Ride20 ファルコニウムを手に入れろ
「アウラさん、それじゃ仕方ないですね……」
私は、ここに居続ける理由がなくなって、ホッとしていました。でも、この胸のもやもやはなんだろう……。
「……」
アウラさんは難しい顔をしています。
「……その良質な鋼とやらが手に入れば、ジラフ殿に、また金槌を手に取ってもらえるだろうか」
「……わからない。ただでさえ作られなくなっているのに、魔王軍による占領……。それを手に入れること自体がすごく難しいけど……」
ルディアさんはジラフさんの背中を見つめています。
「そうなってくれたらいいと思う。あたしは、そんな親父が大好きだった。憧れていたんだ」
寂しそうに微笑むルディアさん。その表情は、もう戻らない日々を懐かしんでいるようでした。
やむを得ずバイクの生産終了が決定される時も、こんな感じなんでしょうか……。知ったのは免許を取ってからだけど、SR400も、少し前に生産終了になってしまったし……。
私は、メーカーの開発者や技術者、関係者が、涙ながらに生産終了への想いを語っていた動画を思い出していました。
「う……うぅ……」
「ど、どうしたミタライ?」
「なんか、時代の流れとはいえ、技術が失われていくのは寂しいなって……」
そんな私を見て、ルディアさんは言います。
「……そうだね……」
……。
「……やりましょう……」
「え?」
「やりましょう! アウラさん! 魔王軍から街を取り戻し、その鋼を手に入れ、ジラフさんに剣を作ってもらいましょう!」
「お前がそんなことを言うとは……。……本気なのか?」
私は、彼女の目を真っ直ぐ見て頷きました。怖い、けど、バイ助君に恥じない選択をしたい……。
「気持ちはうれしいけど、親父がその気になるか……」
「……。もう一度、話してみよう」
アウラさんはイスから立ち上がり、もう一度ジラフさんに近づいていき、隣にしゃがみます。そして肩にそっと手を置き……
「ジラフ殿、もう一度話を聞いてほしい……」
「……俺はもう打たねえ……」
「話だけでも……」
アウラさんは、ジラフさんをゴロン、と転がし、話をしようとしました。
「お願いだ。私は、全力で振るえる剣がほしい……」
「……!」
どうしたんでしょう? ジラフさんが目を見開いて、アウラさんを見つめています。
「あ、あんた……ちょっとそこに立ってみてくれ……」
「? こ、こうか?」
ジラフさんも、むくっと起き上がって、アウラさんの前に立ちます。
「親父が……立った……!?」
「…………」
アウラさんの周りを歩きながら、まじまじと見ているジラフさん。一体どうしたんでしょうか?
つつつ……
ジラフさんが、人差し指でアウラさんの背中をなぞります。アウラさんは少しピク、として……
「うっ、な、何を……」
「いいから……」
次に、腕を持って撫で回しました。
すすーっ……、さわ、さわ……
「う、うぅ……」
「……親父、まさか……!?」
次に、ふくらはぎから太ももへ……
「はぅッ……!」
お腹、そして脇へと……
さわさわ……もみもみ……、するんっ……!
ビクッ!
「あんッ! お、お前も私のカラダが目的か!!」
ガシッ!
アウラさんが振り下ろした手を、ジラフさんが片手で受け止めます。なんて太い腕……
「なっ……!?」
ジラフさんの目つきが変わった……?
「……あんたの迅さについてこれる剣に出会えない、か?」
「!」
すごい、アウラさんの考えを読み取ったんでしょうか……!?
「やっぱりか……親父!」
「どういうことですか?」
「親父は、筋肉から使い手が必要としている武器がわかるんだ。しかし、あそこまで夢中になっている親父は初めて見る……」
もみもみ……。あぁ、いつの間にかお尻まで……。……本当かなぁ。
「……」
……目つきは真剣そのものですけど……。
すると、ジラフさんが口を開きます。
「……あんたになら、打ってやってもいいぜ」
「ほ、本当か!?」
「ただし、ファルコニウムを手に入れることができればな」
「ファルコニウム?」
私が尋ねると、ルディアさんが説明をしてくれました。
「ここの鉱山からは、様々な金属が採取できるんだ。それらを一定の割合で製鉄して鋼とし、刃として鍛えたもの。それが、この街でしか作り得ない、しなやかさと強靭さを兼ね備えた武器となる」
「……」
「そうして出来た刃は、青みがかった灰色と白地に灰色が混ざった、隼のような縞模様となる。その模様から、材料となる鋼は、『ファルコニウム』と呼ばれている」
ファルコニウム……隼の模様……
「ファルコニウムか……。ふ、気に入った。それを手に入れれば、剣を作ってくれるのだな?」
「約束しよう。精錬所にイーオという男がいる。俺とともに、最後まで組合に反対していたやつだ。そいつなら、ファルコニウムを調合することができる」
ジラフさんは、鋭い目つきで言います。
「お嬢さん、あんたの言葉、心に響いたぜ。そしてエルフの姉さん、あんたは俺の理想の筋肉だ。作ってやる……いや、ぜひ作らせてくれ。あんたのための一振りを」
「……感謝する、ジラフ殿。ところで……」
「ん?」
「この手、そろそろ……どけてくれないか……?」
もみもみもみ……




