Ride23 カタナ
聞き間違いかと思いました。だって、この流れでまさか、そんなこと……
「お、親父、よく聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
ジラフさんはガクッと床に膝と手をつき、うなだれます。
「その姉さん、アウラは、間違いなく俺の理想の筋肉の持ち主だ。しなやかで、それでいて強靭……。お尻もすばらしい! だが、その人に応えられる剣が、どうしても思い浮かばない……!」
「じょ、冗談だろう!? 親父……」
ポタ、ポタ……、と、ジラフさんの涙が床に落ちます。
「……従来の剣ではダメなんだ! だが、しばらく鍛冶から遠ざかっていた俺が、一日で思いつくわけがなかった……! ちくしょう……! ちくしょおおお!!」
アウラさんが、心なしか蔑むような目で、ふんどし一丁で床に突っ伏して泣いているジラフさんを見つめています。あぁ……ルディアさんまで、そんな……!
ファルコニウム製品の生産終了だけでなく、家族の危機です! な、なんとかしないと……!
しなやかで、それでいて強靭な……。あれ、どこかで聞いたことがあるような……。……そうだ!
「あ、あの! ジラフさん!」
「ふぇ……?」
ジラフさんは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で、私を見上げます。……少しだけ私もイラッとしてしまいましたが、ぐっと堪えます。
「日本刀ってご存知……ないですよね……?」
「ぐすっ! ……ひっく、ニホントー?」
「ミタライ、それはどういうものなんだい?」
「私のせか……国の刀なんですけど、片刃でこう、反っていて、炭素量の違う硬い鋼と柔らかい鋼の複合構造で——」
ジラフさんが、少しピクリと反応します。
「——という感じで、しなやかさと強靭さを兼ね備えた刃になってるんです」
スズキのカタナの影響で一時期ハマって、ネットや本で調べたり、動画を見たりしたから知識はあるんだけど、上手く伝えられているかどうか……。
「それと、アウラさんが一太刀で敵を切る時、あれ、居合い斬りというものに似てるんです」
「イアイギリ……?」
私はアウラさんの動きと、動画やアニメで見た居合い斬りを思い出しながら、格好を真似してみます。
「鞘に刀身が収まっている状態から、こう、一気に抜くと同時に、すごいスピードで斬るんです。アウラさんも、こんな感じでやってたと思うんですけど……」
アウラさんはそれを見ながら、うんうん、と言った具合に頷いています。
「なるほど……確かに似ている……!」
「日本刀の刃というのは、斬撃に特化しているんです」
「それだ……! それが私の求めていた剣……いや、刀だ!」
「親父……!」
ルディアさんとアウラさんが、期待の眼差しをジラフさんに向けます。
「た、確かに理にかなっているし、アウラさんにピッタリだと思う……。すごい技術だ……。材料もファルコニウムと、ウチにあるものでいけると思う。でも、お、俺にできるかなぁ?」
すっかり自信をなくしてしまったようです……。
このままでは、イーオさんの犠牲が無駄に……どうしたら……。あ……も、もしかして……
「あ、あの!」
「どうした?」
ゴクリ……。唾を飲み込み、思い切って言いました。
「ジラフさん……私に、跨らせてもらえませんか?」
「「……は?」」
ジラフさんとルディアさんは、きょとんとして聞き返します。ま、跨るというのは、はしたない言い方だったかも……。顔が熱くなるのを感じます。
「ミタライ、まさかお前……?」
ウルフさんやセローに跨ったときも、理解りあえた気がしたもの……!
「やってみる価値はあると思います……! ジラフさん、私を肩車しながら、刀を打ってください!」




