Ride22 ふたり隼
「ファルコニウムだって!?」
「しっ、声がでかいよ、おじさん」
ルディアは慌てて辺りを見回す。幸い、魔王軍に聴かれた様子はない。
「す、すまん。だが、なぜ今ファルコニウムなんだ?」
「手短に言うよ。それさえあれば、親父はまた剣を作れる。現れたんだ。親父の理想の筋肉の持ち主が」
「なんだと……!? それは本当か……!?」
ルディアはイーオの目を真っ直ぐ見て、力強く頷く。
「そして、その人たちは魔王軍の幹部を倒したことがあるらしい。もしかしたら、この街を……」
「……」
イーオは言葉を発さず、製鉄所の中へ戻っていく。
「……イーオおじさん……」
しかし、すぐにルディアの元に戻ってきた。その手には、先ほどは持っていなかった袋を下げている。袋の口を開け、ルディアに見せながら言う。
「……ファルコニウムだ。剣一本作るのに十分な量はある」
「イーオおじさん!」
思わず、大きな声を出してしまう。
「声が大きいぞ……!」
「ご、ごめん……。でも、どうして?」
イーオは少しため息をつき、遠い目をして話す。
「最後のファルコニウム……。これだけは隠しておいたんだ。いつか再び、あいつがこれで最高の剣を作ってくれる時のためにな……」
イーオは、自分より随分背が高くなったルディアの頭を撫でながら言った。
今ではその機会もなくなったが、数少ないファルコニウムの精錬法を知る者として、イーオは職を失わずに働くことができていた。しかし、ジラフに対し、どこか後ろめたい気持ちを抱き続けていた。
かつて『ふたり隼』として名を馳せた、鉱山街最高のコンビ。それが、ジラフとイーオだった。
「お前ら! そこで何をしている!!」
魔王軍の兵士……!
イーオは兵士に掴み掛かり、叫ぶ。
「いけ! ルディア!!」
「おじさんッ!!」
向こうから、さらに複数の兵士が駆け寄ってくる。ルディアは下唇を噛み締めながら、来た道を走っていく。
角を曲がる瞬間、魔王軍に地面に押さえつけられながらも、微笑むイーオが見えた。
△
頭上の蓋が開き、ルディアさんが階段を駆け降りてきました。とても慌てている様子です。
「ファルコニウムは!?」
「このとおり!! でも、奴らに追われてる!!」
「なんだと!?」
私たちは持ってきた武器や防具を抱え、慌てて通路を引き返しました。街側から、魔王軍の声が聞こえてきます。
すると、ルディアさんは突然立ち止まり、マッチに火をつけました。
「ルディアさん! 何を……」
「耳を塞いで口を開けて!!」
私とアウラさんはすぐに言われたとおりにしました。すると
ドッカアアアァン!!
突然の爆発とともに、通路の向こう側が、瓦礫で完全に塞がりました。
「こんなときのために、爆薬を仕掛けておいたんだ」
これなら、魔王軍が通路から追ってくることはできなさそうでした。でも、爆破するなんて……まだドキドキしています。
「さぁ、行こう!」
そう言うルディアさんの目には、なぜか涙が滲んでいました。
△
ルディアさんの家に戻ると、ジラフさんが仁王立ちで、腕を組んで待っていました。その姿は見違えるようで、髭をきれいに剃り、服装は……褌一丁のみでした。
「準備はできているようだな、親父。……ファルコニウムだ。でも、イーオおじさんは……魔王軍に……」
「え!?」
「なんということだ……!」
私とアウラさんは驚きを隠せませんでした。
ジラフさんは黙ってファルコニウムを受け取ります。
そして、ポツリと言いました。
「……やばい。アイデアが浮かばねぇ……」




