Ride26 宿る魂
「大変です! 魔王軍がここに向かっています! セローが気づいて、教えてくれたんです!」
「くそ……! ここまで来て……」
「……私が行こう。武器を貸してくれ!」
アウラさんはルディアさんに手を差し出します。
「……」
「早く! ここまで来てしまうぞ!」
ルディアさんは、ジラフさんの顔を見て、お互いに頷き合い、言いました。
「私が行く。親父とミタライ、そしてアウラは、作業を続けてくれ」
「む、無茶だ! それに、刀など、あとでいくらでも……!」
ジラフさんは首を横に振ります。
「俺はあれに全てを注ぎ込んでいるつもりだ。今やめたら、あれほどの一振りは、もう作れない」
そんな……。でも、このままでは刀は魔王軍の手に渡ってしまう……!
……。
「私が囮になって、魔王軍を引き離します。セロー、やってくれる……?」
「アギャ!」
ありがとう、セロー。
「ミタライ、それはダメだ! あんたは親父と刀を……!」
「……もう私がいなくても大丈夫ですよね? ジラフさん」
私が降りても、効果はしばらく持続するはず……。
「ああ……。すべての工程は尻から、いや、あんたから教わった。普通にやればあと四日はかかるだろうが……今の俺なら数時間でやれる!!」
「ならば私も!」
「あんたは残ってくれ、アウラ。持ち主が見届けなければ、親父の武器に真の魂は宿らない……!」
「だが……!」
着いてこようとするアウラさんの肩をジラフさんが掴み、顔を横に振って引き止めます。
「くっ……!」
「あたしはもう、魔王軍と戦う覚悟はできている。時間がない! 行こう!」
私は頷き、ヘルメットを被りました。
△
ミタライとルディア、そしてセローが飛び出していったあと、ジラフは作業を続けた。
皮鉄と心鉄を組み合わせて熱し、棒状に打ち伸ばす。素延べと呼ばれる作業である。
カンッ! カンッ! カンッ!
うろうろ……。
カンッ! カンッ! カンッ!
もぞもぞ……。
「あいつらが心配か?」
ジラフが手を止めず、アウラに尋ねる。
「当たり前だ……! 私だけこんな、作業を見ているだけとは……!」
ジラフは一旦手を止め、アウラを見据えて言う。
「これはお前にしかできないことだ。ルディアが言っただろう。持ち主が見届けなければ、この刀にも真の魂は宿らぬと……」
「しかし……!」
「あいつらを信じて、雑念を捨て、しっかり見届けろ。そうすれば、必ず刀もお前に応えてくれる。必ずだ。なに、俺の娘は強い」
カンッ! カンッ! カンッ!
「……わかった。信じよう。あいつらと、そしてジラフ殿、あなたを」
カンッ! カンッ! カンッ!
「……もう少し近くで、目の前に座ってくれないか? その方が集中できる」
△
私とルディアさんはセローの背に乗って、街の方へ向かっています。
「な、なぁ……? 本当にこいつ、大丈夫なんだよな!?」
「大丈夫です! とってもいい子なんですから!」
ダダダダッ!
「い、急いでいたから、ふんどし履いたまま来ちゃいましたね……あうっ!」
防具は装備したんですが……。セローに揺られるたびにきゅっ、きゅっ、と、食い込んじゃいます……。
「仕方ないだろ? まさか、こんなことになるなんて。すぐに慣れるから、我慢して」
大変なときに、どうして毎回こんな格好なんでしょうか……?
「! 魔王軍が見えてきたぞ! ……十三人……!」
思ったより数が多い……! 引き離そうとしても、きっと二手に分かれてルディアさんの家にも向かってしまいます。……ここで倒すしか、方法はなさそうです。
「アギャ?」
でも、セローは戦いには向いてなさそうです。私たちの勝手でケガもさせたくない……。……なら、試すべきことがあります。
「……ルディアさん!」
「なんだ!?
「私に、跨らせてください」




