Ride24 正装
「あの……なんでこの格好なんですか!?」
今、私はジラフさんと同じように褌を締めています。上半身の露出は猛抗議したものの、……すごく薄い、白い半被みたいなの一枚……。
「作業中の鍛冶場は、本来、女人禁制なんだ。古い考えだと思うけど、親父は頑固だから……せめて正装で」
「だ、だからって、この状態でジラフさんに肩車されるんですか!?」
「頼む! ミタライ……。刀のためだ!」
アウラさんが手を合わせてそう言います。人の気も知らないで……
「何言ってんだい。あんたも早く着替えるんだよ」
「……は?」
ジラフさんの言葉に、アウラさんが固まります。
「使う人間が完成を見届けなくてどうする?」
「な、な……。そ、そんなことする必要がないだろう!! 騙しているな!? このスケベオヤジ!!」
慌てふためくアウラさんに、ルディアさんが言います。
「本当なんだ、アウラ。これも古いしきたりで、親父はそうでなければ打たない。……女の人は初めてだけど……」
「〜〜〜〜ッ!」
△
結局、アウラさんも褌を締め、私と同じ格好になりました。アウラさんの刀を作るんだから、このくらいはしてもらわないと不公平ですよね。
「……お前も着替えるのか?」
アウラさんがルディアさんに尋ねます。
「あたしも補助に入る。魔王軍はあたしたちを探しているだろうし、作業中は音も煙も出る……。効率よくやらないとね。それに、イーオさんが命がけでファルコニウムを託してくれたんだ。それに応えたい」
ルディアさんは私たちを見つめています。
「あのさ、刀が完成したら……街を取り戻すために力を貸してほしいんだ。約束してくれるなら、私は全てをあんたの刀に捧げてもいい」
私とアウラさんは顔を見合わせて、頷きます。
「もとよりそのつもりだ。任せておけ」
△
私たちは鍛冶場に入りました。炉には火が入り、すでにすごい熱です。
「……」
ルディアさんが私たちを、少し不安げに見つめます。何か言いたそうな……。
「あの、さ。肩車とか、よくわからないんだけど……信じていいんだよな?」
「大丈夫だ。ミタライを信じろ。きっと、一緒に気持ちよくなれるから」
「……?」
アウラさん……その言い方はやめてください……。
それにしても、二人ともすごい格好……。私もだけど、スタイルが全然違います……。
それに、汗でちょっと……透けちゃってます。
「くっ……! 屈辱だ……。ジラフ殿……まさか私たちのこの姿を見るために……。そして自分の娘も混じえて、あんなことやこんなことをするつもりではないだろうな……!?」
ジラフさんはジロリ、とアウラさんを睨みつけます。……さっきまでとは別人のよう。
「鍛冶師を舐めとんのか?」
「あ、いや……な、なんでもない」
アウラさんはビクッとして、急に素直になりました。どうしたのかな?
「肩車、すればいいんだったな」
「……は、はい」
「訳がわからないが、なぜかあんたは信じられる気がする。ほら、早くしな」
「し、失礼します……」
よいしょ……。う〜ん……すでに二人の汗で滑りそう……
「ぬおっ!?」
ビクン!
「きゃっ!」
「キタのか!? ミタライ!」
キタってなんですか……もう……
「いえ……まだ、ちょっと……」
下を見ると、ジラフさんがプルプル震えています。
「大丈夫なのか……? 親父……」
「くっ……あ、ああ。肩車して、しかもこの尻圧……。これまでにない過酷な鍛錬になるが、やるしかねぇ……! 本能でわかる……」
ビクンッ!
「ひゃんッ!」
「……」
「と、とにかく! あんたの言ってた意味がわかってきた。……日本刀のイメージ、製法! それが尻をとおして流れ込んでくる感じだ。だが、まだ足りない!」
たぶん、私の魔法だかスキルは、もっとお互い昂らないと発動しない……。ごめんね、バイ助君……。これは、刀のためだから……。そういうのじゃないから!
「じ、ジラフさん、出来るところから始めてください。多分、その方が上手くいけると思います……」
「……ああ。わかった」
ゴクリ……。ルディアさんとアウラさんは、固唾を呑んで私たちを見守っていました。




