Ride32 楽しい方がいい
「ミタライ、私に跨がってみてくれ」
ルディアにも跨がれたのだから、私にだけ跨がれないのは納得いかない。アウラさんはそう言いました。でも……
バチンッ!
やっぱり弾かれるような感覚があり、肩車してもらうことができません。
「むぅ……なぜなんだ? 一応、付き合いも一番長いのに……」
アウラさんはしゃがみこみ、私のお尻をつんつんつつきます。
「繋がるどころか、肩車もできないとは。ええい、この尻め!」
「わ、私にもわかりません……。本当に、どうしてなのか……」
「……まぁ、考えていても仕方ないか」
「あの、とりあえずカレラが西に飛んでいったからそっちに向かってますけど、次の町まではどのくらいかかるんですか?」
「ふつうに歩けば一日半、といったところか。あっちに山が見えるだろう。麓にカイホという町がある。温泉が有名なんだ。一泊して、湯に浸かろう」
「……。急ぎましょう、アウラさん」
「そう焦るな。私たちにはこれがある。だろ?」
私は頷き、手押し車の荷台に乗りました。ちょこん……
「何も起こらないし、感じません……」
「やはり跨がらないとダメなんじゃないか? この荷台の縁はどうだ?」
なるほど……。でも、縁に跨がっても、やっぱり何も起こりませんでした。
「……だめみたいです。どうして……」
「そうだな……」
アウラさんは思いついたように、手押し車のグリップを握りました。
「んしょ……と。このまま走ってみたらいいんじゃないか?」
ガタガタガタガタ……! あ、少し……。
「んっ……はぁ……ッ」
「お!? キそうなんだな! ミタライ!」
アウラさんが嬉しそうに言います。
ガタガタガタガタ! ガッタン、ゴットン!
「あッ!あッ……! あぁぁんッ!」
ピカー! つ、繋がりました……。
わかった気がします。その人や動物、乗り物が輝いている場面……好きなことをしているとき……。そして私も同じ気持ちになっているとき。きっと、その時じゃないと繋がれないんだ……。
「成功したようだな」
「は、はい……」
アウラさんも手押し車に跨がりました。
「……ミタライ、あまり気を張りすぎるな。私たちが焦ったところで、仕方ない。別に勇者でもなんでもないんだから」
アウラさんが私の気持ちを見透かしたように言います。
「ともかく、私が思うのはだ。物事は楽しいほうがいいに決まっている。せっかく知らない世界に来たんだ。移動も楽しんだらいい」
楽しむ……か。たしかに、フットテイルを出てからは、そんな気持ちを忘れていました。
「それに、バイクというのはそういう乗り物なんだろう?」
「え……」
「モトクロ山で、バイクのことを話していたじゃないか。お前の世界には、屋根付きで転ばない乗り物もあると」
「はい。自動車のことですね」
「そんなものがあるのに、不安定で、身体が剥き出しの危険極まりないモノにわざわざ乗るのは、楽しいからだと言っただろう」
「アウラさん……」
「それに……私はお前と会うまで、旅がこんなに楽しいと思えたことはなかった。だから、焦らず行こう」
「アウラさん……ありがとうございます」
ガタガタガタガタ……
「たしかに速いが……こ、この振動はなんとかならないのか? んふぅッ」
ヘルメットを被ったアウラさんが不満? を漏らします。
この世界にはゴムタイヤなんてないので、どうしても振動が出てしまいます。それでも改造してもらったおかげで、だいぶ軽減され、ほどよい感じで……。
ガタンッ! 段差があるとちょっと飛び跳ねちゃいますけど。
「あぁッ……!」
「あの〜……アウラさんまで縁に跨がる必要はないんじゃないかと……」




