Ride21 ルディア、精錬所にいく
「再び街へ潜入し、精錬所でイーオという男に会って頼めばいいんだな?」
「そういうこと。街にはあたしが行く」
ルディアさんがそういうと、アウラさんは首を横に振ります。
「いや、危険に巻き込むわけにはいかない。奴ら、女に何をするかわかったもんじゃないからな」
「……たしかに、この街の女の子も何人か連れていかれた……。でも、連れていかれたのは可愛い子ばかりだから、あたしは大丈夫だよ」
アウラさんの妄想じゃなく、本当に誘拐したりしているんだ……。尚更許せません。でも、ルディアさんは自覚ないんでしょうか?
「あたしなら街の地理に詳しいし、イーオさんの顔も居場所も知っている。それに、容姿端麗なエルフは目立つし、一人のほうが都合がいい。さっきの騒ぎで、奴ら警戒しているかもしれないから」
「すまない……。なら、私とミタライは地下通路の出口で待機していることにしよう」
アウラさんがそう提案すると、ルディアさんは頷いて言います。
「それでいい。私も、親父がまた剣を打つ姿を見たい。街を取り戻せるかは、わからないけど」
でも、やっぱり少し心配です……。だって……
「あの……それはそうとして、ルディアさんはかわいいと思うんですけど……」
私がそう言うと、ルディアさんは顔を真っ赤にして言います。
「な! そ、そんなわけないだろ! あ、あたしなんか……こんな、腕だって太いし……」
確かに筋肉質ではあるけど……引き締まって美しいです。
「か、仮にそうだとしても、あたしは簡単には捕まらないよ。ちょっと待っててね」
「?」
そう言って奥の部屋に行き、出てきた彼女は……
「へへ、どう?」
左手に丸い盾、右手には短めの剣。そして、防具は必要最小限……。アウラさんに負けず劣らず、凛々しくて色っぽい姿でした。これは……
「剣闘士!?」
「そういえば、聞いたことがある。かつてこの街には闘技場があり、強さと技、そして武器の出来映えを競い合って闘う者がいたと……」
アウラさんはルディアさんの姿を見て言いました。
「今では、木剣を使った競技という形で残っているんだ。あたしは、そのチャンピオンなんだよ」
「しかし……さぞ壮絶な死合いなのだろうな……」
「そんなことないよ。そりゃケガすることもあるけど、あくまで競技だし……」
「負けた者は、大観衆の前であんなことやこんなことを……あぁ……!」
「?」
アウラさん……私だんだんわかってきました……。アウラさんが何を考えているか……。
「まぁ、この格好は街中だと目立つから普段着で行くけどね。武器は……ナイフ一本がせいぜいかな」
「じゃあ、私たちは万が一に備えて、武器を持って地下通路に潜んでいればいいですか?」
「ああ、それがいいと思う。今日はうちに泊まってくれ。明日準備ができたら、店の武器を持って出発しよう。質が落ちたとはいえ、そこらじゃ買えないようなものばかりだよ」
△
翌日、私たちは地下通路の、街側の出口まで来ました。
「へまはしないつもりだけど、もし戻らなかったら……」
「なんとかするさ。なにしろミタライは、一度魔王軍の幹部を倒しているんだからな」
「……え?」
ルディアさんは驚いたように目を見開き、私を振り返りました。
「い、いや……あれはウルフさんがいたからだし、アウラさんだって……」
「……あんたたちなら、もしかしたら……」
「え?」
「いや……。行ってくる」
そう言い残し、ルディアさんは街へ出て行きました。
△
「さて……」
ルディアは精錬所を目指して歩き出した。もう時期、イーオの休憩時刻だ。そのときに接触し、訳を話す。親戚が訪ねてきた体を装うため、差し入れも持ってきた。
時々魔王軍の兵士に会うが、顔をなるべく見られないように移動した。体格がよく、髪も短くしているルディアは、顔さえ見られなければ、遠目には男のように見えた。
そのまま何事もなく、精錬所に到着する。ルディアは裏口の物陰に身を潜め、イーオが休憩に出てくるのを待った。
しばらく待つと、父親と同じくらいの年齢の男が現れる。少し小太りで、禿頭の男。イーオだ。
辺りに魔王軍がいないことを確認し、ルディアは声をかけた。
「イーオおじさん」
イーオが振り返り、声の主の姿を確認する。
「ルディアか。久しぶりだな。どうした?」
ルディアは持ってきた手提げ袋を渡す。
「はい、差し入れ」
「? ありがたいが、急にどうしたんだ?」
それを受け取りながら、怪訝そうな顔をするイーオに、ルディアは話し始める。
「実はお願いがあってきたんだ」
「……すまん、ルディア。やはり、ここで俺一人が声を上げたところで、あの件はどうにも……。それに、今は魔王軍に占領され、それどころでは……」
イーオは心苦しそうな顔で話す。
「違うんだ。今日はその件じゃない」
「それじゃ一体……」
ルディアはもう一度、魔王軍がいないことを確認して、小声で告げる。
「ファルコニウムがほしい」




