か持ってきましょう」
そう言って、アルフレッドさんは部屋から出ていきました。
「ち……。あ〜君たち、そこに服を置いておいたから、夕食を食べたらカラダを拭いて着替えるといい。宿泊料は……まぁ、それはあとでいいか」
宿屋さんも部屋から出ていったところで、アウラさんに話しかけます。
「ふぅ……ひとまず服がもらえてよかったですね。なんだか罪悪感もありますけど」
……返事が返ってこない。どうかしましたか? と聞こうとすると、
「アルフレッド……。防具屋の息子……」
静かにそう呟きました。これはもしかして、まさかアウラさん……!?




