Ride4 それを売るなんてとんでもない!
「……なんとか撒いたようだな」
私とアウラさんは、森に逃げ込んで身を隠していました。三角木馬さんが頑張ってくれたおかげで、カストロールたちから逃げ切ることができたようです。
「うぅ……なんだか、まだ変な感じがします」
「情けないな。私はもう……。……いや、私も、まだ少しだけ……」
二人とも顔を赤らめ、三角木馬さんを見つめます。……バイ助君以外で、あんな……。
私は頭を横に振り、違うことを考えようとします。
「アウラさんは、なぜカストロールに捕まっていたんですか?」
「エルフとカストロールは、昔から犬猿の仲なんだ」
この世界にも、犬と猿はいるみたいです。
「旅の途中でカストロールの巣があると聞き、根絶やしにしてやろうと乗り込んだんだが、このザマだ……。だが、助かったよ」
「い、いえ、私のほうこそ……。でも、カストロールって、ちょっと甘い香りがするんですね……」
私がそう言うと、アウラさんは驚いた顔をしました。
「あれが!? 冗談だろう……?」
あれ、私だけなのかな……? たしかに甘い香りがしたんだけど……。……少し、気持ちよくなっちゃうくらい。
「本当に変わったやつだな……。感じ方は人それぞれだから、あまりとやかく言うことは出来ないが、信じられん……」
この反応からすると、アウラさんはそう感じてはいないようでした。
「それにしても、一体どんな魔法を使ったんだ? よくわからないが、物体にあれほどの力を与え、自由自在に操るなど、かなり高名な魔法使いとお見受けするが……」
「いえ……私は魔法なんて使えません。自分でも、何がなんだか……」
魔法と聞いても、あまり驚きませんでした。カストロールのような種族を見た後では、やっぱりそういうのもあるんだ、くらいにしか……。
……間違いありません。ここは、ファンタジーの異世界です。どうしてかわからないけれど、異世界に迷い込んでしまった……。
「私、この世界の人間じゃないんです……」
「そうか……それほど遠くから連れてこられたのだな」
やっぱり信じてもらえない……。でも、今はこの状況をどうにかするほうが先だと思いました。まずはここで生き延びないと、元の世界に帰ることもできなくなっちゃいますから……。
「あの……私、ここのこと何もわからなくて……。どう帰ったらいいかもわからないんです」
「そうか……。ひとまず、近くの村に行こう。だが、こんな破廉恥な格好でうろつくわけにもいかんし、金もない……」
アウラさんは私と自分の身体を見て、そう言いました。すると、私が脇に抱えているショウエイのヘルメットに目を留め……
「その兜、見たことのない素材だが、かなり堅牢な造りをしているな。それを売れば金になるんじゃ……」
「だ、ダメです! これは大切なものですから!」
それは絶対ダメ! またこの子をかぶって、バイ助君とツーリングに行くんだから……
「……では、その手袋と靴は……? 上質な皮で精巧に造られているようだが……」
「こ、これもダメですぅ!」
私に残された、バイ助君との大切な繋がり……! それに、高かったんだから……。
「そ、そうか……。よほど大切なものなのだな。失礼した」
次に、チラリと三角木馬さんを見ます。
「……これは、売れないだろうな」
「……はい。売れません。私たちを助けてくれた、命の恩人ですから……」
「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだが……」
そう言ったあと、なぜか顔を赤らめます。
「ま、まぁ……そうだな。まだ使い道もあるかもしれんし……」
アウラさんは「ふぅっ……」と短いため息をつき、こう言います。
「仕方がない。たしか、この辺りにはマッハドラゴンが生息していたはずだ」
「マッハドラゴン?」
「ああ。そいつの鱗はおそろしく軽いうえ、頑丈らしくてな。防具の素材として高く売れると聞いたことがある」
カストロールから奪った剣を鋭い目つきで眺めながら、彼女は続けます。
「そいつを狩って鱗を手に入れる。手早く換金して、衣服と食料を手に入れよう」




